Netflixドラマ『こんなのみんなイヤ!』が描いた、新しい”運命の出会い”のカタチ

『こんなのみんなイヤ!』よりクリステン・ベルとアダム・ブロディ 写真:Courtesy of Netflix
『こんなのみんなイヤ!』よりクリステン・ベルとアダム・ブロディ 写真:Courtesy of Netflix
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Netflixドラマ『こんなのみんなイヤ!』は、ちょっと風変わりな男女の恋を描いたロマンティック・コメディだ。ある日出会ったのは、恋愛やセックスについて語るポッドキャスターの女性ジョアン(演:クリステン・ベル)と、優しくてイケメンなユダヤ教のラビ(宗教指導者)であるノア(演:アダム・ブロディ)。ふたりの関係は、意外な展開でじわじわと深まっていく。

シリーズの企画・脚本は、エリン・フォスターが手がけた。彼女は、ドラマの初回で視聴者の心をつかむために、「ふたりの出会い方=運命の出会い(Meet-Cute)」に特別な工夫を加えたと語る。

では、具体的にどう描いたのか?脚本の一部を抜粋して解説する。


出会いの演出が物語を動かす鍵に

脚本より一部抜粋 提供:Courtesy of Netflix
『こんなのみんなイヤ!』脚本より一部抜粋 提供:Courtesy of Netflix

屋外、 アシュリー(ジョアンの友人)宅の近所、夜、続き (シーン3)
ノアとジョアンが歩いている。ノアはジョアンの毛皮のコートを羽織っている。

物語の冒頭で、ジョアンは友人のホームパーティに出かけ、ノアと出会う。もともとの脚本ではジョアンがバスローブ姿で登場する予定だった。しかし、「変な人に見える」という理由でボツに。代わりに、豪華な毛皮のコートを着て登場するアイデアに変更された。この毛皮のコートが、ふたりの距離を一気に縮めるきっかけになる。


毛皮のコートが生んだ、ふたりのはじまり

『こんなのみんなイヤ!』脚本より一部抜粋 提供:Courtesy of Netflix
『こんなのみんなイヤ!』脚本より一部抜粋 提供:Courtesy of Netflix

ジョアン
何の香水?いい匂い
(コートをきつく巻く)
ごめんなさい、近くに停められなくて。車は坂の下なの。

フォスターはこのシーンについて、「『ラ・ラ・ランド』みたいに、ロサンゼルスの夜の坂道を歩く感じを出したかった」と語っている。ノアが紳士的にジョアンを車まで送るが、実は彼の車はすぐそばだったという、ちょっとしたウソを通じて、彼の優しさと誠実さが自然と伝わる構成になっている。


宗教と恋愛、ふたりをつなぐ対話

脚本より一部抜粋 提供:Courtesy of Netflix
『こんなのみんなイヤ!』脚本より一部抜粋 提供:Courtesy of Netflix

ノア
言論は自由だ(間を置く)

ジョアンとノアが会話を重ねる中で、宗教観の違いや人生観のズレも浮き彫りになる。しかし、それを受け入れ合いながら惹かれていく様子が繊細に描かれている。ジョアンは「神様を信じるってどういう感じなの?」と問いかけ、ノアは彼女のありのままの姿に惹かれていく。

フォスター自身も無神論者の女性として、ユダヤ人の夫と出会った経験がある。その体験をジョアンのセリフや振る舞いに反映させているという。


恋に慎重なふたりが生むリアルな空気

『こんなのみんなイヤ!』脚本より一部抜粋 提供:Courtesy of Netflix
『こんなのみんなイヤ!』脚本より一部抜粋 提供:Courtesy of Netflix

ジョアン
本当に?知らなかったわ。
みんな神様についてすごく明確なイメージを持ってるように見えるけど、
私はしっくりくるものを見つけられなかった。

「この場面はすごくロマンティックにしたかった。これはノアのためのシーンでもある」とフォスターは語る。このドラマでは、わかりやすい恋愛描写を避けている。たとえば初対面でキスをしたり、連絡先を交換したりはしない。元カノとの関係がまだ整理できていないノアに、フォスターは「誠実さと自制心を見せてほしかった」と語る。


「傷つきたくない」からこその先手の自己開示

脚本より一部抜粋 提供:Courtesy of Netflix
『こんなのみんなイヤ!』脚本より一部抜粋 提供:Courtesy of Netflix

ノア
そうか、(両親は)別居してるんだね。
(続けて)
気のせいかな?それとも僕たちの違いを強調しようとしてる?

「ジョアンは、ノアに惹かれてしまっていることに怖くなったの。それで、自分が傷つく前に先手を打とうとしてるのよ」とフォスターは語る。「最初から自分のすべてをさらけ出して、相手を怖がらせておけば、拒絶されたときのダメージが少ない。防衛本能ね。私自身もそういうこと、よくしてきたの」と、自身の経験をジョアンのセリフに重ねていると、フォスター語る。


ありのままを貫く、等身大のヒロイン像

『こんなのみんなイヤ!』脚本より一部抜粋 提供:Courtesy of Netflix
『こんなのみんなイヤ!』脚本より一部抜粋 提供:Courtesy of Netflix

ノア
ああ、君は怖いよ。
複雑で、飾らなくて、気取らない、傷つきやすくて、美しい女性だよ。

フォスターは、ジョアンという女性を「典型的なコメディキャラ」にしないように心がけた。

「ジョアンのことを、カオスでめちゃくちゃな人だと捉える人もいる。でも実際は、ただ恋をするのが怖いだけなの。それに、自分を曲げたくない年齢に差しかかっている。過去のトラウマを抱えながらも、それを手放そうとしている。そして、ノアのような人を愛そうと必死にもがいているの」と分析する。

だからこそ、ジョアンとノアの関係は「一筋縄ではいかないけれど、応援したくなる」ものになっている。


恋に不器用な大人たちに捧げるラブコメ

ドラマ『こんなのみんなイヤ!』は、型にはまらない恋愛や、現代的な価値観のすれ違いをユーモアと誠実さで描いた新しいラブコメドラマだ。エリン・フォスターの実体験をもとにした脚本は、出会いの一瞬や言葉の選び方にまで繊細な工夫が込められている。恋に臆病な大人たちが少しずつ心を開いていく様子がリアルに共感を呼ぶ。

ありふれた運命の出会いを、まったく新しい視点から描いた本作は、今の時代だからこそ響く「等身大の恋愛ドラマ」と言えるだろう。

『こんなのみんなイヤ!』は、Netflixで配信中だ。

※本記事は抄訳・要約です。オリジナル記事はこちら

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