「引退は誤りだった」ダニエル・デイ=ルイス、8年ぶりに復帰作公開へ

引退を宣言してから8年――ダニエル・デイ=ルイスがスクリーンに戻ってきた。復帰作は息子ローナン・デイ=ルイスが監督を務めた『アネモネ(原題:Anemone)』である。
引退宣言をめぐる後悔
ニューヨーク映画祭でのワールドプレミアを前に、『ローリング・ストーン』誌のインタビューに応じたデイ=ルイスは、2017年に公表した「俳優引退宣言」を振り返り、後悔の念を口にした。
「いまになって思えば、ただ黙っていればよかった。間違いなくそうだ」とデイ=ルイスは語る。「あのときの発言は大げさで、意味のない戯言にしか思えない。本当に引退するつもりなどなかった。ただ、俳優業をやめて、別の仕事に取り組みたかっただけなのだ」
靴職人からスクリーンへの復帰
デイ=ルイスが最初に長期の休養を取ったのは1997年のことだ。デイ=ルイスはイタリアに渡り、靴職人としての修業に没頭した。その後、2002年にマーティン・スコセッシ監督の『ギャング・オブ・ニューヨーク』で復帰を果たす。二度目の大きな休養は、ポール・トーマス・アンダーソン監督作『ファントム・スレッド』(2017年)への出演を経て正式に発表されたものである。
「どうやら私は二度も『引退』したと言われているようだが、引退するつもりなど一度もなかった。ただ、しばらく別のことに取り組みたかっただけだ」とデイ=ルイスは語る。
「年を重ねるにつれて、再び情熱の炎が燃え上がる場所へ戻るのに時間がかかるようになった。しかし、ローナンと一緒に仕事をしたことで、その炎は一気に燃え上がった。最初から最後まで、ローナンと時間を共にすることは純粋な喜びであった」
父と息子の創作への思い
さらにデイ=ルイスは、息子が映画製作の道を歩み始める一方で、自身がその世界から離れつつあることに対して「心のどこかに残る寂しさ」を感じていたと明かしている。
「もし一緒に何かを作れるのなら、それは本当にすばらしいことだろう。そして、大掛かりな制作のしがらみに縛られるのではなく、もっと規模を抑えた形でできたらいいのに」とデイ=ルイスは語った。
『アネモネ(原題:Anemone)』の物語
本作は、中年の男(演:ショーン・ビーン)が森へと旅立ち、疎遠になっていた、隠遁生活を送る兄(演:ダニエル・デイ=ルイス)と再び絆を取り戻す姿を描いている。
デイ=ルイスは、この作品で再び表舞台に立つことについて「公の場に戻ることへのためらいがあった」と打ち明けている。しかし同時に、息子が「もし父が出演しないのなら自分もやらない」と明言したことが、出演を決意させる大きな後押しとなったのだという。
俳優という生き方への葛藤
デイ=ルイスは、復帰に際して感じた心境を「それはごく小さな恐怖のようなものだった」と表現している。
「映画作りという仕事そのものは、ずっと愛してきた。愛が途絶えたことなど一度もなかった。ただ、それに伴う生活の一部には、キャリアを始めた当初から今日に至るまでどうしても折り合いをつけられなかった。作品が終わるたびに、自分が中身をえぐり取られたような感覚に襲われる。もちろんそれも過程の一部であり、やがてまた再生の時が訪れると理解していたし、その感覚にも慣れていた」
「ただ、最後に経験した『ファントム・スレッド』の現場では、その再生がもう訪れないのではないかと強く感じ始めてしまった。だから、もうこの世界から距離を置くべきだと思ったのだ。自分にはこれ以上差し出せるものがないと感じてしまったからだ」とデイ=ルイスは語った。
公開スケジュール
『アネモネ(原題:Anemone)』は10月3日に限定公開で幕を開け、その後10月10日よりフォーカス・フィーチャーズの配給で全米へと拡大公開される予定である。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。
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