『ウィキッド 永遠の約束』海外批評まとめ──シンシア・エリヴォとアリアナ・グランデがシリーズ完結編で魅せる
ブロードウェイの名作ミュージカルを映画化した、2部作の後編『ウィキッド 永遠の約束』がついに2025年11月21日に全米公開される。また18日には各メディアのレビューが公開され、作品の評価が明らかになった。本作の日本公開は2026年3月に予定されている。
映画版『ウィキッド』シリーズは、シンシア・エリヴォ演じるエルファバと、アリアナ・グランデ演じるグリンダの友情を描く物語。2024年11月に公開された前編『ウィキッド ふたりの魔女』では、「Defying Gravity」の壮大な楽曲と共に、エルファバとグリンダがそれぞれ別の道へと進む衝撃的な展開で結末を迎えている。
この前編は世界興行収入7億5,800万ドル超を記録し、さらにアカデミー賞で衣装デザイン賞・美術賞を受賞。世界的なヒット作となった。

そして後編『ウィキッド 永遠の約束』も、公開前から好調な滑り出しを見せている。Rotten Tomatoesでは観客スコア97%、批評家スコア71%を獲得。一部の視聴者からは「前作よりも良い」という声さえ上がっている。
本作では、グリンダが善い魔女としてオズの魔法使い(演:ジェフ・ゴールドブラム)に操られ、一方のエルファバは逃亡者として西の悪い魔女の名を背負うことになる。お互いの過酷な運命を受け入れていく姿が描かれる。
チュウ監督が明かす新曲追加の理由
先日ニューヨークで行われたプレミア上映で、『ウィキッド 永遠の約束』のジョン・M・チュウ監督は、米『ハリウッド・リポーター』に対し、本作に新曲を2曲追加するに至った経緯を語っている。
「1作目の構成はほぼ固まっていました。多くの楽曲が盛り込まれ、まるでおとぎ話のような物語になる予定だったんです。しかし2作目では、そのおとぎ話が一気に崩れ去ります。だからこそ、登場人物たちの心情をより深く掘り下げる必要がありました。彼らが何かを選択するとき『どんな気持ちなのか?その決断の行き着く先はどこなのか?』と自分に問い続けた結果、そうしたテーマがすべて詰まった作品になりました。本来は一つのシーンにするか、一曲にするかという選択肢だったんです」

『ウィキッド 永遠の約束』の各メディア、批評家たちの評価
以下では、主要媒体のレビューを紹介する。
ハリウッド・リポーター(デヴィッド・ルーニー)
米『ハリウッド・リポーター』誌のチーフ映画評論家デヴィッド・ルーニーは、アリアナ・グランデの演技を本作の“ハイライト”として高く評価している。
「グランデは子どもの頃から演技をしており、内省や不安、悲しみといった静かな瞬間には、エルファバへの忠誠心と同じように深い優しさがにじみ出ている」
また、スティーヴン・シュワルツによる楽曲「The Girl in the Bubble」の存在が、グリンダという役柄にブロードウェイ版のエルファバと匹敵する複雑さをもたらし、作品により深い厚みと公平性をもたらしているとも評価した。
さらにルーニーは次のように続けている。
「グリンダの歌は、彼女が個人的な危機に直面する瞬間に、深い親密さを生み出している。自分の価値観や置かれた立場を冷静に見つめ直し、正しい道を探そうとしている様子が感じられる。さらにグランデは歌に深い感情を込め、キャラクターを豊かで人間味あふれる存在へと昇華させているのがわかる。それが、映画全体への相乗効果をもたらしている」
またルーニーは、続編がいかに強い感情を喚起する作品になっているかについても触れた。
「終盤のエリヴォとグランデが感動的なタイトル曲を歌い上げ、美しいハーモニーで互いの愛と支えを讃えた瞬間が良かった。プレス試写では、私の後ろにいた若い女性たちは鼻をすするように泣き出し、そのまま最後の幕が下りるまで涙が止まらなかった」と綴っている。
Vulture(ビルゲ・エビリ氏)
米メディア『Vulture』の批評家ビルゲ・エビリ氏は、『ウィキッド 永遠の約束』と前作『ウィキッド ふたりの魔女』を比較しながら、本作の特徴を以下のように分析している。
「興味深いことに、今回はチュウ監督が大規模なセットや野心的なダンスシーンにはあまり重点を置かず、ミュージカルナンバーをより親密な演出に仕上げている。『ウエスト・サイド物語』というよりは、『若草の頃(原題:Meet Me in St. Louis)』の方向性だ」
さらに彼は、主演2人のボーカルスタイルにも触れた。
「ポップカルチャーでは“歌姫”がいることが当然とされがちだが、実はこの2人は短調でしっとり歌い上げるタイプ。バラードのほうが魅力を発揮している」と分析した。
そして、こうした演出と音楽表現の選択が、作品に新たな深みをもたらしていると付け加える。
「そのすべてが、『ウィキッド 永遠の約束』をより厚みのあるドラマにしている。前作よりもトーンは落ち着き、焦点がはっきりし、より人間的な物語になっている。そして、少なくとも現時点では、『ウィキッド』シリーズをより満足度の高い作品へと押し上げたと思う」と締めくくっている。
BBC(キャリン・ジェームズ氏)
英国『BBC』のキャリン・ジェームズ氏は、『ウィキッド 永遠の約束』について「前作よりもさらに楽しめる作品だ」と評価している。
彼女はまず、『ウィキッド』という作品自体の性質をこう指摘する。
「はっきり言っておきたいのは、『ウィキッド』シリーズはすでにファンを獲得している観客に向けて語りかける作品だということ。ブロードウェイのショーを思わせる派手なキャンディカラーのスペクタクルや、圧倒的な感傷表現に懐疑的な人にとっては、受け入れがたいと思う」と述べた。
その一方で、「しかし、こうした作風を楽しめる人にとっては、この最新作は前作以上に魅力的で、最後まで心から楽しむことができる」とコメントを残した。

Associated Press(AP通信)
『AP通信』の評価は少し複雑だ。
同紙は「シンシア・エリヴォやアリアナ・グランデの出番が増え、高揚感のある独白も多くなっている。多くの『ウィキッド』ファンにとっては、このようなシーンが増えるのは嬉しいことだろう」としつつ、こう続けている。
「だが、ウィキッドの世界観に圧倒されやすい層にとっては『ウィキッド 永遠の約束』はそれほど満足はできなかった。確かに、作品にはすばらしい才能があり、特にエリヴォは魅力が存分に発揮されている。それでも、本作は前作同様、映画というより大掛かりな舞台演出を見ているような場面が多い。登場人物が舞台装置のように、まるでオズの魔法使いの演出で出入りしているように見える」
さらに批評家はこう付け加えた。
「映画の世界に深く引き込まれることはほとんどなく、観客席の一段高い席から眺めているような距離感がある。それでも時には感嘆し、時には楽しみながら観られる。この作品を支えているのは紛れもなく主演俳優たちの力だろう」

USA Today(ブライアン・トゥルイット氏)
米メディア『USA Today』のブライアン・トゥルーイット氏は、本作について次のように評価している。
「『ウィキッド 永遠の約束』には、前作から続く魅力に加えて、お馴染みの空飛ぶ猿の群れも登場する。さらに、陰険で奇妙な魅力を放つジェフ・ゴールドブラム、甘いロマンス、わずかなボディホラー、そして高い人気を誇るあの靴まで盛り込まれている。少し結末が複雑だったり、キャラクターの描き方に多少の不満もあるかもしれないが、『ウィキッド』を締めくくる作品としては申し分ない出来だ」。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。
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