エミー賞での発言に賛否|イスラエル出身活動家ヘン・マジグが『真の勇気』を語る

ハンナ・アインバインダー 写真:Kevin Winter/Getty Images
ハンナ・アインバインダー 写真:Kevin Winter/Getty Images
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米人気コメディドラマ『Hacks(原題)』に出演する俳優ハンナ・アインバインダーが、2025年エミー賞授賞式の壇上で「Free Palestine(パレスチナに自由を)」と発言し、イスラエル問題に関連する映画機関のボイコット誓約書に署名したことが波紋を呼んでいる。これに対し、イスラエル生まれの活動家ヘン・マジグ氏は米『ハリウッド・リポーター』に寄稿し、「それは勇気ではなく、危険な行為だ」と批判した。

イスラエル問題をめぐる発言は『勇気』ではなく『流行への迎合』

マジグ氏は自身を「難民の子であり、反ユダヤ主義と闘ってきたユダヤ人」と紹介しつつ、アインバインダーの行動を「勇敢に見せかけただけのポピュリズム」だと指摘する。ハリウッドで「Free Palestine(パレスチナに自由を)」を唱えることは歓迎され、拍手を得られるが、現実には一部の事例でイスラエル・パレスチナ問題を口実にユダヤ人の安全を脅かす事例が報告されていると主張した。

実際、米国や欧州での暴力事件では「イスラエル批判」を口実にユダヤ人が攻撃の対象となる事例が報告されている。2025年5月、ワシントンD.C.のユダヤ博物館前で発生した銃撃事件では、「Free Palestine(パレスチナに自由を)」と叫びながら発砲したと証言されている。マジグ氏は「ユダヤ人が暴力を受けた時、攻撃者がイスラエル問題を理由に掲げても被害は現実だ」と強調した。

「良いユダヤ人」という幻想

さらにマジグ氏は、「ボイコットに署名するユダヤ人が“良いユダヤ人”として利用される」構造を批判した。反ユダヤ主義者が都合よくユダヤ人を「善」と「悪」に分けても、結局はユダヤ人そのものが否定される危険性があるという。

アインバインダーはユダヤ人として発言したが、それは「世界唯一のユダヤ人国家イスラエル」を否定するメッセージになり、結果として多くのユダヤ人にとって最も大切なアイデンティティを傷つけることになった、とマジグ氏は語る。

ユダヤ人の大多数は「イスラエル支持」

マジグ氏は世論調査を引用し、2021年のピュー・リサーチでは『米国のユダヤ人のおよそ8割が、イスラエルへのつながりを持つことを“重要または不可欠”と回答している』という趣旨の結果を示した。

さらに「世界のユダヤ人の半数はイスラエルに住んでいる」とも述べ、「シオニズム(ユダヤ人が祖国で自由に生きる権利を持つという考え)は周縁的な思想ではなく、ユダヤ人社会の共通認識だ」と強調した。

「イスラエル政府やネタニヤフ首相の政策を批判することは可能だ。私自身も批判してきた。しかしシオニズムそのものを否定することは、ユダヤ人の存在権を否定することと同義である」と訴えている。

真の勇気とは何か

マジグ氏は最後に「アインバインダーに本当に勇気があったなら、舞台で“イスラエル人とパレスチナ人双方の平和と共存”を訴えるべきだった」と述べた。さらに「ガザに残る人質の解放を求めることこそが真の勇気だった」と指摘し、彼女が国際的な舞台で発言できる機会を「橋を架ける場にできたのに、逆に壊してしまった」と締めくくった。

マジグ氏はユダヤ人アイデンティティ擁護や反ユダヤ主義に対抗する活動を行っており、著書『The Wrong Kind of Jew: A Mizrahi Manifesto』やデジタルシリーズ『And They’re Jewish』などの活動で広く知られている。今回の寄稿は、単なる芸能人の発言を超え、言葉の影響力と責任を問う警鐘として注目されている。

※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。

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