『ストレンジャー・シングス』完結まであとわずか――ダファー兄弟が語る、シーズン5の舞台裏と最終章のヒント、スピンオフの展望
【※本記事は『ストレンジャー・シングス 未知の世界』シーズン5・VOL2(第5~7章)の重大なネタバレを含みます。】
Netflixのメガヒットシリーズ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』の最終話へと繋がる、シーズン5・VOL2がついに配信された。VOL2では、ホーキンスの現実世界と裏側の世界、そして強敵ヴェクナ(演:ジェイミー・キャンベル・バウアー)に関する大きな謎がついに明かされた。最終話となる第8章の配信まであとわずかだ。
同シリーズの脚本・監督・ショーランナーを務めるダファー兄弟のマット・ダファーとロス・ダファーは、シリーズのラストシーンを常に頭に描いてきた。しかし、そこへ至るまでの道のりは険しかったという。
ダファー兄弟は米『ハリウッド・リポーター』のインタビューに応じ、シーズン5・VOL2の見どころやその制作舞台裏、俳優たちとのエピソード、そして最終話にまつわるヒントやシリーズの今後の展望を語った。
ネタバレ厳禁の最終シーズン、ダファー兄弟が講じた対策とは?
――ドラマシリーズでは、ラストの展開がバレないようにさまざまな対策が取られます。『ストレンジャー・シングス 未知の世界』ではどんな対策を講じましたか?
マット・ダファー:そうですね。複数パターンのラストを撮影するなど、ファンを欺くような方法は取りませんでした。そして私たちには優秀なセキュリティチームが付いてくれて、パパラッチから守ってくれました。
最終話だけ台本が赤い紙に印刷されていて、読みにくかったです(笑)。また、台本はかなり限られた人にだけ配りました。そのために作業は少し難航しましたが、特別な対策を講じる必要があったのです。
ロス・ダファー:それほど私たちはラストの展開を隠しておきたかったのです。カリ(演:リネア・ベルテルセン)の再登場にあたってリネアとは何カ月も撮影したのに、情報が漏れなかったのは感心しました。
マット:シーズン4の時は(ブレナー博士役の)マシュー・モディーン再登場の情報が漏れないようにしていましたが、初日に彼がオープンカーで現場に来て、パパラッチに撮られてしまいました。だからリネアには「オープンカー禁止」と言ってありました(笑)。
――ジェイミー・キャンベル・バウアーさんのインタビューでは、「シーズン5ではあまり情報を教えてもらえなかった」と語っていました。彼はあなたたちに長文メッセージで質問を送ったそうですが、本当ですか?
マット:本当です。特に最終話の脚本には時間がかかり、まだ執筆中だったのです。しかも監督業もこなさなければならなかったので、皆に台本を渡すのが遅くなってしまいました。
シーズン5の鍵を握る、マックスとホリーの化学反応
――VOL2では大きな展開がありました。一番気になるのはマックス(演:セイディー・シンク)が目覚めたことです。セイディーさんはシーズン4以降、マックスが目を覚ますかどうか知っていたのでしょうか?
ロス:シーズン5にも出演してもらうことは、シーズン4の撮影中から伝えていました。「シーズン4の最終話の台本を読んだら、彼女はもう出番がないと思って落ち込むだろう」と思ったからです。しかし、具体的な展開までは説明しなかったと思います。
マット:マックスがヴェクナの精神世界に囚われる設定は決まっており、ヒントは教えていました。しかしその時点では、ホリー(演:ネル・フィッシャー)がここまで大きな役割を担うことは決まっていませんでした。マックスとホリーのストーリーは、脚本を執筆する中で大きく動いていったのです。
――ホリーはシーズン5で非常に重要な役割を担っています。ホリーの役割を増やした経緯と、ネル・フィッシャーさんを起用した理由を教えていただけますか?
マット:ネルは年齢の割に驚くほど賢く、物事を的確に捉えており、セイディーにとても似ていると感じました。ネルは自身の役割を果たせる唯一の子役で、まさに子ども時代のセイディーもそうでした。2人が協力して演技をするところや、セイディーから学ぶネルの姿を見られたのは本当に良かったです。今シーズンの撮影で最も楽しかった思い出の一つですね。

――ネルさんが出演する他の作品を見て、ホリー役に起用したいと思ったのですか?
マット:『死霊のはらわた ライジング』(2023年)の予告編でネルを見て、「ホリーにそっくりだ」と思いました。彼女は今より幼かったですが、ロスにもその予告編を見せて「彼女をホリー役にどう?」と聞きました。その後、出演する子役候補の中に彼女がいたのです。
ロス:候補たちの中でもネルの実力は段違いで、その演技に圧倒されました。マットも早くから彼女に目をつけていたことを自慢していました。
ウィルがついにカミングアウト――ノア・シュナップの葛藤と熱演の裏側
――ノア・シュナップさんのインタビューでは、第6章までの台本を読んで「ウィルが(同性愛者であることを)カミングアウトするシーンがまだないから、第7章以降にあるはず」と言っていました。いつカミングアウトするのか、事前に知らせなかったのでしょうか?
ロス:覚えていませんが、わざと隠していたわけではありません!あのシーンは完璧に仕上げたかったので、シリーズ史上最も時間をかけて考えました。ウィルとノアに対する責任も感じていたため、できるだけ真実に近づけたかったのです(※シュナップはウィル役の経験を経て、自身が同性愛者であることをカミングアウトした)。
――ノアさんは「完璧だった」と言っていましたが、そのシーンはどのように執筆しましたか?
マット:とにかく時間がかかったことは覚えています。最初は、ウィルが母親のジョイス(演:ウィノナ・ライダー)にカミングアウトするだけのつもりでしたが、どうもしっくりこなくて。ウィルの友人たちも巻き込む展開にしたら、少しずつまとまっていきました。
ノアに脚本を渡した時はかなり緊張しました。このストーリーはノア自身の経験と重なる部分も多いですし、彼はウィルのことをよく知っていますから。彼が共感してくれて嬉しかったと同時に、とても安心しました。ノアも自分自身にかなりのプレッシャーをかけていました。台本は撮影の数カ月前に渡しましたが、膨大な時間をかけて一人で撮影準備をしていたようです。
あのシーンではノアにほとんど指示を出さず、質問しながら撮影を進めました。「最初に何から撮りたい?リアクションのショットから徐々にアップにする?それともアップから撮る?」と聞いたら、彼は「まずワイドショットから撮ってウォーミングアップしたら、すぐにクロースアップを撮りたい」と言いました。
ノアはカメラが回っていない時も100%の力で完璧にこなし、ほとんどNGを出しませんでした。採用したショットの多くは、最初に撮ったテイク1のクロースアップです。撮影を終えた彼は倒れそうに見えましたが、かなりほっとしたと思います。
――ロスさんとマットさんは現場で涙を見せましたか?
ロス:クロースアップの撮影で泣いてしまいました。
マット:技術的な面でも緊張しました。台車が外れたりピントがズレたりといった技術的なトラブルが起きると、俳優に説明しなければならず、現場の空気が悪くなります。だから今回、魔法のような瞬間を撮影しながらも、「何も起こりませんように」と祈っていました。
ロス:稀なことですが、「あれはもう二度と撮れない」と思う瞬間があります。
マット:同じことは二度と起きません。あの日のノアはすばらしい演技をたくさん見せてくれましたが、テイク1にかなうものはありませんでした。完全にリアルで、ありのままの感じでしたね。
シリーズのラストにダファー兄弟も「満足」と太鼓判
――シリーズ冒頭でウィルが姿を消したことが今シーズンのラストまで繋がること、そしてウィルがこれほど重要な役割を果たすことは、最初から思い描いていたのでしょうか?
ロス:ウィルが鍵となることはずっと前から決めていました。シーズン2のラストで怪物「マインド・フレイヤー」をウィルの中から追い払った後も、裏側の世界との繋がりを維持していました。しかし、「ウィルの誘拐からすべてが繋がる」という点は、シーズン5に着手して最初に思いついたアイデアの一つです。そのため、結末へ向かうためには、必然的にもう一度ウィルを中心に構成しなければならないと思いました。

――予告編ではスティーブ(演:ジョー・キーリー)がダスティン(演:ゲイテン・マタラッツォ)に「死ぬ覚悟がある」と言っており、さまざまな憶測が飛び交っています。
ロス:スティーブのことは皆いつも心配しています。
マット:予告編にあのセリフがなくても、皆スティーブを心配しているでしょう。
――しかし、ホッパー(演:デヴィッド・ハーバー)もイレブン(演:ミリー・ボビー・ブラウン)を救うために命を懸けていることを考えれば、死ぬ覚悟を持つキャラクターは複数いることになります。彼らが死なないかどうかハラハラします。
マット:本作は『ゲーム・オブ・スローンズ』(2011年~)のようなタイプのドラマではないので、レッド・ウェディング(※『ゲーム・オブ・スローンズ』シーズン3・第3話「キャスタミアの雨」で描かれた結婚式での惨劇)のような展開にはなりません。
最終話ではいくつか驚くような出来事が起こりますが、大きなショックを与えたり、動揺させたりする意図はありません。観た後に「この出来事は必然だったのだ」と感じて、満足してもらえたら嬉しいです。どうなるかは観てのお楽しみですね。スティーブの運命については……なんとも言えません(笑)。しかし、彼はどんどん打ちのめされていきます。
――心配になるキャラクターがあまりにも多いですが、最も気にすべきなのはイレブンですね。今シーズンで、イレブンとホッパーは感動的な再会を果たしました。ラストを迎える前に、2人の関係を完全に修復させたのはなぜでしょうか?
マット:その理由の一つは、キャラクターたちのまだ表に出ていない関係性を見つけたいと思っているからです。ミリーとデヴィッドはすばらしい俳優ですが、シーズン2以降その関係性を十分に活かせていないと思いました。そこで、2人の関係性を改めて考えてみたかったのです。
本作は、キャラクターたちが大人へと成長していく過程を描く物語です。その中には「親離れ」という出来事も含まれます。ホッパーは悲劇的な過去を持つがゆえ、イレブンを強く束縛してしまいます。私たちは物語のラストまで、その葛藤を深く掘り下げたかったのです。

――ラストは上手くまとまったと感じますか?
マット:かなり率直に聞きますね(笑)。
ロス:本作のラストには本当に満足しています。特に最終話のラストは、どんなシーンにするか何年間も構想を練っていました。シーズン5の制作に入って最初に決めたのもそのラストシーンです。すべてをその瞬間に向けて積み上げてきました。そこまでの8時間がどれほど面白くても、ラストの5分間で失敗したら台無しですから。ラストシーンの流れとキャストの演技はすばらしく、手応えもありますが、観客に届けるのはいつも緊張します。
マット:特に本作のファン層は幅広いので、反応も本当にさまざまです。作品のどの側面に注目するか、どの場面を重視するかは人それぞれですからね。そうした反応の数々を見ていると混乱することもあります。実際のところ、ファン全員を満足させるのは非常に難しいことです。
結局、私たちはあらゆるノイズを遮断し、自分の直感と、長年一緒に仕事をしてきた脚本家たちの意見を信じるしかありません。それが皆さんにも伝わることを願っています。私に自信を与えてくれる唯一の事実は、俳優たちがキャラクターに深く共感し、幸せそうにしていることです。正直に言えば、最終話の公開を待っている今より、俳優たちと初めて読み合わせをした時のほうが緊張しました。
『ストシン』は終わらない!アニメと実写スピンオフが進行中
――『ストレンジャー・シングス』プロジェクト自体は今後も続きます。今後公開予定のアニメ『ストレンジャー・シングス:1985年の冒険』や実写スピンオフの企画について、明らかにできる情報はありますか?
ロス:実写スピンオフに関してはまだ初期段階です。しかし、このスピンオフがホーキンスのキャラクターたち、そして裏側の世界の「本当のラスト」になります。時代設定も登場人物も異なりますが、『ストレンジャー・シングス 未知の世界』シリーズと繋がっていることは確かです。
これらの構想は長年温めており、ワクワクしながら情熱を注いで制作しています。私たちはショーランナーを務めるわけではありませんが、深く関わっていく予定で、年明けには本格的に制作に入ります。近いうちに詳細を発表できると思います。

――パラマウントと契約して新作映画の制作も決まっているそうですが、その前に発表されますか?
マット:おそらくそうなるでしょう。パラマウントとの契約はまだ発効しておらず、今は『ストレンジャー・シングス』のスピンオフに注力しています。
ロス: スピンオフシリーズの制作は新作映画より確実に進んでいます。
マット:『ストレンジャー・シングス:1985年の冒険』の制作はとても楽しかったです。確かに『ストレンジャー・シングス』ではありますが、ストーリーテリングの手法にさらに重きを置いています。新しい物語やキャラクターを作り上げていくのは最高でした。
『ストレンジャー・シングス 未知の世界』シーズン5は、VOL1とVOL2がNetflixで配信中。最終話となるVOL3は2026年1月1日に配信される。また全米ではストリーミング配信開始と同時刻より、500の映画館で最終話の上映も行われる。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。
【関連記事】
- 『ストレンジャー・シングス』知られざるグッズ特集|Netflix公式アイテム・レゴ・キーホルダーまとめ
- 【Netflix】2026年1月のおすすめ配信作品 ―― 木村拓哉主演『教場 Reunion』、『ストレンジャー・シングス』フィナーレほか
- 堂本剛、ストシン愛が爆発!『ストレンジャー・シングス 5』ダファー兄弟と激熱対談 ――「結末で泣きすぎないで」ファンへ向けたアドバイスも
- 米批評家が選ぶ!2025年ベスト海外ドラマ&アニメベスト10|『キャシアン・アンドー』『プルリブス』『アドレセンス』…話題作が目白押し
- ヒュー・ジャックマンら豪華出演! CNNj年末特番「2026年ニューイヤーズ・ライブ特番」で世界の年越しを生中継へ
