Netflix、生成AIをコンテンツ制作に導入へ──ギレルモ・デル・トロが懸念を表明「誰も望んでいない」

Netflix、生成系AIをコンテンツ制作にも本格導入?
現地時間10月22日(火)、Netflixは第3四半期の業績発表会見を行った。会場にはNetflixのテッド・サランドス共同CEOが出席するなか、同氏による生成系AIをめぐる発言が注目を集めた。
特に、最も注目されたのはサランドス氏が生成系AIを「コンテンツ制作」にも活用する意欲をみせたことだ。実に、同社が株主向けに送った書簡には以下のように記されていたという。
「私たちはクリエイターに幅広い生成系AIツールを提供します。それによって彼らがビジョンを実現し、視聴者の皆様により見ごたえある作品を届けることを支援していきます」
その一方で、サランドス氏はそれと同時に慎重な姿勢も見せた。彼はNetflixが「新しさのために新しさを追求することはない」としつつ、「本当に素晴らしいものを創るのは素晴らしい芸術家」だとクリエイターを称賛することも忘れなかった。
こうしたサランドス氏の発言の背景にあるのは、エンタメ業界の生成系AIに対する潜在的な拒否感だろう。とあるWME幹部が、OpenAI幹部に対して会議中に「よくも提携したいなんていえるな。あんたたちはこっちに宣戦布告したも同然だ」と発言した。
ギレルモ・デル・トロ監督が語る生成系AIへの「本音」
こうしたなかで、間違いなくNetflixは難しい立場に立たされている。同社の生成系AI導入は、投資家からは間違いなく高評価を受けている。その一方で、取引先である制作会社などがそうした動きに眉を顰めているのも確かだ。
実に、ハリウッドの大御所監督たちの間では生成系AIに対し、懐疑的な意見を持つ者も少なくない。その代表格にギレルモ・デル・トロがいる。なんとも皮肉なことに、監督がNetflixとタッグを組んだ最新作『フランケンシュタイン』は、科学技術に対する人間の過信に警鐘を鳴らすメアリー・シェリーの名著が原作だ。
現地時間月曜日、米『ハリウッド・リポーター』記者は、デル・トロ監督に対し、今話題の「Sora 2」について意見を聞いた。すると、次のような答えが返ってきた。
-誰もあれを望んでいなかったと思いますよ-
実に、監督の発言は、ハリウッドの大部分を代弁したものだといえよう。また、デル・トロと長年タッグを組んできたJ・マイルズ・デール氏も、生成系AIを用いて0から作品を作ることは「神様に唾を吐くのと同然」と私見を語った。このように、コンテンツ制作の場に生成系AIがすんなり受け入れられるとはとても考え難いのが現状だ。
前途多難なNetflixの生成系AI導入
こうしたハリウッドからの反発に対し、Netflixも備えてはいるようだ。実に火曜日、サランドス氏は生成系AIによる映像は主に「利用者制作のコンテンツ」における使用を企図していると述べた。これはつまるところ、デル・トロのような大御所監督の作品に対して生成系AIは使わないという意味だ。
しかし、それでも問題は残る。というのも、Netflixは現在インフルエンサーとの契約を積極的に結んでいるが、彼らに対して「利用者制作のコンテンツ」が生成系AIに取って代わられるかもしれないというメッセージングを発することになるからだ。それに、自分の仕事をAIに奪われるというハリウッドのプロが持つ不安は払拭できない。
当面のあいだ、Netflixは投資家と制作会社の板挟みの中で、難しい舵取りを迫られることになりそうだ。
※本記事は要約・抄訳です。オリジナル記事(英語)はこちら。
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