韓国ドラマ『ナインパズル』続編の可能性は?ディズニープラスで記録的ヒット、ユン・ジョンビン監督が語る制作秘話【インタビュー】

キム・ダミ、ソン・ソック、ドラマ『ナインパズル』より 写真:Courtesy of Disney
キム・ダミ、ソン・ソック、ドラマ『ナインパズル』より 写真:Courtesy of Disney
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現在、ディズニープラス「スター」で独占配信中のオリジナル韓国ドラマ『ナインパズル』。今年、アジア太平洋地域で最も視聴された作品となり、世界的にも韓国オリジナル作品として最大のヒットを収めている。

『ナインパズル』は、10年前に発生した未解決殺人事件の目撃者であるユン・イナ(演:キム・ダミ)が主人公の心理サスペンス。現在のイナは、ソウル警察庁科学捜査課犯罪分析チームに配属され、かつて自分を疑った刑事キム・ハンセム(演:ソン・ソック)とコンビを組むことになる。新たに発生した連続殺人事件には、手描きのパズルピースという共通点があり、2人は過去の事件とつながる真犯人を追うことになる。

監督を務めたのは、映画『悪いやつら』(’12)、『群盗』(’14)、そして『工作 黒金星と呼ばれた男』(’18)など、リアルで緊張感のある政治劇に定評のあるユン・ジョンビン。『ナインパズル』で挑戦的なドラマ作品に取り組んだユン監督が、米『ハリウッド・リポーター』に対し、本作の制作過程や演出意図、そして続編の可能性について明かした。

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――――――『ナインパズル』の企画のどの部分に惹かれ、どのようにアプローチしたいと考えましたか?

最初に脚本を読んだとき、とても引き込まれました。読みやすくて、すぐに物語の世界に没頭し、「この先どうなるんだろう?」と先が気になって仕方がありませんでした。ミステリー・スリラーというジャンルは、小説でも映画でもドラマでも、最終的にもっとも重要なのは「納得できるかどうか」という点です。ミステリーとして筋が通っているかどうかが、鍵になります。

その点、この作品の脚本は非常に説得力がありました。複雑な展開が次々と起こるにもかかわらず、すべてが理にかなっていて、本当に素晴らしい物語でした。なので、何よりもまず、そこに惹かれてこの企画に興味を持ちました。

次に、「自分がこれをどう演出するか」を考え始めたとき、最初に頭に浮かんだのは、「確かに筋は通っているけれど、これは現代の現実社会でも本当に起こり得る話なのか?登場人物たちは実際にいそうな人々なのか?」ということでした。そう考えたとき、この作品の世界観は、現実と、ほんの少しだけデフォルメされた漫画的な要素のあいだを行き来するようなものにするべきだと感じました。ですので、美術やキャラクター設定においても、そのような世界観にふさわしいトーンへと引き上げるように意識しました。

――――――本作は、トーンがダークなノワール調になる場面もあれば、風変わりでユーモラスな雰囲気になる場面もあります。このバランスを成立させるために、どのような工夫をされたのでしょうか?

私は「ミステリー小説」ではなく、「ミステリー・カートゥーン」(謎解きアニメ)というコンセプトに焦点を当てました。ミステリー小説は一般的に現実に即していて、重苦しかったりノワール的なトーンになりがちです。それに対して、「ミステリー・カートゥーン」という考え方をすると、もっと軽やかでユーモアのあるトーンが自然に感じられます。物語の中には重いテーマや連続殺人犯といった要素も含まれていますが、それでも私が目ざしたのは後者のトーンでした。

――――――キム・ダミさんが演じるユン・イナは、韓国のスリラーとしてはかなり異色な探偵ヒロインですね。明るいけれど感情をあまり見せず、子どもっぽさや衝動的な一面もあり、どこか風変わりです。

もともとの脚本に書かれていたイナのキャラクターは、もっと典型的でプロの探偵に近いものでした。率直で強くてタフ、というタイプです。それでも十分に魅力的だったのですが、私は彼女にもう少し子どもっぽさを加えたいと思いました。10年前のトラウマ的な出来事の時点で精神的に時間が止まってしまっていて、その後あまり成長できていないような人物像にしたかったのです。それが、新鮮でユニークなアプローチになると考えました。

ただ、それはある意味でリスクでもあったんです。ミステリー好きの視聴者は、一般的にもっとカリスマ性がある探偵像に慣れています。そういったキャラクターであれば、受け入れられやすく、ファンにも最初から好意的に見てもらえたかもしれません。でも私はどうしても、この作品ならではの個性を出したかったのです。

そこでキム・ダミさんと一緒に試行錯誤を重ねながら、彼女の演技を意図的に少し現実離れしたトーンに仕上げていきました。その方向性を衣装やメイクにも反映させて、まるでアニメのキャラクターが現実に紛れ込んでいるような雰囲気を目ざしました。また、警察官というよりは、私立探偵のような雰囲気に近づけるようにも工夫しました。

ユン・ジョンビン監督、ドラマ『ナインパズル』撮影現場にて 写真:The Hollywood Reporter
ユン・ジョンビン監督、ドラマ『ナインパズル』撮影現場にて 写真:The Hollywood Reporter

――――――韓国における本作のキャラクターの受け入れられ方について、どのような印象を持っていますか?ファンのなかには、ユン・イナに対して最初は抵抗を感じた人もいたようですが、物語が進むにつれて彼女の魅力に惹かれていったという声も聞きました。一方で、ソン・ソックさん演じるキム・ハンセム刑事の風変わりな魅力は好評だったようです。

(笑)まさにおっしゃる通りです。視聴者がユン・イナにどう反応するかによって、このドラマを好きになれるかどうかが決まると思っています。実際、彼女のキャラクターは韓国ではとても異質で、最初は「ちょっと変だな」と思われることが多かったようです。でも、おっしゃるようにそこを乗り越えると、どんどん好きになっていくキャラクターなんです。そうした反応が、全体として多かったと感じています。

ハンセムに関しては、イナが持っている少し漫画的なトーンに彼も合わせる必要があると考えました。そこで、彼のトレードマークとしてニット帽や首のタトゥーなどを加えることにしたのです。実際の韓国の警察官があんなカジュアルな帽子を被ったり、首にタトゥーを入れていたりすることはまずありません。ですから、そういった要素はイナの世界観にマッチさせるために、あえて現実から少し離れた“味付け”を加えたものでした。最初は彼のスタイルも奇妙に映ったかもしれませんが、それが魅力の一部として定着していったのだと思います。

――――――タイトルが示す通り、本作は巧妙なミスリードに加え、パズルの中にさらにパズルが仕掛けられていて、視聴者を常に翻弄し続けます。どのように複雑なプロットを構築していったのでしょうか?

何よりもまず、私が最初に脚本を読んだときに感じた印象を、そのまま視聴者に伝えることが重要だと考えました。なので、常に「視聴者の立場だったらどう感じるか」という視点で物語を組み立てるようにしました。実は私は、かなりだまされやすいタイプの視聴者なんです。映画を観たり小説を読んだりすると、作者が「こう思わせたい」と意図した通りに受け取ってしまうタイプで、「ああ、この人が犯人か!……えっ、違う?じゃあ一体誰!?(笑)」という反応を毎回してしまいます。

ですので、各エピソードを演出する際も、「この人物が犯人だ」と自分自身が納得できるように構成し、そのあとで脚本にしたがって、次の怪しい人物に視点を移していく――そうやって、ミステリーの輪をどんどん回していくように心がけました。自分がだまされやすい視聴者であること、そして常に観る側の気持ちになって考えることが、本作を監督する上での一番の鍵になったと思います。

――――――音楽を担当されたチョ・ヨンウクさんとは、これまでに何度もタッグを組まれています。音楽面でのコラボレーションについて、お話をお聞かせください。

チョ・ヨンウクさんとは2012年の『悪いやつら』の頃からずっと一緒に仕事をしていて、毎回ご一緒したいと思っている作曲家です。『ナインパズル』の音楽については、いくつかの重要な要素に焦点を当てました。まず、ユン・イナという型破りなキャラクターの内面をより伝えるために、彼女専用の明確なテーマ曲を作りたいと考えました。また、劇中で起こるそれぞれの重要な事件に対応するテーマ曲も必要だと思っていました。

さらに、イナがプロファイリングを始めて、さまざまな推理をめぐらせていく場面には、専用のテーマ曲も用意しました。鍵となるテーマ曲を設けることで、視聴者が複雑なストーリーをより受け止めやすくなり、各エピソードの核がどこにあるのかが理解しやすくなると考えたのです。

もうひとつの重要な工夫として、オープニングタイトルの音楽は物語の終盤近くになって初めて登場します。そのときになって初めて、それが「誰のテーマ曲だったのか」が明かされるのです。視聴者にとっては、ずっと聞き慣れていた音楽の意味が、後になって明かされる――そんな構造を意図していました。

――――――本作の制作は、あなたが普段手がけている映画と比べて、どのような違いがありましたか?

私は普段から映画を中心に制作しているので、今回の作品でも基本的には同じアプローチを取りました。特別に何かを変えたわけではありません。いつも通り、まずは全体のストーリーボードを細かく作成するところから始めました。本作は全11エピソードあるため、この作業量だけでも通常の映画の約5倍になりました。

本来、映画であればもっと準備作業に時間をかけるのですが、今回はすべてを行うのは現実的に難しかったですね。それでも、映画と同規模の作品だと仮定した場合、80〜90%くらいの準備はできたと思います。とはいえ、やはりかなりハードでした。ストーリーボードの作成だけでも、完成までに約6か月かかりました。

――――――ネタバレは避けますが、シーズン1のラストは、主人公たちが次の事件に取りかかる準備ができたような終わり方でした。シーズン2の可能性は?

それについては、ディズニープラスやカカオエンターテインメントがお答えになることだと思います。現時点では、続編に関する具体的な話は聞いていません。実現するには、いろいろな条件がそろう必要があります。脚本のイ・ウンミさんや、キャストの皆さんが再び参加してくださるかどうかも大きな要素です。

それに、私はいま、新作映画の準備を進めているところです。まだ韓国でも詳細は公表していないのですが、実は10年前から構想を温めてきた作品で、ようやく具体的な準備段階に入ったところです。来年の春には撮影に入れるように、現在調整を進めています。

――――――関係者が全員そろって、タイミングも合えば、続編に参加したいお気持ちはありますか?

もちろんです。参加しない理由はないでしょう。仲間はずれにはなりたくありませんからね。

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オリジナル韓国ドラマ『ナインパズル』は、ディズニープラス「スター」にて独占配信中。

※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。編集/和田 萌

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