【THE INTERVIEW】SUGIZO独占インタビューVol.3「初めて演奏した感じがしなかった」ウクライナのKAZKAとの共演語る

The Hollywood Reporter Japan編集長が今一番注目する「表現者」を立体的に掘り下げる「THE INTERVIEW」、第3回もギタリスト・SUGIZOが登場。

彼は先日、東京・Zepp DiverCityでツアー「SUGIZO TOUR 2023 Rest in Peace & Fly Away ~And The New Chaos is Saving You~」のツアーファイナルを終えている。このなかで彼が初めて共演を果たし、共作曲「ONLY LOVE,PEACE & LOVE」を披露したのが、ウクライナの国民的バンド・KAZKAだった。

戦火にあってもキーウから発信し続ける彼らと、普段から反戦と平和を訴えているSUGIZO、両者が国境を超えて共鳴したことは想像に難くない。では、そのコラボレーションの裏にはどんな経緯があったのだろうか。彼らの出会いとその印象、共作曲の制作に至るまで、SUGIZOとKAZKAのサーシャ&ディマの3人に話を聞いた。

――日本を代表するアーティスト・SUGIZOさんとウクライナの国民的アーティスト・KAZKAさん、ご両者の出会いのきっかけを教えてください。

SUGIZO:ウクライナでの紛争が始まってから、現地アーティストをチェックするようになったんです。特に好きだったのがONUKAとKAZKAで、FMヨコハマの自分の番組で何度もかけました。そして昨年、KAZKAが日本在住ウクライナ避難民向けの慰問で来日したんです。その時に彼らは広島に行って、反核のメッセージを発信していると知って。そんなアティテュードにも強く共感して、彼らの来日をサポートした「ウクライナ心のケア交流センター『ひまわり』」に僕から相談したのが始まりですね。

サーシャ:もともとアニメと初音ミクが大好きでしたが、初めて来日した時は日本人アーティストをほとんど知りませんでした。でもSUGIZOさんからビデオメッセージをいただいて、日本のスターがウクライナをサポートしてくれると知って、感動と安心を覚えました。

SUGIZO:昨年のウクライナに関するシンポジウムへの出演オファーがあったのですが、スケジュールが合わなかったのでビデオレターを送ったんです。覚えていてくれて光栄ですね。初音ミクから影響を受けたというのは日本人からしたら嬉しい。僕の娘も初音ミクが大好きなんです(笑)。

サーシャ:2回目の来日ではSUGIZOさんのライブを観ましたし、日本文化も勉強できました。今回、羽田空港まで本人が迎えに来てくれたのでとても驚きました(笑)。

――先日の『SUGIZO TOUR 2023 Rest in Peace & Fly Away ~And The New Chaos is Saving You~』が初のセッションだったそうですね。

SUGIZO:初めて一緒に演奏した感じがしませんでした。ぴったりとタイミングも合うし、何だか僕の細胞にウクライナの伝統音楽が入っているような感覚でした。中東ミュージシャンとのセッションも何度か経験しているので、ヨーロッパの民謡や民族音楽よりもオリエンタルな質感でやりやすかった。あとはKAZKAの音楽スキルの高さ! サーシャは歌がめちゃくちゃ上手いし、ディマはあらゆる楽器を弾きこなす天才。そんなふたりと一緒に演奏できるだけで本当にエキサイティングでした。

サーシャ:当日のリハーサルではSUGIZOさんのプロフェッショナルな部分を見るだけでなく、お母さんと娘さんも紹介してくれて、まるで家族のように温かい気持ちになれました。

SUGIZO

――今回のために一緒に作った楽曲も素敵でした。

ディマ:SUGIZOさんと一緒に作った楽曲「ONLY LOVE, PEACE & LOVE」は世界中に届いてほしいと思います。でもウクライナはまだ戦争中で、子どもの犠牲も多く、さらにいつ戦争が終わるかわからないので、人々はとても辛い思いをしている。だから私たちのメッセージは「早く戦争が終わってほしい」、「ウクライナに平和を」、「PEACE & LOVEな世界になってほしい」、それだけです。

サーシャ:ビートルズやマイケル・ジャクソンの曲もそうだったように、戦争に反対したり、平和を求める曲には強さがあります。今のウクライナには平和の歌が必要なので、この曲が平和的な革命の一助となれば嬉しいですね。

SUGIZO:ライブの2週間前に急遽作ることになりました。本当は新曲を準備したかったのですが、時間が足りずに20年前に作った僕の曲でぴったりだと思うトラックを再改築して新しい曲に生まれ変わったんです。

サーシャ:20年も前の曲なんですね! 素晴らしい。

――20年前の曲をどのように再構築したのでしょうか。

SUGIZO:データをKAZKA側に送って「もともと入っているメロディや歌詞は無視していい」、「ふんだんにウクライナの民族楽器や文化を感じるアレンジにしてほしい」と伝えたら、すごいトラックが返ってきましたね。一発で感動しましたよ。最後のシンガロングになる部分も彼らの導きによって生まれた展開です。

サーシャ:最初に聴いた時は難しい曲だと思いました。でもちょうどツアーや作曲の期間だったので、KAZKAのチーム全員でサウンド・プロデュースやコーラスなどを考えて仕上げていきました。

――次の展開にも期待できますね。

SUGIZO:個人的には彼らとの活動を続けていきたいと思っています。この共作曲もリリースしたいですし、当面の夢は戦争が終わった後のウクライナで一緒に演奏すること。とにかく早く戦争が終わって復興したウクライナを見たいですし、これからの強い結びつきに繋がっていくと感じていますね。あとはこれがKAZKAにとってアジア進出の第一歩になったと思うので、もっとアジアで活動してもらいたいし、できることは惜しみなくするつもりです。

サーシャ:私たちにとって夢のような話です。SUGIZOさんのサポートを心から感謝します。

――最後に、皆さんは”表現者”としての世界に対する「使命」をどう捉えていらっしゃいますか。

SUGIZO:音楽が今すぐに戦争を止めたり、世の中を変えることは難しい。でも平和や愛、宇宙的に正しいこと、人や生き物を支配しない自由な生き方を発信することで、受け手がキャッチして行動に火が付くかもしれない。だからリスナーにいい影響を与えることができると信じているし、彼らが世の中を変えていくはず。あらゆる芸術は社会とともにあるし、僕らはそれを発信しなくてはいけないと思っています。

サーシャ:今は戦争で悲しいニュースが多いかもしれませんが、私たちがウクライナの伝統的な音楽を見せたいという気持ちは変わりません。SUGIZOさんとのコラボレーションも「心は負けてない」というメッセージになると思うんです。

ディマ:世界の平和が一番、そして愛は人間に欠かせない気持ち。「PEACE & LOVE」ですよね。

平和を訴えるSUGIZOとKAZKA、今後も彼らの楽曲「ONLY LOVE, PEACE & LOVE」のリリースや新たなパフォーマンスに期待したい。そして両者の願いでもある停戦が一刻でも早く戦地にあるように。

(取材:山本真紀子、文/構成:小池直也、写真:大島央照、動画:黒澤新、ヘアメイク:酒井夢美)

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