ハリウッド分断?トランプの「外国映画関税」提案が浮き彫りにする格差問題

ドナルド・トランプ米大統領が、外国製映画に関税をかけるという一見突飛な提案を行った。このアイデアは実現性が不透明で、コスト面も未確定だが、ハリウッドには意外な波紋を呼んでいる。反発が広がる一方で、一部の業界関係者からは賛同の声も上がっている。
ハリウッド内で賛否が分かれる背景
IATSE(舞台裏スタッフの労働組合)のメンバーで、Crew Storiesを運営するディエゴ・マリスカルは、次のように語っている。
「これほどの分断は初めてです。私が話している人たちは、『少なくともトランプは何かをしている』と評価しているんです。議論が活性化しているのは確かです」
このトランプの提案は、政治的対立だけでなく、ハリウッド内の階級格差をも浮き彫りにしている。経営層は「非現実的」「ビジネスに悪影響」と否定的だが、現場スタッフの一部には「アメリカのクルーを守るための施策だ」と評価する声もある。
支持を示す労働組合も登場
Teamsters(労働組合)のショーン・オブライエン総代表とハリウッド支部リーダーのリンジー・ドハティは次のように述べている。
「巨大企業は、コスト削減のためにアメリカのクルーを切り捨て、海外の税制優遇を利用して利益を上げている。その間、現場スタッフは不利益を被ってきました。トランプ大統領の姿勢には感謝しています」
SAG-AFTRA(米俳優労組)も、意外なことに前向きな姿勢を見せている。事務局長ダンカン・クラブツリー・アイルランドは、「提案を歓迎し、共通の目標を達成するために対話を進めたい」と述べた。
ハリウッドの危機と海外への流出
ロサンゼルスでのロケ撮影は減少傾向にあり、2025年第一四半期は前年同期比で 22%減少。さらに、カリフォルニア州全体の映画・テレビ業界の雇用は、2022年から 約20%減少している。
その一方で、ロンドンやカナダなど海外の制作拠点は活況を呈している。マーベル、『スター・ウォーズ』、『ミッション:インポッシブル』などの大作も次々と海外で撮影される状況が続いている。
対立軸は「政治」から「階級」へ
今回の提案をきっかけに、ハリウッドの対立軸は「政治」から「階級」へと変化しつつある。
ハリウッドの経営陣の多くはアイビーリーグ(全米名門8大学)出身のエリート層。一方、現場スタッフは労働者階級であり、生活感覚にも大きな隔たりがある。
政策の具体的な枠組みは未定であり、法制化の可能性も不透明だ。しかし、トランプは労働者階級の不満を政治的武器として利用している。ハリウッドの分断がより顕著になっていく中、トランプの「外国製映画への関税」提案は、文化的リトマス試験紙としての役割を果たしつつある。
※この記事は要約・抄訳です。オリジナル記事はこちら。
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