日本にルーツを持つ全米で話題のコメディアン アツコ・オカツカに単独インタビュー! 「変わり者たちへ贈る」 コメディー特番『アツコ・オカツカ:ファーザー』を日本の人に見てほしい理由とは

日本にルーツを持つ、アメリカで活躍中のスタンドアップコメディアンであるアツコ・オカツカの、オリジナル・コメディースペシャル『アツコ・オカツカ:ファーザー』が、6月13日(金)よりディズニープラスのスターにて配信開始となり、アツコ・オカツカがオンラインで『ザ・ハリウッドリポーター・ジャパン』(THRJ)の単独インタビューに応じてくれた。
【予告編】『アツコ・オカツカ:ファーザー』|予告編|米国で大注目!世界中で熱い人気を誇るスタンダップコメディアン<アツコ・オカツカ>のコメディスペシャル
アツコ・オカツカはロサンゼルスを拠点に活動するスタンダップコメディアン。台湾生まれ、日本育ち、のちに渡米というバックグラウンドを持つ。2022年のスタンダップスペシャル『THE INTRUDER(原題)』(監督:ティグ・ノタロ)で鮮烈なデビューを果たし、ニューヨーク・タイムズの「2022年最高のデビュー・スペシャル」に選出されるなど、一躍注目の存在に。
Variety誌の「注目すべきコメディアン10人」にも選ばれ、2024〜2025年にかけて行われたツアー「Full Grown(原題)」は200公演以上が完売。日本でも大反響を呼び、ゆりやんレトリィバァとの来日公演が話題に。また、エミー賞受賞作『History of the World: Part II(原題)』や『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』など映画・テレビでも幅広く活躍中。キアヌ・リーヴス主演作『Outcome(原題)』への出演も控えている。
世界中を笑いの渦に巻き込むアツコ・オカツカのオリジナル・コメディスペシャル『アツコ・オカツカ:ファーザー』が、現在ディズニープラスのスターで配信中。そんなアツコ・オカツカにハリウッドリポーター・ジャパンは単独インタビューを実施した。
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ーーー今日はお時間をいただきありがとうございます、アツコさん、あなたのショーをとても楽しみました。とてもおもしろく、とても温かい気持ちになりました。あなたのスタンダップ・コメディは世界の中でもすごくユニークな視点を持っていると思います。この独特なスタイルはどのように確立されたのでしょうか?
アツコ・オカツカ:そうですね、私にとって、自分の好きなコミュニケーションの仕方に正直でいることがすごく大切でした。最初からこれが自分のスタイルになるとは思っていませんでした。ただ、自分にとって一番正直に感じられるものを追いかけてきたんです。
現実の私はとても…幸せなことが大好きです(笑)。明るい色も好きです。悲しいできごとがあったとしても、自分自身や他の人たちの気持ちを少しでも楽にしてあげたい。人生で起こる悲しいことに対しても、そうやって元気づけたいんです。だから、あの“温かさ”や“視点”は、まず人々を人生の悲劇から癒やそうとするところから生まれたのだと思います。
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ーーーアツコさん、コメディアンになろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?尊敬している、あるいは今でもロールモデルにしているスタンダップコメディアンはいますか?
アツコ・オカツカ:ロールモデルはいろいろいます。でも、いつも挙げている人がいて、それがマーガレット・チョーです。彼女は初めてのアジア系アメリカ人の女性スタンダップコメディアンで、しかもすごく上手だったんです。最初に彼女のショーを見たとき、私がスタンダップをやるとは思ってもいませんでした。ただ、見るのが好きでした。彼女はとてもインスピレーションを与えてくれました。
でも、何かをやろうと思って実際にアーティストになるには、自信が必要です。それってすごく怖いことですよね。「どうやってやるんだろう?」「どうやって始めるの?」って。だから、信じることと練習に時間がかかりました。人前でパフォーマンスを重ねて、ようやく観客が見つけてくれて、「私たちはあなたのことを面白いと思ってるよ。ショーにも行くよ」って言ってくれるようになって、そこで初めて「コメディアンになれるかも」と思えるようになったんです。
マーガレット・チョー↓↓
ーーーでも、最初からアーティストとしてコメディアンになりたかったんですか?それが目標だったんですか?
アツコ・オカツカ:いえ、そんな自信はなかったです(笑)。子どもの頃は、大きな夢を持つのが怖かったんです。夢見てもそれが叶わなかったときに、自分を責めちゃうし、失敗した気持ちになるから。
だから、ただ…私は子どもの頃、アイスクリームショップで働きたかったんです。それだけ(笑)。そして17歳のとき、実際にアイスクリームショップで働いたんです。「あれ?もう夢、叶っちゃった?」って。それで、「もっと大きな夢を持たなきゃ」って思いました。
ーーーアツコさん、日本にルーツがあることは、あなたのコメディや自己表現にどのような影響を与えましたか?
アツコ・オカツカ:そうですね…私はとても身体を使ったコメディをします。目でたくさん表現したり、時には口で変な音を出したりします。実生活でもそんな感じでコミュニケーションを取ってるんです。私はアニメキャラクターが大好きなんです。それに日本で、身体を使ったコメディをたくさん見て育ちました。
日本人も、すごく身体を使ってコミュニケーションすると思うんです。まるでアニメみたいに。例えば、志村けんさんを見て育ちました。
ーーーすごいですね、それは素晴らしいです。
アツコ・オカツカ:そうですね。そして、アメリカのコメディアンだと、チャーリー・チャップリンやルシル・ボールとか。言葉がなくても理解できるような人たち。私も当時は英語を話せなかったので。だから日本から受けた影響は、「言葉だけじゃなくて体全体で表現すること」だったと思います。
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ーーーあなたの新しいスタンダップ・スペシャルは『ファーザー』というタイトルですね。なぜこのタイトルにしたのですか?あなたにとってどんな意味があるのでしょうか?
アツコ・オカツカ:このショーでは、実の父親と再びつながる話をしています。そして最後には「ダジャレ(dad joke)」を披露するんです(笑)。「ダジャレ」って、すごくベタで、お父さんが言いそうな、ちょっと寒いジョークのことです。それを最後にやるんです(笑)。
それに、ファンたちは私のことを「マザー(母)」って呼ぶんですよ。「マザー、マザー」って。ある種の象徴として見てくれているようなんです。でも、私は冗談でこう言います。「母っていうのは、すごく整理整頓されてて、尊敬されてて、いつも時間通りで、料理も上手で、子育ても完璧でしょ?私はそうじゃない(笑)。だから私、父っぽいの(笑)」
ーーーこの『アツコ・オカツカ:ファーザー』というショーを特にどんな人に観てほしいと思っていますか?そして観た人にどんなことを感じ取ってもらいたいですか?
アツコ・オカツカ:はい…これは、自分のファン、そして私の中にある何かを理解してくれている人たちのために作った作品です。いわゆる“変わり者”たちのために作ったんです。「私はちょっと変わってるかも…」「誰も私を理解してくれないかも」「完璧じゃない…」って感じてる人たちに向けて。このショーでは、「完璧じゃなくても笑っていいんだよ」ってことを伝えたいです。
あと、特に日本にも観てほしいです。前回のスペシャルは日本で配信されなかったので、今回は本当に、家族や新しい友人、そして日本の観客にも観てもらいたいです。
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ーーーこの『アツコ・オカツカ:ファーザー』では、あなたの夫・ライアンさんとの関係やご家族についても語られていますね。移民としてのアイデンティティは、このスペシャルにどのような影響を与えたと思いますか?
アツコ・オカツカ:そうですね…さっきも言いましたけど、「私はダメだな」「みんなと違う」と感じている人たちに観てほしいと思って作ったんです。移民として生きていると、時に「私は他の人と違う」「私は部外者」「ここにいていいのかな」って思ってしまう。そんな気持ちが、私のコメディの視点を形づくっていると思います。「洗濯してなかったの?知らなかった…」って感じで(笑)。でも、自分に優しくしてあげなきゃいけない。許してあげないと。
大人になるって大変なことだし、誰もそのやり方なんて教えてくれないんです。違っていてもいい。完璧じゃなくて大丈夫。移民としての経験が、そういう考え方をより強くしてくれたと思います。「自分をジャッジしないで」って伝えたいんです。いつでも、あなたと同じように感じている“家族”や“コミュニティ”が存在しているんです。
『アツコ・オカツカ:ファーザー』ディズニープラスのスターで配信中 © 2025 Ohayo Inc.
ーーーアツコさん、あなたはコメディを文化の違いや偏見を乗り越える、あるいは和らげるためのツールとして使っていきたいと語っていますが、それについても教えてください。
アツコ・オカツカ:自分自身のストーリーを語れば語るほど、人々は他人のことや他文化のことを理解できるようになると思っています。テレビや映画に出ている数人の代表だけで、その文化全体を判断してしまうのは簡単なこと。でも、それが全てじゃない。
たとえば、「日本人は礼儀正しい」というステレオタイプがありますよね。それは事実でもあるけど、恥ずかしがり屋じゃなかったり、大きな声で笑ったりする日本人がいてもいいんです。文化の中のすべての人が同じじゃない。だから、それぞれの文化にいる「自分らしい人たち」がストーリーを語るのはとても大切だと思います。
たとえば「全員が静かじゃない」「全員が勉強熱心じゃない」「アーティストになってもいい」ってことを知ってもらえる。それが文化を理解することにもつながっていく。そうすれば、みんなが“自分もちゃんと見てもらえてる”って感じられるようになるんです。
ーーーこのことについてショーでも話されていましたが、最近日本に行かれましたね。そのとき、何か印象的な出来事や逆カルチャーショック(文化的な違和感)はありましたか?
アツコ・オカツカ:最近日本に帰ったのは12月でした。1ヶ月くらい滞在しました。父と一緒にクリスマスを過ごすのは初めてだったので。そしてお正月も久しぶりで。
私と夫は、東京の「大山(おおやま)」というとてもローカルなエリアに滞在しました。一番近い大きな駅は池袋です。でも地元の人でも「どこ?」って言うくらい、すごくローカルな町でした。「え?そこって外国人行かないんじゃない?」って。
そういう場所に滞在したのは面白かったです。そして毎朝「お風呂(Ofuro)」に入っていました。最高でした。
でも実は、日本でのカルチャーショックというより、アメリカに帰ってきたときに感じるショックの方が大きいんです。「なんでアメリカは日本みたいじゃないの?」って思ってしまう(笑)。今でも毎日のようにあのお風呂のことを考えてます。スーパーに行って、新鮮なお魚をちょうどいい量で買いたい。でも、それができない。そういう意味での“ショック”がありましたね。日本を離れなければいけない、というところに。
ーーー面白いですね。このインタビューはハリウッド・リポーター・ジャパン向けなのですが、アツコさんから、あなたのショーを楽しみにしている日本の読者に向けて一言メッセージをお願いできますか?まだ観ていない人たちに向けて、何か伝えたいことがあればぜひ。
アツコ・オカツカ:はい、もちろん。このショーは、2年間、国際的にツアーをして作り上げたものです。愛を込めて作りました。私の大切なものについて話しています。人生はいつも簡単じゃない。実際は、簡単なときより大変なときのほうが多いかもしれません。でもこの1時間だけでも、皆さんに笑ってもらえて、「あなたは愛されている」「ちゃんと見てもらえている」と感じてもらえたら、私は本当に嬉しいです。楽しんでもらえることを心から願っています。
ーーーありがとうございました。
<作品情報>
『アツコ・オカツカ:ファーザー』
ディズニープラスのスターで6月13日(金)より独占配信開始
『アツコ・オカツカ:ファーザー』 ディズニープラスのスターで6月13日(金)より独占配信開始
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【アツコ・オカツカ プロフィール】
岡塚敦子/1988年台北生まれ。千葉県で育ち、10歳からLA在住。
15歳でスタンドアップを知り、19歳でコメディアンになることを決意。
NYタイムズの「2022年のベストコメディ」で、HBOの冠番組『The Intruder』がベストデビュー賞に選出された。
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