笠松将が語る『奥のほそ道』の裏側――U-NEXT独占配信ドラマで描く「戦争と人間の尊厳」
海外ドラマ『奥のほそ道 -ある日本軍捕虜の記憶-』(原題:The Narrow Road to the Deep North)が、10月10日よりU-NEXTで全5話独占見放題配信される。
本作は、ブッカー賞を受賞した原作を豪華な国際チームによって映像化したものである。
太平洋戦争下、日本軍の捕虜となったオーストラリア人軍医ドリゴ・エヴァンスの半生を、戦前、戦中、戦後という3つの時代にわたって描き、戦争の極限下における人間の尊厳、記憶、そして愛と赦しを深く問う重厚なヒューマンドラマである。
若き日のドリゴをドラマシリーズ『ユーフォリア/EUPHORIA』、映画『プリシラ』(2023)などで知られるジェイコブ・エローディが、晩年のドリゴを『ベルファスト』(2021)『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』(2011)で知られるキアラン・ハインズが演じる。
日本人キャストとして、WOWOWオリジナルドラマ『TOKYO VICE』ディズニープラスで配信中の『ガンニバル』などで注目を集める俳優・笠松将が、ナカムラ少佐という難役と真摯に向き合い、現場での葛藤や撮影秘話を語った。
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笠松将が葛藤を抱える日本軍将校を熱演
――本作は国際的なプロジェクトですが、参加することになった経緯や、出演が決まった時のお気持ちについて聞かせていただけますでしょうか?
ちょうどこの作品に入る数ヶ月前に、今作のプロデューサーから連絡をいただきました。その時はまだ台本がなかったので、日本語訳された原作を読ませてもらい、とても興味深いものだなと思いました。そこから監督とオーディションのようなことをすることになったので、もちろん緊張感はありました。ただ、オーディションに受かる受からないということよりも、作品をやると決まってからの方が「自分が現場で何ができるんだろう」というところの緊張感があったように思います。
――脚本を読まれたり、作品の世界に触れていく中で、作品自体のストーリーや印象はどのように感じられましたか?
この作品は、どうしても太平洋戦争だったり、戦争というキーワードが一番前に来ると思うんです。もちろんそうなんですが、そういう状況の中での人間のあり方と、その後に傷を負った人たちの人生があるというところが良い部分だなと思っています。ジャスティン・カーゼル監督がすごくリアリティを追求している方で、1枚の画で今の状況だったり、登場人物たちの心模様みたいなものを表現するのがとても上手ですごいなと感じました。アートとしてもとてもレベルの高いものになり、さらには人間ドラマ、青春なんじゃないかと僕は個人的には思っています。
――歴史的な観点から、ナカムラ少佐という役に臨むにあたって葛藤や覚悟が必要だったのではないかと想像します。この人物に対してどのように取り組まれ、掘り下げられましたか?
一番は、この時代の中でどういう価値観が当たり前で普通だったのか、というものを大切にしました。もう一つは、ナカムラという人物が何を大切にしたくて、どういう風に生きていきたい人なのかというものを監督や現場のいろんな方とお話をして、細かいところまでお互い納得した上でお芝居をしました。僕が演じたナカムラ少佐だけじゃなく、いろんな登場人物たちのいろんな感情が複雑に混ざり合っていて、善悪ではなかなか判断しがたい。その感情の割合みたいなものを整理してそのシーンに臨むということを現場ではとても大切にしていましたね。
――主人公ドリゴとの関係性は、敵対しながらも絆を深めていく緊張感のあるものだったと思います。ジェイコブ・エローディさんとはディスカッションをされましたか?また、関係性を描く上で現場でされていたことや、印象的なシーンがあれば教えてください。
まず、ドリゴとナカムラがやらなきゃいけないことはお互い同じなんです。「これを達成しないとここから生きて出られない」という中で、もちろん国籍や立場が違う。それによって待遇だったり、与えられる物が違うわけですけど。現場でどうだったかというと、オーストラリアの俳優たちはみんな食事制限をしっかりやっていたので、一緒に食事をする機会もなかったですし、連絡を取り合うことももちろんない。現場で話をするのも、こういう監督のやり方に疑問を持っている数人の俳優たちが挨拶を返してくれるぐらいでした。それが監督の追い求めるリアリティだったんです。僕のやり方とは違いますが、ただ監督が求めるものはそれ、という中で、撮影とはいえすごく難しい毎日でした。
そういう環境だったからこそ、作品も引き締まっているし、僕もオーストラリアの俳優たちにすごく圧倒されました。そういう意味で、どんなディスカッションをしましたかと言われると、シーンについての話し合いは基本的にはできてないんです。ただ、彼らの現場での振る舞いや、「お前も日本から来て大変だよな」って一瞬目が合うとか、そういうのだけで僕はすごく救われた瞬間があったし、そういう日々でしたね。
国際的な現場の過酷さとリアリティ
――海外制作チームと共に作る国際的なドラマということで、日本の作品とはまた違う過酷な現場だったのではないかと思います。オーストラリアのチームとのお仕事は、笠松さんにとってどのような体験になりましたか?
この作品をやって一番思ったことは、「面白いかどうかは出来上がらないと分からない」ということです。撮影中は疑問もありましたし、監督と話し合う瞬間もありました。何度もぶつかりましたけど、やっぱり出来上がったものを見た時にすごく衝撃を受けました。自分のやっているお芝居だったり、カメラの前でのパフォーマンスって何なんだろうってすごく考えさせられました。例えば、2秒ぐらい山を登ってるシーンも2〜3時間ずっと撮ってるんですよ。川をみんなで歩くみたいなのも、ずっと撮ってる。そういう繰り返しの毎日でした。このチームとやれた意義はめちゃくちゃ大きいですが、それが全て前向きなものなのかと言われると難しい。でも一度知ってしまったからには、自分自身はそのレベルを追求しなきゃいけないなと思ってしまう。撮影も終わって時間が経って整理すると、とてもいい経験だったな、という感じですかね。すごく難しいですけど。
――こういった海外での作品は、笠松さんのキャリアにとっても大きな意味を持つかと思います。今後も国際的な作品への挑戦は考えていらっしゃいますか?
今はちょうど意識してないですね。この数年間はすごくそういうものをやろうと思ってやってきましたけど、あんまり国内、国外というよりかは、何をやりたいか、誰とやりたいかというものをより意識するようになりました。どの国で、どの国の人とやるかとかは、あんまりもう気にしなくなりましたね。あんまり関係ないかなっていう感じで。
日本語吹替版では自身による吹替も担当
――ご自身が出演されている作品の日本語吹き替えをされましたが、吹き替えの演技と実際の演技で、意識したところや経験としていかがでしたか?
すごく面白かったですね。自分が英語で喋ったセリフを、日本語という全然言ったことのないリズムや単語で表現するわけだから、言ったことがあるような気がするけど、全然口が覚えてないっていうのがすごく奇妙な体験でした。当たり前なんですけど、僕の顔で僕の声を当てた時に、「あ、ハマってる」「ああ、そうか、僕か」っていう、すごい面白い、変な経験でしたね。
――本作は全世界の方々にご覧になる機会があると思いますが、世界へ向けた作品というところで何か意識されたことはありましたか?
多分あんまり意識してないんだと思うんですよね。これまで、すっごいたくさんの人に見られた作品もあったし、全然見られなかった作品もあって、いろんなことを思った結果、もう誰が見るかも結構どっちでもいいというか、僕が満足できるかどうかっていう、もうそれだけかなって。映画とかドラマ、お芝居の仕事でもそうじゃなくても、僕の家族とか仕事仲間に「いや、こんなことあったんだよ」「面白かったよ、すっごいこんな感じだったよ」って言いたいだけなんですよね。本当に日本に帰ってきて、アイスコーヒー飲みながらちょっと話すだけ。その繰り返しなんです。だから、世界とかインターナショナルとかはあんまり気にしてないですね。どっちにしてもいいものっていうのは、日本で撮ってても世界に広がりますし。
視聴者へ問う作品の核
――戦争、記憶、愛など様々なテーマが重なり合う本作について、視聴者に見ていただきたいポイントはありますか?
やはり、善悪がないというか、すごい曖昧だっていうことが、僕の中では興味深い点だなと思います。「これって誰が悪くて、誰が正解なんだ」「じゃあ、どうしてれば良かったんだ」っていうのが、もう本当にめちゃくちゃ遡って修正かけていかないと直せない。僕らが生まれるずっと前から歴史をちょっとずつ変えていかないと直らないぞ、というのが、僕が結構突き刺さった部分でしたね。向こうには向こうの事情があったんだろうし、ということを考えると、「じゃあどうしたら良かったんだっけな」とか、「僕もじゃあどうすればいいんだっけな」みたいなことをすごく感じました。なので、見ていただいた方と「どうすればいいんだろう」って話をしていきたいですね。できるだけいろんな方面から、いろんな人の立場に立って物事を見なきゃいけないし、僕もそれができてない。そういうことができれば、もう少しだけ何かが良くなりそうだなと。
――最後に、U-NEXTでご覧になる皆様へメッセージをお願いします。
もちろん、見る側の精神状態とかもあると思うんですよ。ただただ笑っていたいみたいな時ももちろんあるし。でも、きっと僕は、こういう作品ってすごく上質な、最高峰のエンターテイメントだと思ってるんです。この作品に関わってる全ての人が、誰も慢心することなく、自分のやるべきことにこの瞬間、すごく集中して作った作品です。是非、皆さんのタイミングで、こういうものに興味を持っていただける時が来たら、見ていただけたらなと思ってます。
海外ドラマ『奥のほそ道 -ある日本軍捕虜の記憶-』は10月10日(金)よりU-NEXTで独占配信中。
【作品詳細】
タイトル:『奥のほそ道 -ある日本軍捕虜の記憶-』
配信情報:10月10日(金)より全5話をU-NEXTで独占配信
製作総指揮
- リチャード・フラナガン
- ショーン・グランド(『ニトラム/NITRAM』『マインドハンター』)
- ジャスティン・カーゼル(『アサシン クリード』)
- ジョー・ポーター(『ウェントワース女子刑務所』)
- レイチェル・ガードナー(『ザ・ストレンジャー』)
キャスト/日本語吹替キャスト
- ドリゴ・エヴァンス役(1940年代):ジェイコブ・エローディ/小林親弘
- ドリゴ・エヴァンス役(1980年代):キアラン・ハインズ/佐々木勝彦
- エイミー・マルヴァニー役:オデッサ・ヤング/田村睦心
- エラ・エヴァンス役(1940年代):オリヴィア・デヨング/高橋雛子
- エラ・エヴァンス役(1980年代):ヘザー・ミッチェル/磯西真喜
- ナカムラ少佐役:笠松将/笠松将
- キース・マルヴァニー役:サイモン・ベイカー/郷田ほづみ
ほか
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