『クワイエット・プレイス:DAY 1』猫のシーンはCG一切ナシ!― 監督インタビュー【ネタバレ】
[本記事は、映画『クワイエット・プレイス:DAY 1』のネタバレを含みます。]
シリーズ最新作『クワイエット・プレイス:DAY 1』(公開中)のマイケル・サルノスキ監督が、米『ハリウッド・リポーター』のインタビューに登場。
『クワイエット・プレイス:DAY 1』は、謎の生命体の襲撃を受けたニューヨークを舞台に、サム(ルピタ・ニョンゴ)、エリック(ジョセフ・クイン)、そしてフロドという名の猫のサバイバルを描いた前日譚。絶賛レビューが相次いでおり、一部の批評家は「シリーズ最高の作品」と評している。
中でも、シリーズのファンを虜にしているが、猫のフロドだ。一方で、猫は演出が難しいことでも知られている。サルノスキがジョン・クラシンスキーと共同執筆した脚本は、フロドをアクションシーンなどの中心に据えており、猫の演技がうまくいかなければ、映画全体が成立しない状況だった。
大胆な賭けを見事に成功させたサルノスキが、フロドを演じた2匹の猫との撮影の裏側や、続編の可能性について語った。
―フロドを物語に登場させたインスピレーションは?
フロドは、サムのキャラクターから自然に生まれました。終末期のホスピス患者は、必ずしも世界の終わりを生き抜くことを目指しているわけではありません。これは、彼女が自分の人生と再びつながるチャンスで、フロドはその延長線上にあります。
都会で暮らしていた頃、サムは野良猫だったフロドのためにミルクを置き始め、やがてペットになったのだと私は想像していました。サムはホスピスに入る際に、フロドだけを連れて行きました。フロドは、彼女の過去の人生の象徴なのです。そして、一緒に都会に戻ったとき、その経験を再現するのです。
また、サムが荒廃したニューヨークを小さな猫と一緒に歩く姿は、完璧なイメージだと思いました。
―脚本を提出したときのスタジオの反応は?
最初の反応は、「オーケー、猫はコンピューターで生成しよう。それなら、なんとかできるだろう」というものでした。でも私は、「いや、すべてのシーンを本物の猫で撮影したいんだ。CGは一切使いたくない」と言いました。
幸いなことに、素晴らしい猫のトレーナーたちと、すごい演技力を持つ猫たちのおかげで、それを実現することができました。誰もが昔ながらの方法では無理だろうと思っていましたが、実際にやり遂げられて本当に嬉しいです。
―なぜ、他の動物ではなく猫にしたのでしょうか?
まず、猫はニューヨークと強いつながりがあります。野良猫や商店の猫、そして都市の生存本能的な側面に何か特別なものがあるんです。それに、『クワイエット・プレイス』の世界では、吠えてしまう犬はうまくいかないでしょう。
猫は忍び寄る捕食者で、生まれながらに静かです。だから、うまく生き残れる生き物として、猫は理にかなっています。また、猫はサムの雰囲気や感情とよく合うと思います。猫には近寄りがたいところがありますが、よく知ると実際にはとても愛らしくて素晴らしい存在になります。なので、猫がピッタリだと思ったんです。
―世界終末の危機のなか、登場人物たちが“ただの猫”をこれほどまでに気遣うということは、私たちが持つべき共感と思いやりを示していると感じました。
そうですね。ただの猫を大切に思うこと、ただのピザ一切れを大切に思うこと、ただの見知らぬ人を大切に思うこと。世界に圧倒されそうなほど多くのことが起きている時は、本当に大切なものや、私たちを人間らしく感じさせてくれるものに再び焦点を当てることが不可欠です。
パンデミックの時に、全員がそれを経験したと思います。私は今、この作品でその大きなテーマを探求したかったのです。
―フロドが地下鉄から出てきたエリックを見つけるシーンについて、どのような考えがあったのですか?
エリックが最もトラウマを抱えた状態にある時に、猫が彼をほとんど催眠状態にするような瞬間を作りたかったんです。完全なショック状態で、この猫に釘付けになり、それが彼のキャラクターをその後動かしていく。フロドを通して、そしてサムを通して、エリックは嵐の中の焚き火のような存在を見つけ、それが導きとなるんです。
一方で、サムは「私はあなたにとってそんな存在になれない、あなた自身の力を見つけなきゃ」と葛藤しています。なので、この瞬間をうまく表現することが本当に重要でした。そこにはある種のユーモアもありますが、同時に心から感動的な何かもあるんです。
―猫が生き残らないバージョンはあったのですか?
いいえ。猫が人手に渡って生き続けるというのは、常に理にかなっていました。動物を殺すなら、本当に意味のある理由がなければなりません。そうでなければ、単に観客に残酷な仕打ちをしているだけになります。フロドは、登場人物たちにとって大切な存在でしたから、彼を殺すのはただ意地悪なだけだったと思います。
―1番難しかった猫のショットは?
本当に大変だったのは、地下鉄のシーンですね。猫は水を怖がっていましたが、時には水から逃げようとして水に飛び込もうとすることもありました。ジョー(ジョセフ・クイン)とルピタは猫たちと本物の絆を形成していたので、2人の周りにいる時はリラックスしていましたよ。
猫たちがリラックスして安全だと感じるのに必要な時間をかけ、「大丈夫だよ、水に入れたりしないから」と分かってもらうことが大切でした。でも、やっぱり猫は水が好きではないということが分かりました。
―CGを一切使わなかったということですが、撮りたかったショットでうまくいかなかったものはありますか?
オリジナルの脚本では、フロドがシーッと鳴いたり背中を丸めたりするシーンがもっとありました。でも、トレーナーから早い段階で、そういうことはできないと教わりました。それは、猫が脅威を感じたりトラウマを受けたりした時の自然な反応なんです。
なので、猫にシーッと鳴かせたいなら、CGIで口を置き換える必要があります。そこで私は、そうする代わりに、恐怖や不安を表現する他の方法に力を入れることにしました。
―エリックとフロドは船を降りた後、どうなったと思いますか?
おそらくかなりの人々が、2作目『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』に出てきた島に辿り着いたんじゃないでしょうか。彼らがそこにいる可能性は高いと思います。そして、間違いなく私たちが彼らに再会する可能性も高いでしょう。
―続編の可能性はあるのでしょうか?
パラマウントは、エリックとフロドがどうなったかを知ることができれば、とても喜ぶだろうと思います。具体的な企画があるわけではありません。でも、続編が決まっても驚きませんよ。
※本記事は英語の記事から抄訳・編集しました。翻訳/和田 萌
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