TIFFイベント:小津安二郎生誕120周年。外国人から見た小津監督の魅力

現在開催中の第36回東京国際映画祭のなかで、小津安二郎監督による『長屋紳士録 4Kデジタル修復版/菊五郎の鏡獅子 4Kデジタル修復版』が上映された。上映後にはクリスチャン・ジュンヌ氏(カンヌ映画祭代表補佐/映画部門ディレクター)とカルロ・シャトリアン氏(ベルリン映画祭アーティスティック・ディレクター)が登壇するトークショーも開催。外国人から見た小津監督の魅力を語り合った。

東京国際映画祭のなかでは、小津安二郎の生誕120年を記念した「SHOULDERS OF GIANTS」が企画されている。『生まれてはみたけれど』や『非常線の女』の新たなデジタル修復版が公開されるなど、ファン待望の内容となっており、今回の上映とトークショーもその一環。

両氏は日本で小津監督の話をすることについて恐縮そうな様子も見せたが、話し出すとかなり饒舌な印象である。

ジュンヌ氏は「ほぼ同じ年に撮られ、戦禍を制作背景にしつつもヒッチコック監督『汚名』やロッセリーニ監督『無防備都市』、ルネ・クレマン監督『鉄路の斗い』などと比べ『長屋紳士録』には希望を感じる」という。また「同じ日本人監督でも、黒澤明監督の場合はもっとダークな感じ。対して小津監督はもっとライトで市民の日常を描いているという違いを感じる」と話した。

シャトリアン氏は「本作品はロセリーニ監督やデ・シーカ監督の作品を彷彿とさせました。大事なのは少年を中心に描いていないこと。物語は個人からコミュニティになっていきますが、最後のショットがとても印象に残りました」とコメント。さらに「少年の視点からカメラが撮られていることが心温まる質感の要因だと思う」とも。

さらにジュンヌ氏は小津監督の魅力を「シンプルな中にある複雑さ。画がそのもの以上にキャラクターの感情や背景をものがっている」と表現。それを受けてシャトリアン氏はネオレアリズモ時代の特徴である、資金不足によった素人俳優の起用を例に挙げてから「小津監督の緻密な構図をピントをズラさずに撮るには、俳優の力量あってのこと」と出演者のレベルの高さにも言及した。

今や外国にも作品が知れ渡る小津監督だが、その理由の一端を本トークショーで知ることができた。このように外国の視点から見た日本映画の奥ゆかしさを知るのも、国際映画祭ならではの楽しみ方のひとつだろう。(取材:小池直也)

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