トランプ政権「海外映画に関税100%」に『アプレンティス』製作者が私見語る

Jeremy Strong and Sebastian Stan in 'The Apprentice.'
『アプレンティス』に出演するJ・ストロングとS・スタン 写真:Cannes Film Festival
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若き日のドナルド・トランプ大統領を描いた『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』(2024)でプロデューサーを務めたダニエル・ベーカーマンが、ここ数日世界中のエンタメ業界を騒がせるトランプ政権の「海外映画に関税100%」政策に対し、ユニークな見解を語ってくれた。

なんでもベーカーマンは、今回アナウンスされた関税は雇用を米国に取り戻すための経済的手段というよりも、絶対的な交渉人としての自らのイメージを維持し、常にアグレッシブな姿勢を崩さないトランプ大統領独自の「自己演出術」と捉えているそう。

「トランプが映画業界における関税に言及したとき、私は彼がついに里帰りしたんだなと思いましたよ。なぜなら、この業界こそが彼の得意とするスキルに満ち溢れた場所だからです」

ベーカーマンは米『ハリウッドリポーター』のインタビューに応じる中で、ハリウッドの大物スターや監督たちはトランプ大統領のと同様の自己演出術」に秀でていると指摘した。彼によれば、今回の大統領がぶち上げた「関税100%」案も彼が従来から行なってきた「演出」の一部なのだそう。

「関税は、彼がロイ・コーンと出会ってから50年間語り続けてきた彼の『物語』を支えるツールなのです。その物語はドナルド・トランプという名のキャラクターについてであり、『見ろ、俺がどれだけお前たちを守っているか、そして俺だけがこれらの問題を解決できるたった一人の人間だ。お前たちを救えるのは俺だけなんだ』と繰り返し聞かせることで、その『物語』を強化しているのです」

ロイ・コーンとは若きトランプ氏にビジネスと人生における必勝法を叩き込んだ敏腕弁護士のことで、『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』では、コーン(演:ジェレミー・ストロング)が、若きトランプ氏(演:セバスチャン・スタン)にそうした「自己演出術」を教え込む過程が描かれるのだ。

更に、ベーカーマン氏は楽観主義的な見方かもしれないとことわりを入れた上で、あらゆる難局へ柔軟に対応してきたエンタメ業界であれば、今回の「関税100%」騒動を乗り越えられるとも指摘した。

「私はいつもポジティブな面を見るようにしています。確かに、週末の発表は衝撃的でした。もし関税が施行されれば、米国を含むあらゆる地域が大混乱に陥るでしょう。しかし、この業界は常に逆境を逆手にとって生きてきました。私たちは彼(トランプ大統領)の手法に対応する術を知っていますからね」

しかし、そんなベーカーマンの観測とは裏腹に国境の向こう側、カナダの映画業界には激震が走っているようだ。

カナダのエンタメ業界組合ACTRAの代表、エレノア・ノーブルは関税の発表を受けて「これは単なる貿易摩擦には止まらない、カナダの俳優やクリエイターの生活に対する攻撃です」と、悲痛なコメントを発表している。

実際、今回の関税が実際に導入されることとなれば、トロントやブリティッシュ・コロンビアに拠点を置く同国の制作会社や配信会社はハリウッドのスタジオに制作の大部分を依存していることから、大打撃を受けることは免れない。実際にカナダ各地に拠点を置く制作関連会社は、今回のトランプ政権による関税案に対して次々と抗議の声を上げている。

ベーカーマンの言うように、エンタメ業界はこの混乱を乗り越えられるのだろうか。今後の展開に注目したい。

※本記事は要約・抄訳です。オリジナル記事(英語)はこちら

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