デニーロに才能を見抜かれ、スコセッシに愛されたディカプリオの俳優人生

マーティン・スコセッシ、レオナルド・ディカプリオ 写真: ©KEVIN WINTER/GETTY IMAGES FOR CINEMACON
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はじめまして、堀田明子(アキ)です。この度、ザ・ハリウッドリポーター・ジャパンでコラムを書かせていただくことになりました。よろしくお願いします。幼い頃から映画が大好きです。祖母の実家が3つの映画館を経営していた影響もあり、家族の映画好きが遺伝したようです。年間約200本を鑑賞し、海外の映画ロケ地は100カ所以上を巡りました。アメリカに行くたびに、『ザ・ハリウッドリポーター』の雑誌を買うのが楽しみだった私にとって、こちらでコラムを書かせて頂けることは大変光栄です。第1回目は、私も大好きなレオナルド・ディカプリオについて深堀りしていきます。

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レオナルド・ディカプリオを初めて知ったのは『ロミオ+ジュリエット』(1996)でした。それはもう恐ろしいくらいにキラキラしていて「こういう人がスターなんだ!」と衝撃を受けたほどの出来事で、何を隠そう私が初めてファンになったハリウッド俳優はディカプリオなのです。

そこからますます映画好きになったのは言うまでもなく、ディカプリオの出演作品はすべて鑑賞しました。『タイタニック』(1997)では王子様的美しさの絶頂期で、少年の面影が絶妙に残る23歳のディカプリオはなんとも魅力的。今年2月に期間限定で劇場上映されたときも、あの美しさをどうしても巨大スクリーンで堪能したくて映画館まで足を運びました。

ディカプリオを語る上で、アカデミー賞助演男優賞に初ノミネートされた『ギルバート・グレイプ』(1993)があげられますが、個人的には同年に公開された『ボーイズ・ライフ』がディカプリオの俳優人生を運命づける作品だと感じています。

同作では、幼い頃から憧れていたロバート・デ・ニーロと初共演。デ・ニーロはまだ無名だった19歳のディカプリオの才能に驚き「すごい新人がいるから、一緒に仕事したほうがいい」とマーティン・スコセッシ監督に熱く語ります。その後20年以上にわたりディカプリオとスコセッシは何度もタッグを組むのですが、きっかけがデ・ニーロの推薦だったことはあまり知られていません。

ロバート・デ・ニーロ 写真: ©DIMITRIOS KAMBOURIS/GETTY IMAGES

デ・ニーロも絶賛したディカプリオですが、少年を演じさせたら右に出るものはいないほど思春期10代の独特なやるせなさ、痛み、心の叫びを瞬発的に表現してしまうセンスの良さを感じさせます。生まれながらの俳優であると同時に、ディカプリオの生い立ちそのものが演技の凄みに繋がっているように感じるのです。

両親が離婚し、ロサンゼルスの治安の悪い地域に住み、高校に行けばボコボコに殴られる。この境遇から一刻も早く抜け出したい一心で俳優になろうと決意。自分ではどうにもできない理不尽さや怒りを役に落とし込み、観る側にリアルなのか演技なのかを混乱させてしまう生々しい演技はただ者ではありません。

なぜ私が強烈にディカプリオに惹かれるのかを考えると、やはり内に秘めた感情を自由に表現してしまうこの奔放さがまぶしく感じるのかもしれません。

自分が思春期に抱えていた葛藤や痛みは、周りの目や恥ずかしさから、すべて心に閉じ込めて生きてきましたが、ディカプリオの演技を見ると代わりに封じ込めてきた感情を解放してくれているようで、心の琴線に痛いほど触れるのです。

『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』写真: ©MELINDA SUE GORDON

ディカプリオとデ・ニーロが出会った『ボーイズ・ライフ』から今年でちょうど30年。10月20日に公開された『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』では、スコセッシ、ディカプリオ、デ・ニーロの3人が初めて集結しました。

この30年の間に、ディカプリオはアイドル俳優を卒業し実力派俳優にまで成長。そして最新作『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』では二枚目とはかけ離れた汚れ役を見事に演じました。ディカプリオは当初、FBI捜査官のトム・ホワイト役でオファーが来ていましたが、自ら“冴えない男”アーネスト役を希望します。20代では“完璧な美”とまで言われたディカプリオですが、そこにいつまでも固執せず、演技派でいたいという強い意思を感じるエピソードです。

デ・ニーロとスコセッシとの出会いを生かし、彼の俳優人生でも最大級の怪演をやってのける覚悟は清々しいほど。『ロミオ+ジュリエット』のときには想像もつかなかった姿ですが、進化し続けるディカプリオには心からの尊敬の念まで湧いてきます。

30年越しの3人の絆も『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』をきっかけに新しい境地へと移行していくはずで、また集結することはあるのか、そしてディカプリオは次にどんな演技を見せてくれるのか、今から楽しみでしかたありません。

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