消防士の葛藤を描く『シカゴ・ファイア』シーズン14――友情と昇進が生む新たな衝突【ネタバレあり】

ランディ・“マウチ”・マクホランド役のクリスチャン・ストールティ、『シカゴ・ファイア』シーズン14より 写真:Peter Gordon/NBC
ランディ・“マウチ”・マクホランド役のクリスチャン・ストールティ、『シカゴ・ファイア』シーズン14より 写真:Peter Gordon/NBC
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友情と昇進の狭間で揺れる消防士たち

数シーズン前、『シカゴ・ファイア』ではシカゴ消防局51分署のベテラン消防士2人、クリストファー・ハーマン(演:デヴィッド・エイゲンバーグ)と、彼の親友ランディ・“マウチ”・マクホランド(演:クリスチャン・ストールティ)が大きく取り上げられていた。

引退の問いと昇進の決断

彼らは年齢を重ねることで体力や技能の衰えと向き合い、「いつ引退すべきか」という難しい問題に直面していたのである。しかし前シーズン、ハーマンにはキャプテンへの昇進という新たな機会が与えられた。ところがハーマンはすぐにそれが自分には合わないと気づき、その代わりに昇進を望んでいた親友マウチがシカゴ消防局51分署の副指揮官に就けるように道を譲ったのだ。

クリストファー・ハーマン役のデヴィッド・エイゲンバーグ、『シカゴ・ファイア』(2012年~)より 写真:Adrian S Burrows Sr/NBC
クリストファー・ハーマン役のデヴィッド・エイゲンバーグ、『シカゴ・ファイア』(2012年~)より 写真:Adrian S Burrows Sr/NBC

「大いなる力には大いなる責任が伴う」とマウチを演じるストールティは語る。長年ただの一消防士として過ごしてきたマウチが指揮官を目指す展開は、ごく最近になってようやく現実味を帯びたという。役者としては意外に感じた一方で、キャラクターが「より良い自分になれるのではないか」と考えるようになったことは自然な流れでもあったのだ。

「ただ老いて現場を退くのではなく、『まだ終わっていない。もっと人の役に立てることがあるはずだ』と挑戦する姿がいいのだ」と現在62歳のストールティ自身も、マウチの姿勢に共感を示す。

ランディ・“マウチ”・マクホランド役のクリスチャン・ストールティ、『シカゴ・ファイア』シーズン14より 写真:Peter Gordon/NBC
ランディ・“マウチ”・マクホランド役のクリスチャン・ストールティ、『シカゴ・ファイア』シーズン14より 写真:Peter Gordon/NBC

伏線となった前シーズンラスト

ショーランナーのアンドレア・ニューマンも、前シーズンのラストシーンが今季の重要な伏線だったと明かす。そこではハーマンがマウチに「自分の時代は終わった。これからは新しいだれかが指揮を執るべきだ」と伝えるのだ。しかしニューマンは「物事はそんなに単純ではない」と語る。「友情の美しい場面だったが、新シーズンではその選択が複雑な余波を生むことになる」

(左から)ランディ・“マウチ”・マクホランド役のクリスチャン・ストールティ、クリストファー・ハーマン役のデヴィッド・エイゲンバーグ、ケリー・セブライド役のテイラー・キニー、『シカゴ・ファイア』シーズン13より 写真:Peter Gordon/NBC
(左から)ランディ・“マウチ”・マクホランド役のクリスチャン・ストールティ、クリストファー・ハーマン役のデヴィッド・エイゲンバーグ、ケリー・セブライド役のテイラー・キニー、『シカゴ・ファイア』シーズン13より 写真:Peter Gordon/NBC

友情の波紋と“初の衝突”

ストールティは、ハーマンがマウチに対して見せた優しい行動について、一部の視聴者が疑問を抱くかもしれないと語る。特に、ハーマンには養うべき5人の子どもがいる一方で、マウチには疎遠な娘が1人しかいないからだ。その対比はストーリーに緊張感をもたらす。「心配しなくていい。そこも掘り下げていく」とストールティは語る。長年共演してきたエイゲンバーグとの関係性が、役柄同士の“本当の衝突”として描かれるのは初めてのことだ。

(左から)ランディ・“マウチ”・マクホランド役のクリスチャン・ストールティ、クリストファー・ハーマン役のデヴィッド・エイゲンバーグ、『シカゴ・ファイア』シーズン12より 写真:Adrian S Burrows Sr/NBC
(左から)ランディ・“マウチ”・マクホランド役のクリスチャン・ストールティ、クリストファー・ハーマン役のデヴィッド・エイゲンバーグ、『シカゴ・ファイア』シーズン12より 写真:Adrian S Burrows Sr/NBC

「友情は試練を迎え、かならず変化せざるを得ない」と断言する。「ハーマンの選択は簡単なものではなく、その結果は多方面に及ぶだろう」とアンドレア・ニューマンも語る。

シーズン14のテーマ「物語」

では、シーズン14全体のテーマは何か。ニューマンは「物語だ」と語る。人から語られる物語、自分自身に語り聞かせる物語、そしてそれが選択にどう影響するか。マウチの物語は「ただのベテラン消防士で、数年後に引退する男」だった。しかしその物語は変化した。「結婚して子どもを持てば人生は理想どおりに進む」という幻想も、あっけなく崩れ去ったのだ。

シーズン14は、「物語」の力によって、キャラクターたちの人生がどう形作られるのかを見せることになる。

若手消防士たちにも及ぶ変化

「ケリー・セブライド(演:テイラー・キニー)とステラ・キッド(演:ミランダ・レイ・メイヨ)にとっても、物語は常に変化し、進化していく。彼らの前の世代からは“消防士とはこうあるべきだ”という語りが伝えられてきた。だが現実と理想の物語は往々にして食い違うのだ」とニューマンは語る。

(左から)ステラ・キッド役のミランダ・レイ・メイヨ、ケリー・セブライド役のテイラー・キニー、『シカゴ・ファイア』シーズン12より 写真:Adrian S Burrows Sr/NBC
(左から)ステラ・キッド役のミランダ・レイ・メイヨ、ケリー・セブライド役のテイラー・キニー、『シカゴ・ファイア』シーズン12より 写真:Adrian S Burrows Sr/NBC

新署長パスカルの指揮官としての変化

一方で、昨シーズンから登場した新たな消防署長ドム・パスカル(演:ダーモット・マローニー)は、前任のウォレス・ボーデン署長(演:イーモン・ウォーカー)が昇進した後を継いだ人物である。最初は部下との関係が険悪で謎めいた存在だったが、セブライドの支えと、妻の死という悲劇の中でシカゴ消防局51分署の仲間たちが示した思いやりによって、次第に心を開き、指揮官としての姿勢も変わり始めたのだ。

消防署長ドム・パスカル役のダーモット・マローニー、『シカゴ・ファイア』シーズン13より 写真:Peter Gordon/NBC
消防署長ドム・パスカル役のダーモット・マローニー、『シカゴ・ファイア』シーズン13より 写真:Peter Gordon/NBC

「今シーズンは予算削減と人員と階級の見直しによる危機から幕を開ける。消防署の統括体制が揺らぎ、パスカルは“自分は何を指揮するのか? 二つの大隊だけか、あるいは十の消防署か、それとも人員を減らされた組織か”と問い直さざるを得なくなる。そうした危機がむしろ家族を団結させるのだ」とニューマンは明かす。シーズン序盤のパスカルは、これまで見せたことのない姿を見せる。「よし、俺たちは一緒だ」と前に出てチームを鼓舞するのである。

転機となった「家族だけの葬儀」

ストールティとニューマンが一致して語るのは、前シーズンのパスカルの転機が妻の葬儀の場面だったという点だ。シカゴ消防局51分署の仲間たちは招かれていなかったが、全員で現れた。その時のやり取りで、「これは家族だけの葬儀だ」という言葉に対し、「だからこそ、私たちはここにいる」という返答が、彼らの関係を大きく変えたのである。

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※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。

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