『セーヌ川の水面の下に』監督が語る、ラストの意図とは?【ネタバレ】

『セーヌ川の水面の下に』写真: SOFIE GHEYSENS/NETFLIX
『セーヌ川の水面の下に』写真: SOFIE GHEYSENS/NETFLIX
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[本記事は、Netflix『セーヌ川の水面の下に』のネタバレを含みます。]

Netflixで現在配信中の映画『セーヌ川の水面の下に』のフランス人監督、ザヴィエ・ジャンが米『ハリウッド・リポーター』のインタビューに登場。

ジャンは本作で、フランス・パリを流れるセーヌ川に、突然変異を遂げ、単為生殖する怪物のようなサメを解き放ち、ジャンルの慣習を取り入れつつも、フランス的なニヒリズムの捻りを加えることでそれらを覆した。そして物語のラストには、パリが水没し、無数のサメが立ち往生した主人公たちを取り囲むという絶望的な光景が広がる。

『セーヌ川の水面の下に』は、その突飛な設定ながら、視聴者からの人気を集め、アメリカのNetflixチャートで2週連続1位を獲得。6月5日の配信以来、7000万回以上の視聴数を記録した。

映画『ヒットマン』(2007)など、ハリウッド作品も手がけてきたベテランのジャンに、本作の制作の経緯や意図、『ジョーズ』が与えた影響について聞いた。

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―“川の中のサメ”というアイデアは、いつごろ思いついたのですか?

実は、この映画はもともと(プロデューサーの)セバスチャン・オーシェとエドゥアール・デュプレのアイデアでした。彼らには、エンターテインメントの一種のメタファーにしつつ、現在の気候問題に対する風刺のようなものにできたら面白いと言いました。

アダム・マッケイが映画『ドント・ルック・アップ』でやったように、この2つをミックスし、家族全員が楽しめる作品にできたら素晴らしいと思ったんです。

ザヴィエ・ジャン、ナシム・リエス 『セーヌ川の水面の下に』撮影現場にて 写真: Sofie Gheysens/Netflix
ザヴィエ・ジャン、ナシム・リエス 『セーヌ川の水面の下に』撮影現場にて 写真: Sofie Gheysens/Netflix

―それを成し遂げるために決断したことは?

アクションシーンは、アメリカ映画並みのレベルにしたいと思いました。そうすることで、ブロックバスター的な質感が出せて、フランス映画だからといって予算不足を感じさせないようにできるからです。

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フランスでは、ハリウッド映画よりもトーンや映像の自由度において、もう少しニヒリスティックになります。それがこの映画を新鮮なものにしていると思うんです。

私たちは、この映画の重要な登場人物たちを30分後に殺してしまってもいいんじゃないかと考えました。例えば、中盤では若い活動家のキャラクターが命を落としています。そうすることで、結末を反ハリウッド的なものにできると決断しました。

結果として、ハリウッド風の派手さを使って、ニヒリスティックな結末を作り上げることになりました。ハリウッドならサメを殺していたでしょうが、私たちはサメを生かしたままにしたのです。

―つまり、ハリウッド独特の映画言語を逆手に取ったわけですね。

まさにその通りです。それこそが映画に二重の意味を与えているのです。この映画が刺激的なのは、風刺的な性質があるからだけでなく、英雄的な人物であるはずのキャラクターたちが、悪い決断しかできないために不意を突かれるからでもあります。

結局のところ、パリ市長であれ主人公たちであれ、人間はすべての場面において、常にその決断の結果に苦しむことになります。それが最終的には、気候災害へとつながっていくのです。彼らが英雄的な人物だとしても、間違いを犯す英雄なのです。そしてそれこそが、彼らをより人間らしくしているのです。

―特に、映画『ジョーズ』の構造を参考にしたのですか?どちらも問題を認めようとしない市長が登場します。

基本的には同じようなものです。私たちはオリンピックを一種の比喩として使いましたが、そこには経済的な側面があります。つまり、たとえフランスで開催に問題が生じたとしても、オリンピックのような大イベントを中止することは決してありません。投資された金額があまりにも巨額だからです。

『ジョーズ』では、サメがもたらす危険に焦点が当てられていました。一方、本作では人間の貪欲さがもたらす危険を強調したかったのです。人間の貪欲さについて語ることは重要だと思います。なぜなら、それこそが太平洋ゴミベルトを現在のような状態にした原因だからです。この映画では、お金が問題の核心にあると考えています。

―この映画はかなり戦闘的な立場を取っていますが、同時に、理想主義的な活動家たちに対する鋭い風刺も含まれています。この両面的な批評について、少し詳しく教えてください。

私は活動家で、シーシェパードの行動はすべて支持しています。だからこそ、ミカの親友で、より冷静なベンというキャラクターを作ったのです。しかし、非常に急進的な活動家もいるので、穏健な活動家と、極端な行動に出るミカの両方を見せたかったのです。

結局、サメに食べられなかったのはベンだけでした。ベンは溺死しますが、私たちは彼女に対して正義を貫こうとしました。なぜなら、彼女には私自身の活動主義が反映されているからです。

―警察署の掲示板には、セーヌ川の不発弾についての記事が貼られていました。

その記事は本物です。2年前の夏に、オステルリッツ橋の下で実際に154個もの第二次世界大戦時代の不発弾が見つかったのです。

―映画の成功は、予想外でしたか?

この成功は必要不可欠でした。正直なところ、今の反響には驚いています。このような高みに達するとは、予想していませんでした。このことは、私たちが正しい選択をしたという自信につながり、この方向性を維持していかなければならないという意欲を与えてくれます。


※本記事は英語の記事から抄訳・編集しました。翻訳/和田 萌

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