ファレル・ウィリアムスが語った音楽業界の「落とし穴」

Pharrell Williams with Morehouse students who attended the premiere of his new short film, All Day I Dream About Sport A Film By Pharrell Williams and Gabriel Mose, presented by adidas
映画の試写会に出席した学生とP・ウィリアムス 写真:Yvette Glasco
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先週、5月9日に公開予定だったミシェル・ゴンドリーと共に監督を務めるミュージカル、『ゴールデン』の計画を白紙にしたと報じられたファレル・ウィリアムスが、アトランタでアディダスと製作した短編映画のプレミア上映会に登場した。映画は『”A”ll “D”ay “I” “D”ream “A”bout is “S”port(頭文字をとってAdidas)』というタイトルで、ファレルとガブリエル・モーゼスによって制作された。本作は「セネガルの日常生活にどっぷり浸かった西アフリカのカルチャーへのラブレター」と表現されており、ジャネール・モネイやハル・ベリーが登場する他のファレルによる映画作品とは違って、ダカールに住む一般の人々に焦点を当てたものとなっている。

20分の映画には超音波で映し出された胎児が老人になるまでに直面する人生の試練、美しさや喜びを描きつつ、その過程でボートや格闘技、競泳などのシーンが織り込まれるものとなっている。

またウィリアムスは映画のテーマソングも手がけており、『Mike Tyson Blow to the Face』という曲には、ハイ・ミュージアム・キャンパス(アトランタ)で行われた今回のイベントにも出席したラッパーのプシャ・Tが参加している。楽曲は、上半身裸にカウボーイハットをかぶった色黒のセネガル人男性が馬に乗って疾走するシーンと見事にマッチしており、2月17日にストリーミング配信された。

「アフリカ音楽を起源とする他のすべてのものとアメリカ的なものを並置することで、良い質感、良い異質な質感を演出することができると思いました」とウィリアムスは上映後のQ&Aコーナーで語った。

Q&Aコーナーには地元のモアハウス大学とスペルマン大学の学生たちも参加しており、これまでにウィリアムスが達成してきた輝かしい業績(アカデミー賞ノミネート、ルイ・ヴィトンのクリエイティブ・ディレクター就任、13回のグラミー受賞など)を称えてモアハウス大学から表彰された。

そんなウィリアムスは学生たちにキャリア選択のアドバイスを送っている。彼は「きっとみんなの両親にも考えはあるだろうけど、好きすぎてタダでやってもいいって思えるくらいのことを仕事にできるのがいいんじゃないかと思いますね」と四児の父親でもあるプロデューサーは語った。

また、司会者からモーゼスと映画の撮影で共演した時のことを聞かれると彼は「僕はなんというかちょっと変わった仕事仲間なんです」とした上で「共演する人たちのいる場では自分を抑えることにしています、というのもその人の才能を引き立てたいので。僕の仕事はいわば鏡を持って相手に自分の強みを見つけて、自信を持ってもらうこと、それをきっかけにして今までに挑戦したことのないやり方でその人に創作してもらうことです。それがうまくいけば、僕らの勝ちなんです」と自身の仕事における哲学を語った。

更にこの点についてウィリアムスはアトランタにおける伝説的なラップ・デュオ、アウトキャストのメンバーであるアンドレ3000を引き合いに出しながら、「彼があそこまですごいアーティストになったのは、彼が敢えて他の人が挑戦しようとしなかったことに取り組んだからです。彼は自身のルーツだとか、黒人であることの意味だとか、ユニークな経験をパンチラインによって表現しましたが、その際に色んな角度からアプローチしたんです。アンドレのやったことは誰にでもできることではありません」としながら、「誰にでもできることではないからこそ、僕のようなプロデューサーの出番というわけです」と持論を展開した。

その日唯一の観客からの質問は、あるスペルマン大学の学生によるものだったが、彼はウィリアムスの音楽プロデューサーとしてのキャリアを独自に講評しながら、素晴らしい作品を創ることが現代においては今まで以上に難しくなったのではないかという疑問をウィリアムスにぶつけた。しかし、それに対する『Happy』を手がけたヒットメーカーの答えは至ってシンプルなものだった。

彼は「音楽を手がける空間は本当に試練の多いものなんです。特に僕たちを勝たせようとはしてくれない業界だから尚更ですよ」と返し、人種的な問題や経済的な問題に触れつつ、「業界は僕たちを勝たせようとはしてくれません。契約書なんて今じゃ迷路みたいなものです。弁護士でもない限り読み解けないですからね」とウィリアムスは付け加えた。

また「特に有色人種にとっては更に難しいです。一見簡単に見えても、そうはいきません」とし、「僕らほど長い間この業界にいればわかってくるかと思いますが、最初の10年間なんてひたすらいいように利用された挙句めちゃくちゃになって、この世には誰もいい人なんていないんじゃないかって思えるくらいになるんです。ここまでくると、サウンドトラックの制作みたいな話を持ちかけられた時に、自分が作れる最高の音楽を作って話の流れを変えてやろうって思うようになりましたね」と自身の体験談を語った。

更にウィリアムスは「この業界はみんなトレンドを次から次に乗り換えるものでもあります。彼らは乗り換えるんです。次から次へとね。もう頭がおかしくなりそうですよ」と熱弁した。

レジェンドとして音楽界に止まらない活躍を続けるウィリアムスのアドバイスは、きっと学生たちの心に響いたに違いない。

※本記事は要約・抄訳です。オリジナル(英語)はこちら

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