【訃報】映画『コレクター』でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされた英国の名優、享年86

『コレクター』でカンヌ国際映画祭 女優賞とゴールデングローブ賞 主演女優賞 (ドラマ部門)を受賞、サマンサ・エッガー
サマンサ・エッガー 写真:COURTESY EVERETT COLLECTION
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『コレクター』でカンヌ国際映画祭主演女優賞およびゴールデングローブ賞(ドラマ部門)主演女優賞(ドラマ部門)を受賞したサマンサ・エッガーが、ロサンゼルスのシャーマンオークスの自宅で亡くなった。享年86。娘で俳優のジェナ・スターン(Netflixシリーズ『ハウス・オブ・カード 野望の階段』)が米『ハリウッド・リポーター』に明かしたもので、近年は病と闘いながらも、「長く、素晴らしい人生を送った」と語っている。

映画『コレクター』(1965)
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『コレクター』で一躍スターに

1965年、『ローマの休日』のウィリアム・ワイラー監督の心理サスペンス映画『コレクター』で、孤独な青年(演:故テレンス・スタンプ)に誘拐・監禁される美術学生を演じ、圧倒的な演技で脚光を浴びた。当初ナタリー・ウッドに打診されたが辞退されたこの役で、エッガーは強さと脆さを兼ね備えたキャラクターを見事に体現し、カンヌ国際映画祭主演女優賞とゴールデングローブ賞を受賞。オスカー候補にも名を連ねた。

「テレンスとは撮影中まったく会話をしなかった」とエッガーは2014年のインタビューで振り返っている。「ワイラー監督は徹底してリアリティを追求し、私が思うように演じられないと冷水を浴びせることもありました。本当に過酷な現場でした」とも語っていた。

サマンサ・エッガー『ドリトル先生不思議な旅』(1967)より
サマンサ・エッガー『ドリトル先生不思議な旅』(1967)より 写真:TWENTIETH CENTURY-FOX/PHOTOFEST

多彩なキャリアとハリウッド進出

その後も『ドリトル先生不思議な旅』(1967)、キャリー・グラントの引退作となった軽快なロマンティック・コメディ『歩け走るな!』(1966)、リチャード・ハリスショーン・コネリー共演の社会派ドラマ『男の闘い』(1970)など、多ジャンルで存在感を示した。

また、『王様と私』(1972)や『深夜の告白』(1973)のテレビリメイクにも出演した。1976年にはロバート・デュヴァルやニコル・ウィリアムソンと共演した映画『シャーロック・ホームズの素敵な挑戦』でワトソン夫人役を好演した。

映画『歩け走るな!』(1966)
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映画『男の闘い』(1970)
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ホラー映画界でも愛された女優

1970年代後半からはホラー作品にも積極的に出演。『The Dead Are Alive!』(1972)や『切り裂かれたヒロインたち』(1983)などでホラーファンから人気を博した。中でも、デヴィッド・クローネンバーグ監督の初期作『ザ・ブルード 怒りのメタファー』(1979)では、精神科医の実験によって“怒りの子供”を生み出す女性を怪演。この作品は現在もカルト的人気を誇る。

エッガーは当時をこう語っている。
「クローネンバーグの発想は本当に独創的でした。怒りという感情が肉体的に具現化するという設定は、恐ろしくも美しかったのです」。

舞台からハリウッドへ

1939年3月5日、ロンドン北部ハムステッド生まれ。父はイギリス陸軍の准将、母は第二次大戦中に救急車運転手として従事した。修道院学校で演劇と詩に親しみ、当初は美術学校に進学。その後、親戚の勧めで演劇学校ウェバー・ダグラス・アカデミーに入学し、舞台で頭角を現した。

1960年代初頭、『ドクター・イン・ディストレス(原題)』(1963)、『Psyche 59(原題)』(1964)などに出演し、女優としての地位を確立。『コレクター』ではジュリー・アンドリュースジュリー・クリスティらと並びオスカー候補に名を連ねた。

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晩年と功績

1970年代以降はロサンゼルスを拠点に、『ダークホース(原題)』(1992)、ビリー・ゼーンやキャサリン・ゼタ=ジョーンズらと共演した『ザ・ファントム』(1996)、ジョニー・デップシャーリーズ・セロン出演のSFスリラー映画『ノイズ』(1999)などに出演。

テレビでは『新スタートレック』や、『オール・マイ・チルドレン』、『マダム・プレジデント 星条旗をまとった女神』などで存在感を放った。
また、声優としてドラマ版『ヘラクレス』(1987)でヘラ役を担当し、ジェームズ・ボンドのゲーム作品では“M”の声を担当した。

私生活では俳優トム・スターンと結婚(1964~1971)し、2児をもうけた。息子のニコラス・スターンは『ステイ・フレンズ』(2011)『クリード』などを手がけた映画プロデューサーとして知られる。

エッガーは晩年、ロサンゼルスの教会で朗読奉仕者として活動し、動物愛護にも尽力した。
家族は声明で「彼女の人生は芸術と優しさに満ちていた。すべての生き物を愛した女性だった」と語っている。

追悼寄付先

故人を偲び、クストー協会(The Cousteau Society)、世界自然保護基金(WWFジャパン)、ALS協会英国オリンピック協会などへの寄付が呼びかけられている。

※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。

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