ハリウッド映画の国際的影響力の衰退 — トランプ政権がもたらしたアメリカのソフトパワーの再定義

戦後の解放から冷戦時代の覇権に至るまで、アメリカのソフトパワーが映画スクリーンを通じて投影されたときほど強力であったことはない。ハリウッド映画は長年にわたり、リック・ブレインやジョン・マクレーン、ロッキー・バルボア、イーサン・ハント、キャプテン・アメリカといったアメリカのヒーローを描き、世界の自然な主人公、混乱に立ち向かう最初の対応者、独裁に対する最後の防衛線として位置付けてきた。
しかし、トランプ政権が同盟国を軽視し、法の支配を揺るがし、独裁者と親密な関係を築く中で、「パクス・アメリカーナ」の終焉が近づいている。ハリウッドは、これまで経験したことのない問いに直面している。アメリカのヒーロー像は今でも世界中で魅力を持ち続けるのか、それとも現実味を失っているのか。
■トランプ政権の外交姿勢とアメリカのソフトパワーの衰退
UCLA法学および国際関係学教授のカル・ラウスティアラ氏は、「トランプ政権は『ショック・アンド・オー(衝撃と畏怖)』作戦を同盟国に対して開始した。多くの人々がアメリカに対する見方を変えたのは事実であり、その見方は正当である」と指摘する。
特にヨーロッパでは、アメリカに対する好感度が過去最低水準に落ち込んでいる。ドイツでは52%から32%に急落し、デンマークではトランプ政権がグリーンランドを武力行使を排除しないと脅した影響で20%にまで低下している。
■ハリウッド映画の国際市場での苦戦
ハリウッド映画はアメリカのソフトパワーの象徴であったが、その影響力が衰えている。2025年2月に公開された『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』は、世界興行収入が4億1,500万ドルに達したものの、海外市場の割合は51.7%と低調であった。過去作の平均60.7%と比較して、減少が顕著である。
カナダの配給会社Elevation Picturesの共同社長ノア・シーガル氏は、「今、アメリカの英雄的な戦争映画が国際市場で受け入れられることはないだろう」と語る。トランプ政権下でのアメリカ像が変わったことで、ハリウッド映画の国際市場における受容が難しくなっている。
■ハリウッド映画のヒーロー像の再定義
ハリウッドはこれまで、民主主義や自由を描きつつ、アメリカ型資本主義の繁栄を示してきた。しかし、トランプ政権の影響で、従来のヒーロー像が国際社会での説得力を失いつつある。さらに、スタジオが政治的テーマを避ける傾向が強まり、アメリカ文化を強調する作品が減少している。
USCアネンバーグ・スクールのニコラス・カール教授は、「ハリウッドは常に民主主義や法の支配を象徴する存在であった。しかし、その価値観が揺らぐ中で、国際市場での魅力が低下している」と分析する。
■ハリウッド映画の影響力低下と各国映画産業の台頭
ハリウッドが政治的テーマを避けている中で、カナダや欧州の映画業界が台頭しつつある。特にカナダでは、トランプ政権の影響で愛国的な映画が増加している。フランスの大手映画会社ゴーモンのサビーネ・デ・マルト氏は、「かつて西ヨーロッパが共感していた『偉大なアメリカン・ドリーム』という物語が、今では疑問視されている」と語る。
ハリウッド映画を通じたアメリカのソフトパワーは、トランプ政権の外交姿勢によって大きく揺らいでいる。これまでアメリカ映画が担ってきたヒーロー像が変わりつつある中、国際社会におけるハリウッド映画の影響力が再定義されている。今後、他国の映画産業がハリウッドの弱点を突き、新たな国際映画市場の構築を目指す動きが加速するであろう。
※この記事は要約・抄訳です。オリジナル記事はこちら。
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