『今際の国のアリス』佐藤信介監督が語る“無人の渋谷”撮影秘話と世界的ヒットの理由「東京には独自のインパクトがある」
		Netflixの日本発SFシリーズ『今際の国のアリス』を手掛けた佐藤信介監督は最近、年に1~2本という驚異的なペースで作品を発表し続けている。
その作品群は『デスノート Light up the NEW world』(2016年)、『BLEACH』(2018年)、『キングダム』シリーズ(2019年~)など、人気漫画の実写化作品が目立つ。来年夏には『キングダム』シリーズの続編も公開が予定されているほか、Netflixとレジェンダリー・エンターテインメントによる実写映画『僕のヒーローアカデミア』の監督を務めることも明らかになった。
『今際の国のアリス』は麻生羽呂による漫画を原作とするNetflixシリーズだ。2020年にシーズン1が配信されると瞬く間に世界中で人気を博し、『イカゲーム』シリーズ(2021~2025年)と並びデスゲームを題材とする作品の人気を先導した。
2022年にはシーズン2、そして今年9月にはシーズン3が配信された。同シリーズはいまだグローバルな快進撃を続けている。シーズン3の配信が開始されるとNetflixのグローバルトップ10に3週間ランクインし、非英語部門では5位を獲得した。配信開始から1か月で累計視聴時間は2,050万時間を超え、日本、シンガポール、サウジアラビア、タイ、フランス、トルコなどの30か国でトップ10入りを果たした。

米『ハリウッド・リポーター』は佐藤監督にインタビューし、『今際の国のアリス』シリーズの撮影裏話や世界的成功を経た想いを聞いた。
――佐藤さんのキャリアの大きな部分を占める『今際の国のアリス』プロジェクトが再始動して、どう感じていますか?
プロジェクトが始まって5年以上が経ちます。シーズン1の企画当初を振り返ると非常に長い道のりでしたが、遠回りだったとは思いません。むしろ、時間があっという間に過ぎたように感じます。
特に、シーズンごとに物語のスケールを広げてきたため、その点はかなり大変でした。今はシーズン3が無事に完成して、ホッとしています。

――『今際の国のアリス』は世界的ヒットとなっています。初めてこの作品を観た多くの人は、無人の東京のシーンをどのように撮影したのかが気になるでしょう。映画『28日後…』(2002年)をやや彷彿とさせました。これはどのように撮影したのですか?
影響という点では、特定の映画などを参考にしたわけではありません。荒廃した都市を描いた映画や映像作品は数多くありますが、東京を舞台としたものは多くないからです。コロナ禍が訪れる前のシーズン1制作時、東京はオリンピック開催に向けて準備を進めていた頃で、他の都市にはない独自のインパクトがあると感じていました。
私はそれまで約10年間渋谷に住んでいましたが、2010年頃の渋谷は、今ほど外国人観光客で混雑する観光スポットではありませんでした。しかし年を追うにつれ、カウントダウンイベントなどで渋谷に集まる人、特に外国人の割合が増えていき、今ではその半数ほどを外国人が占めています。2021年にオリンピックが開催された時は、大勢の人が集まっていました。こうした変化を見て、もしこれらの人々全員が東京から消えたらどうなるだろう?と想像したのです。
シーズン1で、アリスと友人たちが外に出ると誰もおらず、彼らが驚くというシーンがあります。奇妙な場面ですが、その違和感を表現したかったのです。それを映像メディアで実現するのは、かなりの挑戦でした。多額の予算をかけて、渋谷の巨大なセットを含む大規模なセットを作りました。通行人が映らないようスタッフが誘導しながら、ロケも行いました。
――実際に渋谷でも撮影したのですか?
スクランブル交差点での撮影は不可能でした。しかし、周辺のいくつかのエリアで早朝などに撮影を行いました。セットで撮影した時は、「いらない要素をCGIでどうやって消すか」を考えなければなりませんでした。非常に綿密な計画が必要で、カットごとに異なるアプローチを採りました。

――『今際の国のアリス』には生々しい暴力的要素やメロドラマ的な要素、コメディ的な要素があります。もちろんゲーム要素も外せません。非常にさまざまな雰囲気が共存していますが、一貫性を保つのは大変でしたか?
ビジュアルや彼らが住む世界の雰囲気については、全体のトーンを意図的に保っています。しかし、クールなキャラクターもいれば、軽快な笑いをもたらすキャラクターもいます。本作の中のゲームや物語は、それぞれのキャラクターの雰囲気にマッチする形で展開します。そうしたキャラクターごとの違いが、本作の多様性を生んだのでしょう。
本作はスタイリッシュなドラマ作品ですが、すべてを同じトーンにしたくはありませんでした。それぞれのキャラクターが魅力的で、だからこそ視聴者に受け入れられたのだと思います。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。
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