李相日監督、黒澤明賞受賞でクロエ・ジャオ監督と会見し感激「身のすくむ思い」
第38回東京国際映画祭で黒澤明賞を受賞した李相日監督とクロエ・ジャオ監督が3日、記者会見を行った。
李監督は、「身に余る光栄。映画監督として活動し四半世紀になるが、今まで関わった俳優、スタッフに育てられた気持ちです」と感激の面持ち。ジャオ監督の大ファンだといい、クロージング作品『ハムネット』もいち早く観賞し、「今年最も心震える映画体験だった。偉大な芸術家と並んでいると身のすくむ思いです」と話した。

だが、黒澤監督に関しては「大学までは洋画で育ったもので…」と苦笑。その後、今村昌平監督が学長を務めていた日本映画学校(現日本映画大学)に入り、「ようやく本格的にふれるようになり、黒澤監督、今村監督は日本映画の偉大さの扉を開いてくれた作品群で、総合芸術とはこういうものだと体感させてもらった。特に黒澤監督は映画に人生をささげ、誰も見たことがない風景に向けて突き進んだ方」と尊敬の念を込めた。
『国宝』は興行収入170億円に迫る大ヒットとなり、アカデミー賞国際長編映画賞の日本代表にも選出され「しばらくは、アカデミー賞に注力することになると思う」と告白。そのため、次回作についは「『国宝』がこんなに当たると思っていなかった。もう少し早く着手できると思っていたが、完全なスタートが切れていない。ただ、残像というか、シルエットは見えてきている段階」と明かした。
一方、中国出身のジャオ監督は「日本の文化、芸術はストーリーテラーの私に大きな影響を与えてくれた。ここに来られて光栄」と笑顔。黒澤作品の魅力については、「規模の大きな世界と人々の親密さの対比が素晴らしい。作品を見る方が登場人物を好きになるよう、人間の影の部分もきちんと描いている。そして、西洋の文化を日本のフィルターを通して海外に発信し、世界規模で文化交流を成し遂げた方」の3点を挙げ称えていた。

また、米映画「レンタル・ファミリー」(来年2月27日公開)の舞台あいさつに登壇した柄本明(77)はこの日が誕生日。祝福の花束を贈られ「気を使ってもらいすいません」と恐縮していた。
取材/記事:The Hollywood Reporter 特派員 鈴木元
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