トロント国際映画祭:大注目のダニエル・クレイグとニコール・キッドマン、有力候補『クィア』と『ベイビーガール』

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『ムーンライト』、『レディ・バード』、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』、『パスト ライブズ 再会』などの作品を手がけるA24は、今日の映画業界において、誰よりも大胆な配給会社である。2024年トロント国際映画祭に出品された2本の作品ほど、それが顕著に表れているものはないだろう。

イタリアのルカ・グァダニーノ監督の『クィア』とオランダのハリナ・ライン監督の『ベイビーガール』は、ヴェネチア国際映画祭でワールドプレミア上映された後、トロントにやって来た。両作品とも、それぞれダニエル・クレイグとニコール・キッドマンというハリウッドの正真正銘のA級スターが、性的抑制やその欠如、パワーダイナミクスを探求する非常にきわどい役柄で出演している。(ヴェネツィアの審査員はキッドマンに映画祭最優秀女優賞を授与し、クレイグは最優秀男優賞の本命と噂された)。

それぞれ9分と7分という長いヴェネツィアのスタンディングオベーションを受け、ロッテン・トマトのスコアは78パーセントと94パーセントである。しかし、どちらもここよりさらに上り坂になるのではないだろうか。『クィア』は135分と非常に長く感じられ、どの上映会場でも相当数の退場者が出たかもしれない。また、両作品とも露骨なヌードやセックスシーンが多く、ある程度の年齢の投票者には厳しいのかもしれない。

しかし、両作品の中心となる演技は、彼らが出演している映画に熱狂していない人たちからも、かなりの尊敬と称賛を集めている。直近でも、2020年の『ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌』でのグレン・クローズ、2020年の『ザ・ユナイテッド・ステイツ vs. ビリー・ホリデイ』でのアンドラ・デイ、2022年の『ブロンド』でのアナ・デ・アルマスなど、両極端な作品での力強い演技がノミネートされた。

ヴェネツィアの直前にA24が獲得した『クィア』は、カウンターカルチャーの象徴である故ウィリアム・S・バロウズの1985年の半自伝的小説を、ジャスティン・クリツケス(グァダニーノのもうひとつのセクシュアルな2024年作品『チャレンジャーズ』の脚本家でもある)が映画化したもの。この作品でクレイグは、バロウズの分身であるビル・リーを演じている。彼は1940年代のメキシコ・シティに住むオープンリーゲイのアメリカ人駐在員で、酒、ドラッグ、そして他の男たちとのセックスへの果てしない欲求を満たそうとする以外、何もしていないように見える。

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現実的なものからトリップ、奇想天外的なものへと進化(または退化?)するこの映画で、クレイグはこれまで私たちがスクリーン上で見たこともないような変身ぶりをみせる。(彼は舞台俳優としても素晴らしい)。ローリング・ストーン誌はこれを「生涯の役」「彼のキャリアの金字塔」と評し、ハリウッドレポーター誌の批評はクレイグの努力を「釘付けになる演技」と評している。

A24がはじめから出資した『ベイビーガール』で、キッドマンはロミーを演じている。妻であり、10代の子供たちの母親であり、会社のCEOである彼女は、家庭で満たされない性的欲求を抱え、その結果会社のかなり年下のインターンと不倫関係を結ぶ。

奇しくもクリスマスに公開されるこの映画は、”運命の引力”や”本能の基本”のような往年の名作の流れを汲むエロティックスリラーのような面もある。しかし、全体的には非常に現代的でタイムリーであり『ター』や『フェアプレー』と並んで#MeToo時代の傑出した作品である。

キッドマンの演技は際立っており、ヴェネツィア国際映画祭での受賞(受賞が決まった日に母親が亡くなったため、残念ながら彼女は直接受け取ることができなかった)だけでなく、彼女の演技を称える声が相次いでいることでも証明されている(THRの批評は、彼女の「大胆不敵さ」を強調し、「絶好調」と評している)。

※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。翻訳/山中 彩果

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