あの意外な作品も…侍映画の名作10選、『SHOGUN 将軍』シーズン2を待つ間にチェック!
ベテラン映画プロデューサーであり東京国際映画祭のプログラマーである市山尚三氏が、『SHOGUN 将軍』のファンに向けて、映画史に残る侍映画からお気に入りのの10本を選出した。年間約700本の映画を鑑賞するという映画通の市山氏。以下、黒澤明監督の『蜘蛛巣城』から特撮映画『大魔神』まで、意外な名作を含む選りすぐりの作品をチェック。
1.『十三人の刺客』工藤栄一監督(’63)
「東映の時代劇の傑作であり、今年の東京国際映画祭オープニング作品『十一人の賊軍』に影響を与えた作品」
1844年の徳川幕府時代を舞台に、武士道の名誉を汚す放蕩無能な藩主を暗殺すべく立ち上がった13人の刺客を描く。2010年には三池崇史監督によってリメイクされ、高い評価を得た。
2.『妖刀物語 花の吉原百人斬り』内田吐夢監督(’60)
「時代劇の巨匠・内田吐夢による作品で、大スター片岡千恵蔵が主演。吉原の華やかな情景の中で展開される悲劇を描く」
顔の痣のせいで結婚できない商人が、自分に優しく接した娼婦に恋をし、その女性を救い出して結婚しようとするが、それが悲劇的な転落の始まりとなる。
3.『人情紙風船』山中貞雄監督(’37)
「第二次世界大戦中に28歳で夭折した天才監督・山中貞雄の遺作。長屋を舞台に、様々な人々の人生が交錯する」
幕府時代の生活の厳しい現実を描き出した日本時代劇の名作。公開から90年近く経った今日でも、娯楽性を損なうことなく鋭い社会批評を内包している作品である。
4.『剣鬼』三隅研次監督(’65)
「時代劇の名優・市川雷蔵が演じる心優しい男が殺し屋へと仕立てられていく悲劇を、美しい田園風景の中で描いた作品」
三隅監督は、『子連れ狼』シリーズや『座頭市』シリーズで国際的にも知られている。『剣鬼』は花を育てる平和な生活を送っていた男が、特別な剣術を習得したことで暗い道へと転落していく物語である。
5.『大魔神』安田公義監督(’66)
「ゴーレムの伝説に着想を得た特撮時代劇の傑作。その残虐な描写は公開当時、多くの子供たちにトラウマを与えた」
時代劇と特撮を融合させた本作は、古い巨大な像に封印された怒れる霊(大魔神)が、殺害された領主の子どもたちを助けるために目覚める物語である。
6.『牡丹燈籠』山本薩夫監督(’68)
「江戸時代を舞台にした多くの怪談の中でも代表作。宙に浮かぶ幽霊は恐ろしい」
不気味さを極めた古典怪談の名作の1つである本作は、侍の時代を舞台に、死者に惹かれ交流することの代償を描く。侍映画が、無類に怖ろしい側面を持ち得ることを示している。
7.『赤毛』岡本喜八監督(’69)
「明治維新の戦乱の中で裏切られ、欺かれる人々の最後の抵抗を描いた侍映画の名作」
圧倒的な存在感を持つ三船敏郎が主演を務め、真っ赤な大きなかつらを身につけた侍を演じる。政府による年貢半減を告げるために故郷へ派遣されるが、政治的権力争いの駒として利用されることになる。
8.『上意討ち 拝領妻始末』小林正樹監督(1967年)
「封建社会の不条理を描いた、ダークな時代劇を代表する真の傑作」
三船敏郎が主演を務めた本作は、寡黙な剣士が主君の不正に対し、立ち上がるさまを描いた物語。小林監督の他の代表作には、侍映画の金字塔『切腹』(’62)、壮大な3部作『人間の條件』、そして多大な影響を与えた『怪談』(’64)がある。
9.『鴛鴦歌合戦』マキノ正博監督(’39)
「今では稀少となったミュージカルコメディ時代劇の代表作」
本作は、別の映画で主演を務めていた俳優が盲腸炎で降板した際、マキノ監督がわずか2週間で作り上げたことで知られる。志村喬が、歌を披露している点も見逃せない。封建時代の厳しい世界を舞台にしながらも、傘を振り回して踊るシーンを含む、軽快なミュージカルロマンチックコメディが展開される。
10.『蜘蛛巣城』黒澤明監督(’57)
「『七人の侍』がこうしたリストでよく選ばれる傑作であることは承知しているが、黒澤作品を代表する一本としては、この『マクベス』の翻案をおすすめしたい」
完全に異なる文化的背景に移し替えられているにもかかわらず、シェイクスピアの戯曲の映画化作品として最高峰の一つと広く評価されている。三船敏郎が武将・鷲津武時を演じ、偉大な文学批評家ハロルド・ブルームも「最も成功した映画版」と称した1本だ。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。編集/和田 萌
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