日本映画批評家大賞『ぼくが生きてる、ふたつの世界』4冠、主演・吉沢亮「この上ない喜び」
第34回日本批評家大賞の授賞式が9日、東京国際フォーラムで行われた。作品賞は呉美保監督の『ぼくが生きてる、ふたつの世界』が受賞。同作は主演男優賞(吉沢亮)、助演女優賞(忍足亜希子)、編集賞(田端華子)と合わせ4冠となった。
呉監督は10年前の同賞で『そこのみにて光輝く』が監督賞、主演男優賞(綾野剛)、助演男優賞(菅田将暉)、助演女優賞(池脇千鶴)の4部門を制覇。だが、本人は第一子を妊娠中で、授賞式の翌日に出産したため出席がかなわず「もう映画を作れないだろうなと思っていたので、復帰できた喜びと同じ4つの賞でこの場に立てたことがうれしく感謝します」と喜びをかみしめた。
『ぼくが生きてる、ふたつの世界』は、ろう者の母と健常者の息子がさまざまな苦難を乗り越えて絆を深めていく物語。吉沢は撮影の約2カ月前から手話の訓練を積んでの受賞に「あこがれだった呉監督とご一緒できた作品で素敵な賞をいただけたことがうれしく、4部門という評価をしていただいたことがこの上ない喜びです」と感激の面持ちで語った。
ろう者である忍足は、10日が誕生日とあって「本当に光栄でとてもうれしく思います。最高の思い出になりました」と手話で喜びを表現。吉沢の手話に対しては、「2カ月であそこまで表現されたことは素晴らしい」と絶賛した。
主演女優賞は『あんのこと』の河合優実が射止め、「一つ一つのカットで心と体をささげることを大切にしていました。私ではない誰かを演じる映画作りで、世界にとっていい働きかけがになったらうれしく、これからも頑張って続けていきたい」とさらなる意欲。同作では入江悠監督が監督賞に輝いたが、「脚本を書いて準備をしている段階で河合さんといろいろな方に話を聞いたが、演出らしいことはしていないので監督賞を頂いていいのかが本音」と照れながら語った。
新人賞は『カラオケ行こ!』の齋藤潤、『十一人の賊軍』の本山力、『愛のゆくえ』の長澤樹が受賞。齋藤は昨年、対象作のほか『瞼の転校生』、『室井慎次』2部作など5本の映画に出演する飛躍を遂げ、「自分にとっては大きすぎる賞だが、この大きな力を支えに作品と向き合っていきたい」と決意を新たにした。
また、同賞の発起人の映画評論家の故水野晴郎氏の名を冠し、長年の功績を称えるゴールデン・グローリー賞は根岸季衣が選ばれ、「俳優に点数はなく、いつもこれでいいのかと毎回不安になるが、ちゃんとプロの方が見てくれているんだと思え力になります」と語った。
第34回日本映画批評家大賞の各賞は以下の通り。
作品賞:『ぼくが生きてる、ふたつの世界』
監督賞 :入江悠監督『あんのこと』
主演男優賞:吉沢亮『ぼくが生きてる、ふたつの世界』
主演⼥優賞:河合優実『あんのこと』
助演男優賞:綾野剛『まる』、森優作『ミッシング』
助演⼥優賞:忍足亜希子『ぼくが生きてる、ふたつの世界』
ドキュメンタリー賞:『大きな家』(竹林亮監督)
アニメーション作品賞:『ルックバック』(押山清高監督)
新⼈監督賞: 山中瑶子監督『ナミビアの砂漠』
新⼈男優賞(南俊子賞):齋藤潤『カラオケ行こ!』、本山力『十一人の賊軍』
新⼈⼥優賞(小森和子賞):長澤樹『愛のゆくえ』
脚本賞:甲斐さやか『徒花-ADABANA-』
編集賞(浦岡敬⼀賞):田端華子『ぼくが生きてる、ふたつの世界』
松永文庫賞(特別賞):東映剣会
ゴールデン・グローリー賞(⽔野晴郎賞):根岸季衣
ダイヤモンド⼤賞(淀川長治賞):草笛光子『九十歳。何がめでたい』
取材/記事:The Hollywood Reporter 特派員 鈴木元
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