BLACKPINKロゼの軌跡と素顔――K-POPを超えて世界を魅了するスターが求める「ありのままの自分」とは

▼メルボルン育ちの少女からK-POPスターへ
ニュージーランドのオークランドでロザンヌ・パークとして生まれ、メルボルンで育ったロゼは、音楽に囲まれた幼少期を過ごした。ピアノを弾き、教会の聖歌隊で歌い、やがてギターを手に取るようになった彼女の人生は、15歳のときに大きく変わることになる。
YGエンターテインメントのオーディションに合格し、ソウルでの練習生システムに参加することを決めたロゼは、両親をメルボルンに残し、単身韓国へと渡った。それは、歌、ダンス、語学、評価が無限に続くブートキャンプだった。朝から深夜まで続く日々は、普通のティーンエイジャーの通過儀礼を犠牲にする過酷な環境であり、ほとんどの練習生がゴールにたどり着くことはなかった。
▼BLACKPINKとしての成功と世界的な影響力
19歳になる頃、ロゼはジェニー、ジス、リサとともにBLACKPINKのメンバーとしてデビューした。グループは瞬く間に爆発的な人気を誇り、2016年のシングル「WHISTLE」と「BOOMBAYAH」は韓国チャートを席巻し、米ビルボードにもランクインした。2019年にはK-POPガールズグループとして初めてコーチェラに出演し、さらに2022年からのワールドツアーでは約443億円以上を売り上げた。
現在、ロゼはソロアーティストとしてSpotifyで月間3,400万人以上、BLACKPINKとしてさらに3,150万人以上のリスナーを抱えている。インスタグラムのフォロワー数は8,400万人を超え、テイラー・スウィフトやアリアナ・グランデと肩を並べる存在となった。
▼練習生時代からの心境の変化
現在のロゼは、10代の頃の自分を思い出し、笑いながら「練習生だった頃の私は、恐れ知らずでした」と語る。そして「なぜ、こんなにも燃えるような情熱を持っていたのかわかりません。ただ突き進んでいましたね。練習生時代の自分を振り返ると、ただただ尊敬します」と回顧する。
しかし、年を重ねるにつれて心境は変化していった。「でも、年を取るにつれて、何も理解できない日が増えました。自分が何をしているのかわからない。ただ、日々の悪魔と闘っています。どうして当時はあんなに強かったのかわかりません」と、率直に現在の心情を明かしている。
▼ソロアーティストとしての新たな道
2021年に初のソロシングル「On the Ground」でギネス世界記録を樹立し、グループとソロの両方で世界チャート首位を獲得した初のアーティストとなった。
だが2023年にはBLACKPINKの将来に不安が広がり、メンバーはグループ活動についてYGと再契約したが、2024年にそれぞれが独自の道を歩み始めることとなる。ロゼはBLACKPINKのプロデューサーを務めるテディ・パークが2015年に共同設立した韓国のレーベル・The Black Labelに所属し、アトランティック・レコードと米国内での契約を結んだ。
「自分が何をしたいのか正確にはわからなかったかもしれません」とロゼは話す。「でも、飾り気のない、ありのままの自分の世界を求めているのはわかっていました」
また、ロゼの名前自体が、今まさに変化し続けている彼女のアイデンティティを象徴している。「もしロージーという名前が、私をより身近に感じさせてくれるなら、どうぞロージーと呼んでください。ロゼの方がクールに見えるなら、ロゼと呼んで構いません。本名のロザンヌでもいいです。でも、ロザンヌと呼ばれると時々お母さんに叱られているように聞こえてしまうので、少しドキッとするんです」と、肩をすくめながら説明する。
BLACKPINK時代のエッジの効いたサウンドとは異なり、2024年12月のソロアルバム『Rosie』は驚くほどパーソナルなものとなった。「当時、私は27歳の女の子で、純粋に、露骨なまでに自分自身であることを望みました。それがどんなものであれね。ソーシャルメディア時代の今を生き、人から認められたい、みんなに愛され評価されたいという気持ちから、自分の問題に日々悩まされていました」
▼ブルーノ・マーズとの大ヒット曲「APT.」
収録曲の中でもひときわ注目を集めたのは、ブルーノ・マーズとのデュエット曲「APT.」。Spotifyで20億回再生を突破し、ビルボード・ホット100で最高3位を記録。ソロとして初めて全米トップ10入りを果たし、グラミー賞候補としても話題を呼んでいる。ブルーノ・マーズは、「ビッグ・バッド・ロージーが偉大なことを成し遂げるのは運命だった」と称賛を送った。
グラミー賞の可能性について、ロゼは「本当に?信じられない」と驚きの表情をみせた。そして、「鳥肌が立っています。まだ私にとっては夢で、現実ではありません。実現すれば、自分に多くのことを証明できる瞬間になります」と伝えた。
▼世界的ブランドのアイコンに
ロゼのスケジュールは容赦ない。9月にはプーマのイベントで上海に飛び、その後ニューヨークへと向かいMTV VMAsで「ソング・オブ・ザ・イヤー」を受賞し、翌朝にはソウルに戻るという生活を送る。サンローラン、ティファニー、リモワ、プーマといった世界的ブランドが次々と彼女を起用し、K-POPスターとしてグローバルな広告キャンペーンを成功させた数少ない存在となった。
しかし、その注目は時に彼女を圧倒する。「すべてが現実ではないように感じます。私の人生は、まるでテレビで観るクレイジーなエピソードみたい。今、それをオフにして家に帰ってきたところです」そして「最近の人生にはあまりにも多くの気が散る要素がある」と語るロゼは、携帯の電源を切り、自分の体が何を必要としているかを意識する時間を持つことの大切さを学んだという。
▼プレッシャーと完璧主義との闘い
それでも、プレッシャーは簡単には消えない。「経験できることがたくさんあるし、とても恵まれていて、感謝しています」とロゼは語る。「でも、ほかの人が自然に楽しめることを自分は楽しめず、共感できないこともあります。私には失敗する余裕がないと考えているので、自分自身にとても厳しくなってしまうのだと思います」
ロゼのキャリアは、二面性の上に築かれている。休息を望みながらも活動を止められず、疑念を抱きながらも前進を続ける。K-POPの厳格なシステムの産物でありながら、規範に逆らう数少ないスターのひとりだ。
▼「本物の自分」を追い求めて
見せかけや派手さが重要視されがちな業界に身を置きながら、ロゼは自身の音楽を実生活の「タイムカプセル」にしたいと語る。そして、彼女が世界で最も強く求めているのは、「台本のない、ありのままの自分でいること」だ。
9月3日、韓国・ソウル。米『ハリウッド・リポーター』の表紙撮影のため、4時間にわたる準備を終えて椅子から立ち上がるロゼの姿は、完全に完成されたスターそのものだった。しかし、すべての華やかさと輝きの裏には、ほとんど息をつくことのない人生の中で、どうやって呼吸するかをまだ見つけ出そうとしている28歳の女性の姿があった。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。編集/和田 萌
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