なぜ私たちはスタンディングオベーションを気にするのか?
好むと好まざるとにかかわらず、カンヌ国際映画祭を含むプレミアでの拍手の時間計測は長い間行われてきた慣習で、近いうちになくなることはないだろう。
映画のプレミアでのスタンディングオベーションは、特にカンヌ国際映画祭のような権威あるイベントでは、長い間注目と宣伝の対象となっていた。これらのオベーションの長さは、メディアの語り直しの中でしばしば誇張されがちだ。スティーブン・スピルバーグの『E.T.』の経験がその例で、彼は6分半の拍手喝采を受けたと記憶しているが、後の報道では20分とされた。この拍手の長さを計測し、誇張する伝統は数十年前から行われており、リチャード・フライシャーの『強迫/ロープ殺人事件』(原題:Compulsion)のように、15分間のスタンディングオベーションを売りにした映画もある。
スタンディングオベーションの時間を計測することは、映画祭の参加者や映画業界誌、ブロガーの間で、ややもすると熱中的な行為となっている。2006年のギレルモ・デル・トロ監督の『パンズ・ラビリンス』の22分間の拍手喝采や、2004年のマイケル・ムーア監督の『華氏911』の20分間の拍手喝采などが注目すべき例だ。今日では、ほとんどすべての注目度の高いプレミアの拍手喝采が計測されている。この慣習はしばしば揶揄されもするが、それでも依然として行われている。業界の内部者は、映画の評価を一つのデータポイントに還元することの問題点を認識しているが、このデータの「粘着性」が、それを記憶に残りやすく、マーケティングに効果的なものにしている。
スタンディングオベーションの時間計測は主観的なもので、いつ始まりいつ終わるかによって変わる。普遍的な基準がないため、数値に不一致が生じる。監督やスターは、『ザ・サーファー』のニコラス・ケイジのように、観客とのやり取りによって拍手の長さを操作することも可能だ。社交界の人々、資金提供者、会社の従業員など、観客の構成も拍手喝采の長さに影響する。これらの拍手喝采は、映画そのものよりも、関係者を称えることが多い。デヴィッド・カイガニック氏がベネチア映画祭での『ボーンズ アンド オール』について指摘したように。つまり、スタンディングオベーションは、映画の価値と同じくらい、映画界の遺産とスターの力を称えるものなのである。
※本記事は抄訳・要約です。オリジナル記事はこちら。
【関連記事】
- カンヌ国際映画祭、スタジオジブリに名誉賞を授与- THR Japan (hollywoodreporter.jp)
- 『ザ・サーファー』レビュー:ニコラス・ケイジが楽しく華やかなオーストラリアのスリラー映画で魅力的な狂気を演じる- THR Japan (hollywoodreporter.jp)