トランプ前大統領、フロリダ邸宅での機密文書不法保管の訴えに無罪を主張

ドナルド・トランプ 写真: ©Win McNamee/Getty Images

ドナルド・トランプ前大統領は、6月13日火曜日にマイアミの裁判所で、機密文書の不法保管と政府からの返還要求に応じなかった罪など関連する複数の容疑に対し無罪を主張し、連邦法違反で起訴された初めての大統領経験者になった。

最高司令官として守るべき政府の機密情報の扱いをトランプ前大統領が誤ったという起訴内容の歴史的な裁判は、2024年の大統領選挙のさなかに展開され、政治家としての将来だけでなく、トランプ前大統領個人の自由にも大きな影響を与える可能性がある。

裁判所へ向かう途中、トランプ前大統領は検察側への批判をソーシャルメディアに投稿し、長年に及ぶ法的苦境の中で法に抵触することは何もしておらず、政治利用されているなどと主張し、いつもの虚勢を張って罪状認否臨んだ。しかし法廷内では、無罪を主張する弁護士の横で眉をひそめ、腕を組みながら鎮座。パスポートの没収や渡航制限を受けることなく罪状認否は短時間で終了した。

今回の起訴は手続き的な意味合いが強いものの、2016年の大統領選直前に元ポルノ女優へ支払ったとされる口止め料をめぐるニューヨークでの起訴に加え、トランプ前大統領が主張する2020年のアメリカ大統領選挙での不正をめぐるワシントンとアトランタで進行中の調査も抱えているトランプ前大統領にとって、大統領経験者が起訴されるという前例のない出来事に新たな事例が追加された。

まぎれもない法的危機に直面しても自信を見せようと、トランプ前大統領は自身を訴訟した司法省の特別顧問を「トランプ嫌い」と攻撃し、2024年の大統領選挙戦の継続を表明し、13日火曜日の夜にニュージャージー州のベッドミンスターで演説と資金集めを行った。出廷後、マイアミを離れる途中、市内のリトルハバナ地区にある人気のキューバレストランに立ち寄ると、翌日に77歳の誕生日を迎えたトランプ前大統領にお祝いの言葉をかける支持者も現れた。

しかし、それでも事の重大さは明らかだった。

これまで大統領経験者が司法省に起訴されたことはなく、まして機密情報の不適切な取扱で起訴されたことも一度もなかった。先週公開された起訴状によるとトランプ前大統領は37件の罪状で起訴されている。中には、スパイ行為法に基づくものも多く含まれており、フロリダ州の邸宅マール・ア・ラーゴの寝室やシャワーなどに機密文書を違法に保管し、捜査官の返還要求に応じず隠蔽を試みたとされている。有罪になった場合、数年に及ぶ懲役刑が課されるとみられている。

トランプ前大統領はこれまで、自身を政治的迫害の犠牲者だとする、いつもの演出を繰り返してきた。しかし、ジョー・バイデン現アメリカ大統領に任命されたメリック・ガーランド司法長官は、トランプ前大統領による政治的攻撃から司法省を守るため、9日金曜日に「この国には例外なく全ての人に適用される一連の法律がある」と宣言したジャック・スミス特別検察官に今回の件を一任した。

スミス特別検察官は火曜日の起訴に出席し、検察側の後ろの最前列から見守っていた。

スミス特別検察官の出廷は抗議行動の可能性を視野に入れたもので、著名なトランプ支持者の中には辛辣なレトリックで支持を表明する者もいた。トランプ前大統領自身も、火曜日に裁判所で予定されていた抗議行動に参加するよう支持者に呼びかけていた。市当局は、裁判所周辺で起こりうる騒乱に備えてたものの、大きな混乱が起こる気配はほとんどなかったという。

デビッド・ハーバック検察官は、大統領候補としての立場から国外逃亡の可能性は低いとし、トランプ前大統領にパスポートの引き渡しを要求しなかったが、今回の件について証人と接触しないことを言い渡した。トランプ前大統領の側近であり、機密文書が入った箱をトランプ前大統領の指示で移動させ、FBIに嘘をついた容疑で先週起訴されたウォルト・ナウタ氏への接触も含まれる。なお、ナウタ氏は弁護士が付いていなかったため火曜日の法廷には出廷していない。

罪状認否を担当した裁判官はトランプ前大統領に対し、ナウタ氏を含む証人と事件に関わる目的で接触しないよう指示した一方、仕事に関する場合は問題ないとした。

大統領退任後の時間のほとんどを刑事捜査に追われることになったトランプ前大統領でさえ、今回の一件は検察が集めたとされる証拠の量と疑惑の深刻さの両方から、とりわけ注目を集めることになった。

ワシントンの連邦大陪審は数カ月にわたり証言を聞いていたが、司法省はトランプ前大統領の邸宅マール・ア・ラーゴがあり、妨害行為の多くが行われたフロリダで起訴した。トランプ前大統領は火曜日に連邦判事の前に姿を現したものの、今回の事件はトランプ政権時に指名された地裁のアイリーン・キャノン判事に割り当てられた。キャノン判事は昨年、押収した機密文書を見直すための外部の特別管理者の任命権を巡る裁判でトランプ前大統領に有利な判決を下した人物。彼女の判決は最終的に控訴審で取り消されている。

事件の進展に伴い、トランプ前大統領がどのような反論を展開するかは未だ不透明なまま。

起訴された翌朝、弁護士の2人が辞任を表明し、49ページに及ぶ告発文書にはもう1人の弁護士エヴァン・コーコラン氏のメモや回想が繰り返し引用されているため、検察側が彼を重要参考人として呼び出す可能性もある。

司法省は金曜日に、37の罪状に関わるトランプ前大統領の起訴状を公開した。内31件は国防情報を意図的に保管したことに関するもので、その他は捜査妨害や虚偽記載を画策した容疑だ。

起訴状によると、2021年1月の大統領退任後、トランプ前大統領がホワイトハウスからマイアミの邸宅マール・ア・ラーゴに数百もの機密文書を意図的に持ち込み、保管したとされている。核開発計画、米国および外国政府の防衛・兵器能力から、ペンタゴンの「攻撃計画」に関する資料までが浴室や寝室などに保管されていたと検察は述べている。

加えて、トランプ前大統領とともに起訴された側近のウォルト・ナウタ氏に文書を隠すために機密文書が入った箱を移動するよう指示したり、司法省の召喚状で求められた文書を隠すまたは破棄するよう自身の弁護士にそそのかすなど、機密文書を取り戻す政府の妨害を試みたとも検察は述べている。

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