北野武監督、6年ぶり新作「首」が完成「世界的に当たるからひともうけできる」

北野武監督の「首」(今秋公開予定)の完成報告会見が4月15日、都内のホテルで行われた。

 6年ぶりの新作映画で、19年に発売された自身の同名小説が原作。織田信長の跡目をめぐり各地の武将たちがさまざまな策謀を繰り広げる戦国絵巻だ。北野監督(ビートたけし)が羽柴秀吉役で主演し、明智光秀役の西島秀俊、信長役の加瀬亮、黒田官兵衛役の浅野忠信、侍大将を夢見る元百姓の茂助役の中村獅童、羽柴秀長役の大森南朋が出席した。

 北野監督は、93年「ソナチネ」の頃から構想を抱いていたそうだが、「構想30年って言うけれど、3週間くらいだろう」と照れ気味にあいさつ。「NHKの大河ドラマはよく見るが、すごくきれいで人間の業、欲、裏切りが描かれていないので自分としては面白くない。自分が撮ればこうなる」というのが発想の起点だった。

撮影は2021年4~9月に都内のスタジオや京都、山形などでのロケで行われた。契約のトラブルで一時は編集がストップした時期もあったが、完成にこぎつけ「今回はだいぶ苦労したが、素晴らしい役者、スタッフのおかげ」と安堵の笑みを浮かべた。

合戦シーンなどでは得意のバイオレンス描写を遺憾なく発揮し、加瀬が「残酷なシーンでも、監督が描くと品のいい映像に収まっている。ほかの監督と明らかに違う」と最敬礼。これに対しては、「それは私と三池(崇史)監督の違いです。私は教養があって家柄がいいんだと思います」とおどけながら応じた。

 また、武将同士が恋愛感情を抱き体を重ねる描写もあるが、「命を懸ける関係なんだから、生と死をバックボーンにした男同士の絡みを描かないのはおかしい」と強調。そして、「庶民を平気で殺すところも描かれていない、マヌケな歴史本みたいな作品が多い。本能寺の変だけでも80くらいの説があって、正しいかは分からないがこういう見方もあるという一つの方法」と持論を展開した。

 西島は02年「Dolls(ドールズ)」以来の北野作品で、「成長した姿を見せようとは絶対に考えないよう、無欲で監督の頭の中にある作品を表せるよう全力を尽くした。幸せな毎日でした」と満足げ。北野組初参加となった獅童は、「夢のような現場でした。沼に沈められるシーンでも、監督が笑ってくださる幸福感があった。監督によって、新しい中村獅童を引き出してもらった」と声を弾ませた。

 同作は、5月16日に開幕する第76回カンヌ映画祭のカンヌ・プレミア部門でのワールドプレミアが決まり、北野監督は「コンペの枠に収まらない強烈な映画ということらしいので、世界的に当たるだろうからひともうけできるな」と皮算用。製作のKADOKAWA夏野剛社長も、「製作費15億円を1社で出した。世界に向けて自信を持って送り出すことができる」とぶち上げた。

取材/記事:The Hollywood Reporter 特派員 鈴木 元

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