もしウィル・スミスがネオだったら?──『マトリックス』『インセプション』主演候補の裏事情

映画『インセプション』(2010年)の主演に、当初ウィル・スミスが検討されていたことをご存じだろうか。現在ではレオナルド・ディカプリオの代表作の1つとして知られる同作だが、クリストファー・ノーラン監督が脚本を初めて持ち込んだのはウィル・スミスのもとだったという。
この事実をスミス本人が英ラジオ局「KISS XTRA」のインタビューで明かした。「これまで公には言ったことがないけれど、今だからこそ言うよ」と笑いを交えながら話し始めたスミスは、「ノーランが最初に『インセプション』を持ってきてくれた。でも、正直に言うと、あのプロットがよくわからなかった」と語った。
スミスによれば、「夢や別の現実を扱う映画は、企画段階では説明が難しい」と感じていたという。「そういう話って、 ピッチ(企画説明)がうまくいかないんだよ。断ったことを今でも少し悔やんでいる。心が痛む出来事だ」と、複雑な胸の内を吐露した。
スミスはこれまでにも名作映画を断った経験がある。たとえば1999年の『マトリックス』もその1つ。当時は兄弟だったウォシャウスキー姉妹がまだ無名だった時代、スミスは企画の意図がよく理解できなかったとしてオファーを断り、代わりに『ワイルド・ワイルド・ウエスト』に出演した。
一方、『インセプション』のオファーについても、断ったのはスミスだけではなかった。
米『ハリウッド・リポーター』によると、ノーランはまず脚本をブラッド・ピットに持ち込んだが、「48時間以内に返答してほしい」という条件付きだったため、ピットは最終的に参加を見送った。その後、ウィル・スミスに主演の話が持ち込まれたものの、最終的にディカプリオが主演を務めることとなった。
ハリウッドの関係者によれば、「トップスターは普通、じっくり検討してから出演を決めるもの。オファーから即決を求められることはまれであり、スケジュールが埋まっている中で即断するのはリスクが高い」とのこと。ノーランの“スピード重視”のキャスティング戦略が、出演辞退の一因とも言える。
しかし、『インセプション』は最終的に世界興行収入8億ドル超えの大ヒットを記録し、現在ではSF映画の金字塔として語り継がれている。ノーラン監督はこの成功を経て、現在では脚本を見せずともハリウッドの一流俳優を集められるほどの信頼を得ている。
スミスは『マトリックス』についても、数年前に自身のYouTubeチャンネルで「断ったのは間違いだったかもしれない」と率直に語っている。動画の中ではウォシャウスキー姉妹がアクションの説明に終始し、ストーリーやキャラクターの詳細を語らなかったことを面白おかしく再現。「あの説明は混乱の極みだったよ。“ジャンプ中にカメラ50台でスローモーション撮る”とか言われても、まったく内容がつかめなかった」と振り返っている。
「結果的に、僕がネオ役を演じていたら、おそらくローレンス・フィッシュバーンの演じたモーフィアス役は黒人じゃなかったかもしれない。制作陣は当初、ヴァル・キルマーをモーフィアス役として考えていたそうだから」とも述べており、「僕が断ったことで、あの完璧なキャスティングが実現したんだ。ある意味、みんなのためになったと思うよ」と自虐まじりに語った。
名作には時として、隠れたドラマがある。ウィル・スミスが主演を務めていたら、果たして『インセプション』や『マトリックス』は今と同じ評価を得られていただろうか。そんな想像もまた、映画ファンの楽しみの1つである。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。
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