ヒップホップ界の帝王ディディがついに刑務所収監──薬物依存と衝撃の転落劇

ショーン・“ディディ”・コムズ、Illustration by Layer Ø 写真:Getty Images
ショーン・“ディディ”・コムズ、Illustration by Layer Ø 写真:Getty Images
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ヒップホップ界のカリスマ、ショーン・“ディディ”・コムズが、弁護団の要請によって指定されたニュージャージー州の低警備刑務所に入所した。コムズはここで、50か月(約4年2か月)の刑期を過ごす見通しだ。

今夏、全米を騒がせた8週間に及ぶ連邦裁判では、性的人身売買と組織的犯罪の容疑については無罪となったものの、マン法(州をまたぐ売春斡旋の禁止法)に違反する「売春目的の輸送」2件で有罪判決を受けた。10月3日に宣告された刑は懲役4年2か月、罰金50万ドル(約7,700万円※)、さらに出所後5年間の保護観察が付与されている。

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ショーン・“ディディ”・コムズ、ニューヨーク州ブリッジハンプトンで開催された第6回ホワイトパーティーにて(2004年7月4日撮影)写真:Dimitrios Kambouris/WireImage
ショーン・“ディディ”・コムズ、ニューヨーク州ブリッジハンプトンで開催された第6回ホワイトパーティーにて(2004年7月4日撮影)写真:Dimitrios Kambouris/WireImage

わずか14か月前、連邦当局による自宅捜索と逮捕劇によって、その華やかなヒップホップ人生が一気に崩れ落ちたコムズ。現地時間10月30日(木)、コムズはニュージャージー州フォート・ディックス刑務所に収監された。釈放予定は2028年5月と見られている。

判決後の行方──コムズが望んだ行き先とは

2024年9月の逮捕以降、ショーン・“ディディ”・コムズはブルックリンの連邦拘置施設に収監されていた。裁判の開始と判決を待つためである。弁護団は、すでに収監されていた14か月を刑期に算入し、即時釈放を求めていたが、判決で50か月の懲役が言い渡された後は、コムズをニュージャージー州フォート・ディックス刑務所の薬物治療プログラム(RDAP)に送るよう裁判所に要請した。

弁護人のテニー・ゲラゴス氏は、「RDAPを受けられれば、薬物依存の問題に取り組むことができるうえ、家族との面会や更生支援の機会を最大限に活用できる」と裁判官に訴えたという。

2025年5月12日、ニューヨーク市マンハッタン南部連邦裁判所で行われたショーン・“ディディ”・コムズの裁判の陪審員選定手続きの再開に、母親のジャニス・コムズと息子のキング・コムズが到着した 写真:John Lamparski/Getty Images
2025年5月12日、ニューヨーク市マンハッタン南部連邦裁判所で行われたショーン・“ディディ”・コムズの裁判の陪審員選定手続きの再開に、母親のジャニス・コムズと息子のキング・コムズが到着した 写真:John Lamparski/Getty Images

しかし、この願いは一度退けられた。10月8日、裁判と量刑を担当したアラン・スブラマニアン連邦判事は、「特定の施設を収容先として推薦することはできない」と明言したのである。この判断により、快適で人気の高いフォート・ディックス刑務所への移送は絶望的とみられていた。

RDAPプログラムの現実と判事の決断

スブラマニアン判事はこう述べている。
「裁判所は弁護側の希望する地域にある施設を推薦することはできるが、特定の刑務所を指定する権限はない。その決定は連邦刑務局の管轄である」

コムズの弁護団が求めていた「RDAP(薬物治療プログラム)」は、9~12か月にわたって実施される集中リハビリプログラムである。参加者は通常の受刑者とは別の居住区に隔離され、厳格な選考を経て選ばれるという。かつて同プログラムを経験したリアリティ番組『リアル・ハウスワイブス・オブ・ニュージャージー』(2009年~)の元出演者ジョー・ジュディーチェは、最近のFoxのインタビューでその実態を明かしている。

「このプログラムに『ただ参加する』なんてことはあり得ない。順番待ちのリストがあって、他にも希望者が山ほどいるんだ」とジュディーチェは語った。

ショーン・“ディディ”・コムズ 写真:Kevin Winter/Getty Images
ショーン・“ディディ”・コムズ 写真:Kevin Winter/Getty Images

RDAPは更生のチャンスを与える一方で、だれもが簡単に手にできる特権ではない。コムズの道のりが容易ではないことを、この発言は如実に物語っている。

更生プログラムの実態、そして法廷で語られた闇

連邦刑務局によれば、RDAPは同局が提供する中でも最も集中的な治療プログラムである。認知行動療法を中心に構成され、受刑者は健全な社会的コミュニティの中で生活することを通じて、行動や思考の修正を学ぶ仕組みだという。プログラム期間中、参加者は午前中に治療セッション、午後は労働や学習、職業訓練に従事する形で日々を過ごす。

この治療プログラムがコムズにとって意味を持つ理由は、裁判中にも明らかになっていた。審理の中では、コムズの薬物依存がたびたび証言として取り上げられたのだ。

キャシー・ヴェンチュラ、ショーン・“ディディ”・コムズ 写真:Frazer Harrison/FilmMagic
キャシー・ヴェンチュラ、ショーン・“ディディ”・コムズ 写真:Frazer Harrison/FilmMagic

10年間交際していた恋人であり、検察側の主要証人でもあったキャシー・ヴェンチュラは、2012年にプレイボーイ・マンションで行われたパーティーの最中、コムズがオピオイドの過剰摂取で倒れたと証言している。ヴェンチュラによれば、それはコムズとその関係者、男性売春者らが参加する「フリーク・オフ」と呼ばれる性行為と薬物摂取が何日も続くマラソンのようなパーティー直後だったという。

ヴェンチュラは、こうしたイベントに脅迫や強要によって参加させられたと主張しているが、コムズは一貫して否定しており、裁判でもその点については無罪とされた。

崩壊の証拠、そして「更生」の言葉

「彼は明らかに依存症患者だったと思います」──キャシー・ヴェンチュラは、法廷でそう断言した。

キャシー・ヴェンチュラ(2022年撮影)写真:Johnny Nunez/WireImage
キャシー・ヴェンチュラ(2022年撮影)写真:Johnny Nunez/WireImage

2024年9月、マンハッタンのパークハイアットホテルで逮捕された際、捜査官が押収したのは潤滑剤、9,000ドルの現金、クロナゼパムのボトル、そしてピンク色の粉末が入った小袋2つだった。その粉末は検査の結果、MDMAとケタミンの陽性反応を示し、俗に「ピンク・コカイン(Tusi)」と呼ばれるドラッグである可能性が高いとされた。Tusiは、MDMAやケタミンに加え、コカイン、メタンフェタミン、オキシコドン、カフェイン、さらにはカチノン類などが混合されることもある強力な薬物だ。

コムズは、逮捕の数か月前、2024年5月に公開した謝罪動画の中で「リハビリ施設に向かう」と語っていた。この動画は、2016年にロサンゼルスのホテルでコムズがヴェンチュラに暴力をふるう様子を記録した映像がCNNによって流出し、世間の怒りが爆発した直後に投稿されたものである。

裁判を通じて、コムズの弁護団は彼が連邦拘留中に断薬し、新たな人生を歩み始めていることを繰り返し強調した。弁護側は裁判官に対し、「彼はすでに過去と決別し、これからも薬物に頼らず生きていく覚悟を固めている」と主張したのである。

減刑の可能性

現在、コムズの正式な釈放予定日は2028年5月とされており、これは刑期の全期間を満了した場合の日付である。
しかし、コムズにはまだ一筋の希望が残されている。「ファースト・ステップ法(First Step Act)」に基づき、模範的な行動を続ければ、服役期間が最長で15%短縮される可能性があるのだ。

かつて栄光とスキャンダルの象徴だった男が、鉄格子の中でどんな第一歩を踏み出すのか──その行く末に、世界が静かに注目している。

ショーン・“ディディ”・コムズ(2023年10月6日撮影)写真:MEGA/GC Images
ショーン・“ディディ”・コムズ(2023年10月6日撮影)写真:MEGA/GC Images

※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。

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