テイラー・スウィフト新作『The Life of a Showgirl』全曲レビュー|テイラーの“幸福”と“挑戦”を体現した傑作

テイラー・スウィフトによる12枚目のアルバム『The Life of a Showgirl』がついにリリースされた。今作は『ザ・トーチャード・ポエッツ・デパートメント』(2024年)以来の新作アルバムで、ゲストパフォーマーとしてサブリナ・カーペンターが参加している。
このアルバムは『1989』(2014年)のような王道のポップミュージックに回帰すると予想されていた。しかし実際には、『エヴァーモア』(2020年)と『ミッドナイツ』(2022年)を融合したような、甘美でメロウ、時にスキャンダラスな楽曲の詰まった作品となった。
スウィフトは、大成功を収めた「The Eras Tour」(2023~2024年)中に『The Life of a Showgirl』を制作したと語っている。スウィフトがツアーから得た経験は、このアルバムに最高の形で反映されている。
本記事では、『The Life of a Showgirl』の全収録曲を解説する。
The Fate of Ophelia
「The Fate of Ophelia」はこのアルバムのリードシングル。スウィフトの特徴でもあるストーリー性が強く、アルバム全体のトーンをまとめ上げる一曲となっている。
この楽曲はシェイクスピアの『ハムレット』に登場するオフィーリアをモデルに、グルーヴィーかつメロウ、そしてキャッチーなメロディーが紡がれる。これは『ミッドナイツ』や『ザ・トーチャード・ポエッツ・デパートメント』にも共通する作風だ。
なお、この楽曲はスウィフト自身が監督と脚本を手がけたミュージックビデオが制作されており、現地時間10月5日(日)にプレミア公開される。
Elizabeth Taylor
「Elizabeth Taylor」は、実在の俳優エリザベス・テイラーをモデルに、名声と向き合う女性の姿を描いている。このようなテーマは『ザ・トーチャード・ポエッツ・デパートメント』収録の「Clara Bow」などに見られ、スウィフトの楽曲ではおなじみだ。
スウィフトは冒頭で「自分があまり魅力的だと思えない時もある」と力強く歌い上げる。これが本アルバムのテーマそのものかもしれない。「Elizabeth Taylor」は本アルバムのハイライトであり、スウィフトの代表曲として間違いなく記憶に残るだろう。
Opalite
2曲目まではメロウな楽曲が展開されたが、3曲目「Opalite」はややハイテンポだ。この楽曲は『ミッドナイツ』で味わえるような夢心地を彷彿とさせ、冒頭の1秒からその世界に引き込まれる。「人生は歌、終わる時に終わる」というフレーズは特に印象的で、リスナーは思わず口ずさんでしまうだろう。
Father Figure
この曲は、ジョージ・マイケルによる同名の楽曲(1987年)を想起させ、キャッチーだがどこか異常性を感じさせるこの傾向は、『ラヴァー』(2019年)収録の「The Man」にも通じる。
この楽曲では、「俺が“ファミリー”を守る」「お前は魚のエサにされるだろう」など、スウィフト自身がマフィアのボスになったような歌詞が展開される。「お前が悪魔と取引したつもりでも、俺のアソコの方がデカい」のように、これまでスウィフトの楽曲になかった過激な歌詞も含まれる。
Eldest Daughter
スウィフトファンは、アルバムの5曲目といえば感動的な楽曲を予想するかもしれない。しかし、今作の5曲目である「Eldest Daughter」はそのルールから逸脱している。しかし、過去のアルバムの5曲目と比較しても、この楽曲を見過ごすことはできない。
コーラス部分でスウィフトは「私は悪い女じゃないし、これは野蛮なことじゃない」と歌い上げる。この楽曲は、スウィフトが長年強いられてきた“戦士の鎧”を脱ぎ捨てる意志を感じさせる。
Ruin the Friendship
「Ruin the Friendship」は、冒頭こそ高校時代を描いた典型的なラブソングに聴こえるが、ブリッジ部分から悲劇へと転換する。親友アビゲイルの名前が登場し、片思いの相手と友情の間で葛藤する女性が描かれる。そして最終的に、片思いの相手が亡くなったことが明かされるのだ。
「言いたいことが山ほどあったのに/タイミングは最悪だった/でも墓前で囁いたの/『それでも君にキスするべきだった』」と女性は後悔する女性の言葉は、「チャンスがあるなら思い切って行動すべきだ」という教訓を与えてくれる。
Actually Romantic
「Actually Romantic」は、本アルバムの中で最も異常で面白みの多い楽曲であり、『ザ・トーチャード・ポエッツ・デパートメント』収録の「thanK you alMee」の続編とも言える。スウィフトは直接的にではなく、感謝の気持ちを装いつつ皮肉を表現する。皮肉を向けられている人物は明かされていないが、ファンの間ではすでに予想されている。
「コカインで勇気を出したあなたが、私を『つまらないバービー』と呼んだって聞いたわ」という歌詞は、スウィフトの楽曲史上最も挑戦的な一文目かもしれない。
Wish List
長年のスウィフトファンにとって、「Wish List」は本アルバムの中で最もエモーショナルな曲かもしれない。その背景には、スウィフトがトラビス・ケルシーと公に婚約したことが挙げられる。
「私が欲しいものはあなただけ/子どもが何人か産まれて、あなた似の子が近所中にいるの」というスウィフトのコーラスは、リスナーの心を揺さぶるだろう。
Wood
「Wood」は、本アルバムで最もグルーヴィーな曲の一つだ。この曲は格別にポップだが、同時に情熱的でもある。
曲中では「彼の魅力が私を目覚めさせた/レッドウッドの木を見るのは難しくない/彼の愛が私の太ももを開く鍵だった」というフレーズが何度も挑発的に繰り返される。そして「女の子たちがブーケをキャッチする必要はないわ/“ハードロック”が近づいているって分かるから」というフレーズに、思わずクスッとしてしまうだろう。
Cancelled!
同業者の女性たちに向けたある種の批判ソングを多く書いてきたスウィフトだが、「Cancelled!」はワクワクする刺激的な楽曲で、このテーマの中でも最高の楽曲だ。この曲には、スウィフトの楽曲で初めて「ガール・ボス」という言葉が使用されている。「Good thing I like my friends cancelled(キャンセルされた友達が好きなの)」というフレーズは、一度聴けば頭から離れないだろう。
特に、「男だったら笑えるようなジョークを言った?/ちょっとうぬぼれすぎ?/それとも、ナイフの決闘に小さなバイオリンを持って行っちゃった?/そんなの、すべて今夜で終わり」というプレコーラス部分がすばらしく、スウィフトらしさを体現している。
Honey
「Honey」は、スウィフトが婚約を果たして幸せの絶頂にいることが最も表れている楽曲だ。愛らしくてハチミツのように甘く、心温まる楽曲に仕上がっている。
特に「私の永遠の“ナイトスタンド”(一夜の関係)になって、ハニー」という歌詞は、矛盾した表現を用いつつ、永遠にお互いが夢中になっている様子がうかがえる。
The Life of a Showgirl(feat. サブリナ・カーペンター)
サブリナ・カーペンターとのコラボ楽曲でありアルバムと同タイトルの「The Life of a Showgirl」は、本作のフィナーレにふさわしい楽曲だ。
「The Eras Tour」を完走した後、スウィフトがどこへ向かうのか、誰も想像できなかった。まるでスウィフトが人生の一つの章を閉じようとするかのように、この楽曲は「おやすみなさい」という一言で幕を下ろす。スウィフトは、人生とキャリアにおける新章へ踏み出す準備ができているだろう。この楽曲がそれを物語っている。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。
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