絶体絶命の恐怖!水深91メートル、酸素残り10分のサバイバルスリラー『ラスト・ブレス』レビュー

映画『ラスト・ブレス』9月26日(金)より新宿バルト9ほか全国ロードショー
『ラスト・ブレス』© LB 2023 Limited
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実際に起こった潜水事故からの脱出を描くサバイバルスリラー『ラスト・ブレス』が、9月26日(金)より公開された。

主人公の若き飽和潜水士は命綱を失い、水深91メートルの完全な暗闇に覆われた海底で、酸素供給も絶たれたまま、ひとり深海に取り残される。酸素残量がわずか10分という究極の悪夢を描く。

監督を務めたのは、2019年に同名ドキュメンタリー映画を制作したアレックス・パーキンソン。ウディ・ハレルソンシム・リウ、フィン・コールという冒険心あふれるキャスト陣とともに、圧倒的なスリルとリアリティ迫る映像を生み出した。

以前、「パニック映画やサイコスリラーの怖いシーンは目を伏せてしまう」という話をしていたら、「万が一そういう場面に遭遇したときに、どう対処したらいいかイメージできるからその視点で見てみたら?」と言われたことがある。

本作を観てそんなやりとりを思い出した。深海で酸素が残りわずかな状況に置かれたら自分はどうするだろう、極限の状況で少しでも冷静さを保つことはできるのだろうかなど、様々なことを考えさせられた。

“生存確率ゼロ”からの脱出を描いたサバイバルスリラー

水深91メートルの海底、酸素残量がわずか10分…実話に基づく究極の悪夢

潜水支援船のタロスが北海でガス・パイプラインの補修を行うため、スコットランドのアバディーン港から出港した。ところがベテランのダンカン(演:ウディ・ハレルソン)、プロ意識の高いデイヴ(演:シム・リウ)、若手のクリス(演:フィン・コール)という3人の飽和潜水士が、水深91メートルの海底で作業を行っている最中、タロス号のコンピューター・システムが異常をきたす非常事態が発生。制御不能となったタロス号が荒波に流されたことで、命綱が切れたクリスは深海に投げ出されてしまう。

『ラスト・ブレス』9 月 26 日(金)より新宿バルト9ほか全国ロードショー
『ラスト・ブレス』9月26日(金)より新宿バルト9 ほか全国ロードショー © LB 2023 Limited 配給会社:キノフィルムズ

クリスの潜水服に装備された緊急ボンベの酸素は、わずか10分しかもたない。海底の潜水ベルにとどまったダンカン、デイヴ、タロス号の乗組員はあらゆる手を尽くしてクリスの救助を試みるが、それはあまりにも絶望的な時間との闘いだった…。

“地球上で最も危険を伴う職業”の飽和潜水士

本作を通して、初めて飽和潜水士という職業があることを知った。飽和潜水とは、深海の水圧に耐え潜水しながら長時間作業が可能にする技術。本作の飽和潜水士たちは、世界中の海底に張り巡らされたパイプラインや通信ケーブルを守っている。

『ラスト・ブレス』9月26日(金)より新宿バルト9ほか全国ロードショー
『ラスト・ブレス』9月26日(金)より新宿バルト9ほか全国ロードショー © LB 2023 Limited 配給会社:キノフィルムズ

深海に潜水するだけではない。ものすごい水圧に耐えるため、狭くて閉ざされた高圧環境の加圧室で体を慣らす時間も必要だ。

加圧室や深海での作業、そして潜水船が制御不能になり警告音が鳴り響く現場など、次々に迫る逃げられない密閉された状況に、“息もできない”閉所の緊迫感が襲う。

それと同時に、通信ケーブルを守るために過酷な環境で職務をまっとうする姿に尊敬の念が募ってくる。

まるでドキュメンタリー映画のような、リアルな没入感と閉所恐怖症的なスリル

『ラスト・ブレス』メイキングスチール © LB 2023 Limited
『ラスト・ブレス』メイキングスチール © LB 2023 Limited

実際に事故が起こった船で撮影をし、同名ドキュメンタリー映画を手がけたアレックス・パーキンソン監督が、飽和潜水の作業手順や教材など細部にわたり徹底的に追求した。過度な誇張もなく再現度を高めているため、実際の映像を観ているような没入感とスリルを生み出していく。

『ラスト・ブレス』メイキングスチール © LB 2023 Limited
『ラスト・ブレス』メイキングスチール © LB 2023 Limited

キャスト陣の鬼気迫る熱演も、生々しい緊迫感と恐怖を引き起こす。シム・リウとフィン・コールは、ダイビングの特訓を行い、1週間にわたり潜水士から機材の使い方を学んだ。「スキューバ・ダイビングと飽和潜水はまったくの別物だね。水に入った瞬間から命がけの環境だ」とリウは語る。

実物とまったく同じ機能を備えたヘルメットと潜水服を身に着けたリウとコール。彼らの息遣いから、命がけの環境で役を体現し“生きる”という覚悟が伝わってきて、思わず固唾を飲んで見守ってしまう。

自分ならどうする?究極の悪夢の中で浮かび上がる希望と人生観

『ラスト・ブレス』9月26日(金)より新宿バルト9ほか全国ロードショー
『ラスト・ブレス』9月26日(金)より新宿バルト9ほか全国ロードショー © LB 2023 Limited 配給会社:キノフィルムズ

深海にひとり取り残されたクリスと、あらゆる手段で仲間の救助を試みるダンカンとデイヴたち。それぞれの立場が交差する熱い人間ドラマも見逃せない。

死がすぐ目の前にある状況で、「生きる」と決断し仲間の救助に向かう姿を目の当たりにし、何度も涙と感動が込み上げてくる。

究極の悪夢のなかで、生への渇望やそれぞれの人生観が浮かび上がり、人間の持つ無限の可能性や希望を感じずにはいられない。

【作品情報】

『ラスト・ブレス』
『ラスト・ブレス』9月26日(金)より新宿バルト9ほか全国ロードショー © LB 2023 Limited 配給会社:キノフィルムズ

〈キャスト・スタッフ〉

出演:ウディ・ハレルソン、シム・リウ、フィン・コール、クリフ・カーティス
監督:アレックス・パーキンソン 
原作:ドキュメンタリー『ラスト・ブレス』(メットフィルム)
脚本:ミッチェル・ラフォーチュン、アレックス・パーキンソン&デヴィッド・ブルックス
2025年|米・英|英語|93分|カラー|5.1ch|シネマスコープ|原題:Last Breath|字幕翻訳:大西公子|映倫区分:G©LB 2023 Limited 提供:木下グループ 配給:キノフィルムズ
公式サイト:lastbreath.jp

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