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『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』ウーナ・チャップリンが語る演技と血脈――チャップリン家とキャメロンの共通点

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ウーナ・チャップリンが『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』で見せた新境地――演技、官能性、キャメロンとの信頼関係
ウーナ・チャップリン 写真:John Russo
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【本記事には『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』のネタバレが含まれます

ジェームズ・キャメロンが手がける、10億ドル(約1,560億円)規模の巨大フランチャイズに、新たな存在感を放つ俳優が加わった。最新作『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』で、物語を大きく揺るがす悪役ヴァランを演じるウーナ・チャップリンだ。

映画史に名を刻んだチャーリー・チャップリンを祖父に持つ俳優一家の五代目として生まれたウーナにとって、パンドラという舞台は、自身の身体表現を解き放ち、家族の系譜と向き合う場でもあった。

火山地帯に暮らすナヴィ族の一派〈マンクワン〉を率いる冷徹な指導者ヴァランは、いかにして生まれたのか。キャラクターに込めた官能性、過酷な撮影現場での体験、そしてジェームズ・キャメロンへの信頼──ウーナは、そのすべてを率直に語ってくれた。

順風満帆ではなかったウーナ・チャップリンの俳優人生

アバター』という巨大な世界の一員になったという実感は、今も完全には飲み込めていないという。

「義母がロサンゼルスでのプレミアに来てくれたんですが、ああいう規模のイベントを体験したことがなかったみたいで。車の後部座席で『これって、本当にすごいことじゃない?』って驚いていました」

そう笑いながら振り返るウーナに、マネージャーはこう声をかけたという。

「君は、ほとんど頂点からスタートしたようなものだよ。これ以上大きな舞台は、なかなかない」

もっとも、彼女のキャリアは決して一直線ではなかった。演劇学校を卒業後、ロンドンのグローブ座で舞台に立ち、その後『ゲーム・オブ・スローンズ』や『ブラック・ミラー』といった作品に出演。約10年以上にわたり着実に経験を積んできたが、パンドラほどのスケールの作品は初めてだった。

本作で演じるヴァランは、火山地帯に生きるマンクワン族の指導者。かつて追放された過去を背負い、権力の奪還に執念を燃やす人物だ。彼女は、ジェイク・サリー(演:サム・ワーシントン)の宿敵マイルズ・クオリッチ(演:スティーヴン・ラング)と、戦術的でありながら、どこか官能的な関係を築いていく。

ウーナは、この複雑な役柄に、荒々しくも生命力に満ちたエネルギーを吹き込んだ。

39歳という節目に立つ今、本作はキャリアの新章であると同時に、仕事と家族、その両方を見つめ直す契機にもなったという。

パフォーマンスキャプチャがもたらした「自由」

――作中での演技は非常に印象的でした。身体表現の豊かさも際立っています。ジェームズ・キャメロンは、パフォーマンスキャプチャという手法に「自由」を感じると語っていますが、その考え方は、あなたの演技アプローチとどのように重なりましたか?

最初の本読みが終わると、私たちはすぐにハワイへ連れて行かれました。そこで1週間の没入トレーニングを受けたんです。どちらかというと、子どもたちのための時間だった気がします。彼らはジャングルで素晴らしい体験をしていましたが、私は少し取り残されたような感覚もあって。

火山を訪れる体験もありましたし、全体としてはとても貴重だったのですが、同時に「なんだか不思議だな。演劇学校みたいだな」と感じてもいました。

その後、撮影に向けて、パルクールやアーチェリー、武術、動きのデザインなどを含む6週間の準備期間に入りました。私はこのプロセスが本当に楽しかったですね。

パフォーマンスキャプチャのスーツやヘルメットを身につけることにも、まったく抵抗はありませんでした。むしろ、すごく居心地がよかった。

現場の雰囲気はまるで家族のようで、作りものではない親密さがありました。みんながお互いを深く理解し、支え合っている。私は演劇の訓練を受けてきたので、想像力をフルに使う身体的な演技ができるのは本当に楽しくて。数分もすれば、ヘルメットカメラの存在なんて忘れていました。

とても安心できる、心地よい現場でした。

『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』ウーナ・チャップリンが語る、ジェームズ・キャメロンと祖父チャーリー・チャップリンの共通点
アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ 写真:20th Century Studios/Courtesy Everett Collection

ウーナ・チャップリンにとっての「挑戦」

――この役は、あなたのキャリアの中でも特に挑戦的だったのでは?

正直、ようやく肩の力が抜けた、という感じです。

これまでのキャリアでは、見た目の印象もあってか、イギリスで時代劇に出演することが多かったんです。それが仕事の大半を占めていました。でも今回は、四つん這いになって這い回ったり、もっと本能的に、自由に動けた。それが本当に新鮮でした。

演劇学校を卒業して最初に立った舞台がグローブ座だったのですが、みんなが真剣にリハーサルをしている横で、私は隅でスカートをいじったり、サーカスみたいな妙な動きをしたりしていて。ただ遊んでいたんです。

その時の演出家、ドミニク・ドロムグールが「いつか、こういうことを仕事でできる役が来るといいね」と言ってくれて。その言葉が、ずっと心に残っていました。

ヴァランという存在と「官能性」

――ヴァランのセクシュアリティも大きな話題になっています。これほど大作で、ここまで生々しく描かれるのは珍しい印象です。キャラクターとして意識的に注力した部分でもあったのではないでしょうか?

とても意識していました。

私にとって、すべての出発点は、彼女がエイワ──生命の女神とのつながりを断ち切ったことです。エイワは、生命の神聖さや創造力そのものを象徴する存在。そこから離れた瞬間、ヴァランは「性」や「官能性」という生命の力を、歪んだ形で使い始めるんです。

彼女にとって、セックスはもはや喜びではなく「力」。それが、私が演じた変化でした。

ゾーイ・サルダナがネイティリを演じるとき、彼女は“心”で動いているように感じます。でもヴァランの場合は、胸のあたりを強く締め付けるような感覚でした。

実際、撮影では本当にきついストラップを付けていて……正直、もう二度とやりたくないです(笑)。身体には負担がかかりましたが、それも自分で選んだことでした。

体の奥にある溶岩の熱、火山のエネルギー。その感覚が、彼女の官能性や、すべてを貪り尽くしたい衝動と結びついていたと思います。

ヴァラン(演:ウーナ・チャップリン)、映画『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』より
ヴァラン(演:ウーナ・チャップリン)、映画『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』より 写真:© 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

スティーヴン・ラング、そしてジェームズ・キャメロン

――スティーヴン・ラング(クオリッチ役)とのやり取りからは、強い信頼関係が感じられました。

彼と一緒にいると、不思議と安心できるんです。どこか、母を思い出させる存在でもありました。

母もスティーヴンも、とても独創的で、型破りなところがあります。ユーモアの感覚や物事の捉え方にも、通じるものがある気がします。まったく別の人間ですが、精神的に共鳴する部分があるんでしょうね。

パリで母とスティーヴンを引き合わせた時、「お母さんを思い出させる人を紹介するよ」と言ったら、母は「え?」という顔をしていましたけど(笑)。

彼のことは心から信頼していましたし、ジム(ジェームズ・キャメロン)も含めて、彼らと一緒だったからこそ、極限まで踏み込めたと思います。

――映画は壮絶な炎の戦いでクライマックスを迎え、キリ(演:シガニー・ウィーバーがエイワの全力を呼び覚ましてヴァランを敗北へと追い込みます。あの瞬間を演じるのはどのような感覚でしたか?

火山での出来事を境に、ヴァランは自分の意思というより、環境に突き動かされているように感じました。常に「戦うか、逃げるか」の状態で、生き延び、奪い、破壊する。その流れに身を委ねている感覚です。

クオリッチと出会い、彼女はようやく同じエネルギーレベルで向き合える相手を見つけた。二人は信念の強さという点で、とても似ています。そこに、彼がまったく新しい価値観を投げかけてくる。その瞬間、視界が一気に開けるんです。

二人の関係性には、『アントニーとクレオパトラ』のような、危うくも情熱的な空気がありました。

すべてが炎に包まれ、最悪の状況なのに、ヴァランは踊り、歓声を上げる。破壊のエネルギーに酔い、その恐怖さえも、自分を突き動かす力に変えていく。

でも、最後には勝てなかった。破壊も、克服も、自分の糧にすることもできなかった。その瞬間が、彼女が初めて限界を突きつけられた時だったのだと思います。

『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』ウーナ・チャップリンが語る、ジェームズ・キャメロンと祖父チャーリー・チャップリンの共通点
『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』より 写真:20th Century Studios/Courtesy Everett Collection

最初は歩みたくなかった、俳優の道

――今回の現場で演劇学校の感覚が蘇ったと言っていました。俳優一家で育ちながら、初めてこの道に進みたいと思った瞬間のことを覚えていますか?

母は女優、祖父も俳優、曾祖父は劇作家で、その父も俳優。だから、私は五代目、もしかしたらそれ以上かもしれません。

そんな環境は日常でした。でも、それで生計を立てられる人はほんの一握りだとも分かっていた。だから、最初は抵抗していました。

「天才の血筋」と言われる中で、もし自分がそこまで上手くなかったらどうしよう、と。厳しくて不安定な世界に見えました。でも、学校の舞台で『夏の夜の夢』に出演した時、完全に心を掴まれてしまったんです。

舞台を降りた瞬間、涙が止まらなくなって、「これだ」と思いました。

ただ、仕事のためだけに生きてきたわけではありません。人生そのものの物語も大切にしています。仕事以外の時間も豊かで、子どもたちや母のために生きている。その感覚が、私の支えです。

最新作『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』より、ジェイクとネイティリ
映画『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』より、ジェイクとネイティリ 写真:©︎ 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

ジェームズ・キャメロンと祖父チャーリー・チャップリンの共通点

――その想いは『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』の制作経験とどう結びついたのでしょうか?

この作品に関われたことは、私にとって本当に特別でした。なぜなら、自分の人生で大切にしている多くの要素が、そこに重なっていたからです。

今、私は自然に囲まれて暮らしています。庭を食べ物が実る「森」に変えようとしていて、子どもたちと自然の中で生きている。自然は、私の人生から切り離せない存在です。

季節の移ろいを感じたり、鳥の声に耳を澄ませたり、地面に寝転んだり。そういう時間が大好き。

先住民の文化にも強く惹かれてきました。彼らの知恵や、植物や薬草を使った癒しの技術に、深い敬意を抱いています。

ジェームズ・キャメロンは、私にとってチャーリー・チャップリンに最も近い存在です。作風はまったく違いますが、ジムの中に、祖父と通じる「何か」を感じる瞬間がある。それは、たぶん魂のレベルでの共鳴なんでしょうね。

――身体表現という点でも、祖父の遺産と重なりますね。

まさにそう思います。

理屈ではなく、無意識のうちに相手に寄り添い、一体になる。祖父が誰よりも優れていたその感覚が、今も自分の中に受け継がれている気がします。

※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。

※2025年12月25日時点の為替レートで換算

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