ディカプリオ最新作『ワン・バトル・アフター・アナザー』――批評家たちが大絶賛、10月3日(金)日本公開

レオナルド・ディカプリオ、『ワン・バトル・アフター・アナザー』(2025年)より 写真:Warner Bros.
レオナルド・ディカプリオ、『ワン・バトル・アフター・アナザー』(2025年)より 写真:Warner Bros.
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ポール・トーマス・アンダーソン監督の新作『ワン・バトル・アフター・アナザー』が10月3日(金)に日本公開を迎える。公開を前に、すでに批評家たちのレビューが次々と発表されている。

作品概要とキャスト

本作は、トマス・ピンチョンの1990年の小説『ヴァインランド』に着想を得た物語である。かつての革命家たちが再び集結し、仲間の娘を救出するために行動を起こすというストーリーだ。

出演陣には、レオナルド・ディカプリオショーン・ペンベニチオ・デル・トロといったアカデミー賞受賞俳優に加え、レジーナ・ホールテヤナ・テイラー、チェイス・インフィニティらが名を連ねている。ワールドプレミアは現地時間9月8日(月)にロサンゼルスで行われた。

製作費とワーナーの興行動向

『ワン・バトル・アフター・アナザー』の製作費は1億3,000万ドル(約192.4億円※)を超えると報じられており、アンダーソン監督の作品としては過去最大規模である。製作費のニュースが伝わった当初、ワーナー・ブラザースは立て続けの興行不振による厳しい視線を浴びていた。

しかし4月以降は流れが一変し、『マインクラフト/ザ・ムービー』『罪人たち』『ファイナル・デッドブラッド』『F1/エフワン』『スーパーマン』『Weapons(原題)』『死霊館 最後の儀式』と、7作品連続で北米興収4,000万ドル(約59.2億円)超えのヒットを記録している。

※2025年9月19日時点の為替レートで換算

賞レースへの布陣

ワーナーは巨額の製作費にもかかわらず、『ワン・バトル・アフター・アナザー』がヒット街道を維持できると確信しているようだ。スタジオ幹部のマイケル・デ・ルカとパメラ・アブディは、今月初めに米『ハリウッド・リポーター』に語り、本作でアワードシーズンに挑む計画を明らかにした。批評家たちの熱狂的な反応を考えれば、当然の判断といえるだろう。

映画『ワン・バトル・アフター・アナザー』
『ワン・バトル・アフター・アナザー』日本版ポスター © 2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.

レビュー集計サイトの評価

レビュー集計サイトでも、本作はきわめて高い評価を獲得している。『Rotten Tomatoes(ロッテン・トマト)』では66件のレビューに基づき批評家スコア97%を記録し、『Metacritic(メタクリティック)』でも批評家スコア96%をマークしている。さらに、映画ファンのレビューサイト『Letterboxd(レターボックスド)』でも5段階評価で4.3という好調なスタートを切っている。

批評家レビューの紹介

リチャード・ローソン

米『ハリウッド・リポーター』の批評家リチャード・ローソンは、本作を「いまの時代に驚くほど合った作品」と高く評価した。アンダーソン監督は、権威主義がじわじわ広がる現代を舞台に、ノスタルジーをいったん脇に置き、まっすぐ“現在”と向き合っているという。

さらにローソンは、大手スタジオ製作でありながら、何に怒り、何に絶望し、どう良くしていくべきかをはっきり示す、いまでは珍しいアメリカ映画だと述べている。

レオナルド・ディカプリオ、『ワン・バトル・アフター・アナザー』(2025年)より 写真:Warner Bros.
レオナルド・ディカプリオ、『ワン・バトル・アフター・アナザー』(2025年)より 写真:Warner Bros.

ピーター・ブラッドショー

英『ガーディアン』紙の映画批評家ピーター・ブラッドショーは本作に満点の5つ星を付けた。父と娘のこじれた関係を心理学的(フロイト的)に描き、米国とメキシコの国境で引き離される移民の親子を対比させている。また、米国の閉ざされた支配層や、常態化した移民当局(ICE)の摘発を鋭く批判し、トランプ大統領への熱狂に潜む「ビシー政権」的な危うさを告発する作品だと述べている。

さらにブラッドショーは、本作はシリアスさとユーモアが同居し、興奮と戸惑いを同時に味わわせる映画だと評価。スクリーンから勢いがほとばしり、好みはわかれるものの、一度ハマると癖になると書いている。

映画『ワン・バトル・アフター・アナザー』キャラクタービジュアル © 2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.
『ワン・バトル・アフター・アナザー』キャラクタービジュアル © 2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.

アレックス・ゴッドフリー

映画雑誌『エンパイア』の特集記事編集者アレックス・ゴッドフリーも5つ星を付け、「数年後に深夜放送で観ても、途中でチャンネルを変えられない。即座に古典入りする一本だ」と評価した。
ゴッドフリーは、登場人物も出来事も多い物語をアンダーソンが無駄なくまとめ上げたと称賛し、「情報量は多いのに冗長さはない」と述べる。

見どころは、荒涼とした砂漠の道路でのカーチェイスだ。見通しの悪い起伏が次々現れ、前後に取り付けたカメラが観客を“呪われたジェットコースター”のような体験へと引き込む。風景そのものが死の気配を告げるかのようだ。
この一連の場面は「映画の力を最大限に引き出した純粋なスリル」であり、「必要なものはすべてここにある」とゴッドフリーは絶賛している。

アリソン・ウィルモア

米エンタメ情報サイト『ヴァルチャー』の批評家アリソン・ウィルモアは、本作を「ポール・トーマス・アンダーソンの代表作級」と高く評価した。ピンチョン原作を現代的に作り替えた脚色の巧みさと、アクションの見せ方を称賛している。

作品にはクリスマスをモチーフにした白人至上主義の秘密結社が登場し、メンバー同士が「ハイル、セント・ニック!(ナチス式敬礼)」と挨拶するなど風刺的な場面もあるが、アクションに入ると一気に熱量が跳ね上がる。とくに丘が連なる道での追走シーンは、『ターミネーター2』(1991年)でT-1000がジョン・コナーを追ってロサンゼルス川へ突入する場面を思わせつつ、単なるオマージュにとどまらない迫力がある、と述べている。

レオナルド・ディカプリオ、『ワン・バトル・アフター・アナザー』(2025年)より 写真:Warner Bros.
レオナルド・ディカプリオ、『ワン・バトル・アフター・アナザー』(2025年)より 写真:Warner Bros.

キャリン・ジェームズ

『BBC』に寄稿した映画批評家のキャリン・ジェームズは、アンダーソン監督がドラマとコメディを高い技術で両立させたと評価している。

本作はヴィスタビジョン(ワイドスクリーン)で撮影され、大型軍用ヘリの着陸からバクタン・クロス(劇中の舞台の町)の場末の通りまで、終始スケール感があるという。さらにジェームズは、ここまで野心的な作品が滑らかに機能するのはまれだが、雑多で膨らみがちな物語を冷静にコントロールする力こそアンダーソン監督の持ち味だと書いている。

ポール・トーマス・アンダーソン監督 写真:Matt Winkelmeyer/Getty Images for SBIFF
ポール・トーマス・アンダーソン監督 写真:Matt Winkelmeyer/Getty Images for SBIFF

マイケル・カラブロ

米ゲーム・エンタメ情報サイト『IGN』のマイケル・カラブロは本作を「傑作」と断言し、「アンダーソンはキャリアの新たな高みに到達した」と評価している。演技面をとりわけ称賛し、なかでも最強のカリスマ革命家役を演じたテヤナ・テイラーの存在感を高く評価。「ラストが強く胸に響くのは、テイラーの演技あってこそだ」と述べる。

さらにカラブロは最大の賛辞をアンダーソン監督に贈る。「この映画が実現したこと自体が驚きだ。純粋におもしろく、父が娘を守るという普遍的な物語を力強く描きつつ、現代アメリカの政治状況への鋭い批評にもなっている。しかも、アンダーソンのキャリアで最高額の製作費による、ほぼオリジナルの企画でそれを成し遂げた」とまとめている。

※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。

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