最も多くのアカデミー賞を受賞したジャンルは?受賞作品を分析

3月3日(米時間)に開催される第97回アカデミー賞。同賞の97年にわたる歴史の中で、どの映画ジャンルが最高の栄誉を獲得してきたかを振り返る。
1929年に初開催されたアカデミー賞では、当時から現在に至るまで、名称の変遷はあれど作品賞が最も名誉ある賞として位置づけられてきた。一方で、97年にわたるアカデミーの歴史の中で、「どのジャンルの映画がその栄誉に値するのか」という視点には変化と継続の両方が見られる。
例えば、1950~60年代に全盛を誇ったミュージカル映画は、近年の受賞作ではほとんど姿を消している。一方で、叙事詩的映画(壮大なスケールで人間ドラマを描くことに重きをおく)は今なお称賛され続けており、ホラーやSF映画は依然として受賞の機会が限られている。
トレンドはしばしば、アカデミー会員の嗜好の傾向を示す指標となる。そこで、今年の作品賞ノミネート作が属する9つのジャンルに分類し、歴代の作品賞受賞作を集計することで、どの映画がオスカーを獲得する可能性が最も高いのかを分析した。
【伝記ドラマ】
叙事詩的映画と同様に、伝記ドラマも壮大な物語を描くジャンルである。伝記映画のように1人の人物の人生全体を詳しく描くのではなく、歴史の特定の時代が主人公の人生に与えた大きな影響やその逆を探求する物語が展開される。
現在、このジャンルで最も成功した作品は『オッペンハイマー』(2023)で、興行収入は約10億ドルに達した。
▪️2025年ノミネート作品
- 『I’m Still Here(原題)』
過去の受賞作品
- 『アマデウス』(1984)
- 『オッペンハイマー』(2023)
- 『グリーンブック』 (2018)
- 『スポットライト 世紀のスクープ』(2015)
- 『それでも夜は明ける』 (2013)
- 『英国王のスピーチ』 (2010)
- 『ビューティフル・マインド』 (2001)
- 『ラストエンペラー』(1987)
- 『プラトーン』 (1986)
【伝記映画】
1937年の『ゾラの生涯』は、アカデミー賞作品賞を受賞した2作目の伝記映画となった。これは、前年に受賞したミュージカル映画『巨星ジーグフェルド』 (1936) に続くものだった。
1983年には、ベン・キングズレー主演の 『ガンジー』 (1982) が商業的にも批評的にも大成功を収めた。制作費2200万ドルに対し、興行収入は1億2780万ドルに達し、その年のアカデミー賞では最多の11部門にノミネートされ、8部門で受賞を果たした。
▪️2025年ノミネート作品
過去の受賞作品
- 『ガンジー』 (1982)
- 『ゾラの生涯』 (1937)
【ロマンティック・コメディ映画】
『或る夜の出来事』 は、作品賞を受賞した初のロマンティック・コメディであるだけでなく、1934年にアカデミー賞の主要5部門(作品賞、監督賞、主演男優賞、主演女優賞、脚色賞)をすべて制した最初の映画でもあった。主演男優賞と主演女優賞を同時受賞した作品は、その後41年間現れず、1975年の 『カッコーの巣の上で』 が2作目として主要5部門の受賞を果たした。
▪️2025年ノミネート作品
過去の受賞作品
- 『或る夜の出来事』 (1934)
- 『恋におちたシェイクスピア』 (1998)
- 『アニー・ホール』 (1977)
- 『アパートの鍵貸します』 (1960)
- 『我が家の楽園』(1938)
【叙事詩的映画】
壮大なスケールで人間ドラマを描くジャンルである叙事詩的映画。今までに合計10本の叙事詩的映画の続編がアカデミー賞作品賞にノミネートされたが、受賞したのは壮大なテーマと巨額の予算をかけた製作が特徴の壮大な2本のみ。 1974年の『ゴッドファーザー PART II』が最初の作品となり、 2003年には『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』が続いた。両作品は、3部作すべてが作品賞にノミネートされた数少ない3部作のうちの1本でもある。
▪️2025年ノミネート作品
- 『ブルータリスト』
過去の受賞作品
- 『ハート・ロッカー』(2008)
- 『80日間世界一周』 (1956)
- 『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』 (2003)
- 『グラディエーター』(2000)
- 『タイタニック』(1997)
- 『イングリッシュ・ペイシェント』 (1996)
- 『ブレイブハート』(1995)
- 『シンドラーのリスト』(1993)
- 『ダンス・ウィズ・ウルブス』(1990)
- 『愛と哀しみの果て』 (1985)
- 『ディア・ハンター』 (1978)
- 『ゴッドファーザー PART II』(1974)
- 『ゴッドファーザー』(1972)
- 『パットン大戦車軍団』(1970)
- 『アラビアのロレンス』(1962)
- 『ベン・ハー』 (1959)
- 『戦場にかける橋』 (1957)
- 『風と共に去りぬ』 (1939)
- 『カヴァルケード』 (1933)
- 『シマロン』(1931)
- 『西部戦線異状なし』 (1930)
【歴史ドラマ】
このジャンルはアカデミー賞での受賞作が少なく、伝記ドラマとも似通っており、特定の歴史的出来事をフィクションで描き、個人のみに焦点を当てるのではなく、時代背景全体を描くジャンル。最初のアカデミー賞作品賞受賞作は『戦艦バウンティの叛乱』(1935)で、1935年の興行収入で最高を記録した。
▪️2025年ノミネート作品
過去の受賞作品
- 『戦艦バウンティの叛乱』(1935)
- 『アルゴ』 (2012)
- 『炎のランナー』 (1981)
- 『人々のために』 (1966)
【ホラー】
今年度ノミネート作品『サブスタンス』以前のホラー映画で作品賞にノミネートされたのはわずか6作品しかない。1991年に『羊たちの沈黙』が唯一のホラー映画として作品賞を受賞し、5部門すべてを制した歴史的な映画となった。この偉業を達成した映画はその後現れていない。
▪️2025年ノミネート作品
- 『サブスタンス』
過去の受賞作品
- 『羊たちの沈黙』 (1991)
【ミュージカル】
最初のサウンド映画でアカデミー賞作品賞を受賞したのは1929年のミュージカル『ブロードウェイ・メロディ』でした。1959年には『ジジ』がノミネートされた9部門すべてで受賞し、映画が受賞した最多賞の記録を樹立。その2年後、『ウエスト・サイド物語』は11部門中10部門を制し、ミュージカル映画の最多受賞記録を打ち立てた。
▪️2025年ノミネート作品
- 『エミリア・ペレス』
- 『ウィキッド ふたりの魔女』
過去の受賞作品
- 『シカゴ』 (2002)
- 『オリバー!』 (1968)
- 『サウンド・オブ・ミュージック』 (1965)
- 『マイ・フェア・レディ』 (1964)
- 『ウエスト・サイド物語』 (1961)
- 『ジジ』 (1958)
- 『巴里のアメリカ人』 (1951)
- 『グオーイング・マイ・ウェイ』 (1944)
- 『グレート・ジーグフェルド』 (1936)
- 『ブロードウェイ・メロディ』(1929)
【スリラー】
アルフレッド・ヒッチコック監督の唯一のアカデミー賞作品賞受賞作は、アメリカ初のプロジェクトである『レベッカ』(1940)。2019年には、ポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』が、韓国映画として初めて作品賞を受賞し、また非英語映画として初の受賞作となった。
▪️2025年ノミネート作品
- 『教皇選挙』
過去の受賞作品
- 『パラサイト 半地下の家族』(2019)
- 『ノーカントリー』 (2007)
- 『ディパーテッド』 (2006)
- 『フレンチ・コネクション』 (1971)
- 『夜の熱気』 (1967)
- 『レベッカ』 (1940)
【SF】
スタンリー・キューブリックの『時計じかけのオレンジ』は、1971年に作品賞にノミネートされた最初のサイエンスフィクション映画であったが受賞はならず、サイエンスフィクション映画が初めて作品賞を受賞するのは46年後、2017年のギレルモ・デル・トロの『シェイプ・オブ・ウォーター』。
▪️2025年ノミネート作品
過去の受賞作品
- 『シェイプ・オブ・ウォーター』 (2017)
- 『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』 (2022)
この記事は米『ハリウッド・リポーター』誌の2月12日号に掲載。詳しくはこちら。
※本記事は抄訳・要約です。オリジナル記事はこちら。
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