堤真一、沖縄戦の史実を基にした『木の上の軍隊』は「死が美徳ではなく生きて前に進む話」
沖縄・伊江島で、終戦を知らずにガジュマルの木の上で2年間過ごした2人の日本兵の史実を基にした映画『木の上の軍隊』の完成披露上映会が23日、東京・新宿ピカデリーで行われ、主演の堤真一と山田裕貴、平一紘監督が出席した。
劇作家の井上ひさし氏が遺した原案となる2行のメモを劇作家の蓬莱竜太氏が脚本化し、栗山民也氏の演出で2013年に初演した舞台が原作。沖縄を拠点に活動する平監督は、オファーを受け「沖縄戦とちゃんと向き合ったり勉強したことがなかったので、大きなプレッシャーだったが、舞台の映像を見て戦争映画ではなく二人の人間ドラマ、エンタメとしてなら素敵なものが撮れるかなと思った」と振り返った。
堤も「沖縄戦がひどかったということは聞いていたが、恥ずかしい話、伊江島の存在すら知らなかった」と告白。その上で「舞台の脚本を読んで難しいぞと思ったけれど、見事に映画の脚本になっていたので、これはやるべきと思って引き受けた。今もやって良かったと思っている。死が美徳ではなく生きて前に進むんだという話が、全国に広がってほしい」と期待した。
山田は「この仕事は、歴史をいっぱい伝えられることに重要な意味があると感じながらこの作品に携わった。2人が生き抜いたのは物凄いことなんです」と力説。「戦争のことは日常では忘れがちだけれど、これは戦争映画というより、家があってご飯が食べられて水が飲めることがどれだけありがたいことかという、2人が生きていく力をたくさんの人に渡したい」と熱望した。
撮影もオール沖縄ロケで、伊江島にガジュマルを植樹して根付かせるなど入念な準備が行われた。堤は、「木に登って見る景色が素敵で、唯一安全な場所として守られているんだという感覚になった」と振り返った。
この日はくしくも沖縄での戦没者を追悼する「慰霊の日」。沖縄では今月13日に先行公開され、観客動員が順調に推移しているが、平監督は「ウソのない本当の物語を、つらい、悲しい、苦しいイメージではなく面白い映画として届けたかった。この日の東京からの発信で、全国に広げていきたい」と意欲を新たにしていた。
『木の上の軍隊』は、7月25日に全国公開される。
取材/記事:The Hollywood Reporter 特派員 鈴木元
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