ENHYPENジェイク、新作『THE SIN : VANISH』とK-POPの現在地を語る――自身初のプロデュースで「眠っていた何かに火がついた」
ENHYPEN(エンハイプン)は、HYBE(ハイブ)傘下のレーベルBELIFT LAB(ビリーフラボ)に所属する実力派K-POPボーイズグループだ。同グループは、7枚目のミニアルバム『THE SIN : VANISH』を1月16日(日本では1月21日)に発売した。
23歳のオーストラリア出身メンバーのジェイクは、同グループが「新たな歩みを見せている」と語る。このニューアルバムでジェイクは、多言語ナレーショントラックのプロデュース、そして新曲「Sleep Tight」の作詞・作曲を担当した。
本作のリリース直前、ジェイクは米『ハリウッド・リポーター』の取材に応じ、プロデュースに携わった経緯、ENHYPENとファンの現在地、そしてK-POP界の展望を語った。
ENHYPEN新作は「社会からの逃亡」がテーマ│前作から続くストーリー
――まずは、最新アルバム『THE SIN : VANISH』についてお聞かせください。昨日のメディア向け試聴会で、私たち取材陣はメンバーの皆さんと一緒にこのアルバムを聴きました。現在の心境はいかがですか?このアルバムは、皆さんにとってどんな未来につながると思いますか?
本作はコンセプトアルバムです。音楽、プロダクション、ストーリーボード、映像など、すべてがコンセプトやストーリーに関わっており、コンセプト自体も前作アルバム『DESIRE : UNLEASH』(2025年)から引き継がれています。
前作では「愛する人と一緒にいたい」という想いを歌っていました。しかし今回のアルバムは、解釈にもよりますが、「愛する人とともにこの社会から逃亡する」というストーリーです。タイトル曲の「Knife」は、まさに逃げている最中の感情を表現しています。
――コンセプトアルバムと通常のアルバムでは、どのような違いが生まれるのでしょうか?
今回のアルバムは、曲順もストーリーに合わせて計画的に決めました。そのため、ぜひ最初から順番通りに聴いてください。1曲目の「The Beginning」はナレーショントラックで、最後のナレーショントラック「The Beyond」まで続く旅の始まりを告げています。
韓国語版ナレーションは、韓国の有名俳優パク・ジョンミンさんに担当していただきました。日本語版と中国語版ナレーションもそれぞれ非常に有名な方が参加されています(※日本語版は声優の津田健次郎、中国語版は歌手の黄子弘凡〔Lars Huang〕が担当)。
聴いてくださる皆さんには、このアルバムに込められたディテールを感じ取り、受け入れていただければと思います。
ジェイク、初プロデュースで「目標が叶って本当にうれしい」
――今回、ジェイクさんは初めてプロデュースを担当されました。その経緯を教えてください。
昨年の初頭に、個人的な目標として「もっと積極的に活動すること」と「プロデューススキルを磨くこと」と決め、年内に2曲以上リリース、または制作しようと計画していました。その時に制作した2曲が今回のアルバムに収録され、本当にうれしいです。
――ナレーショントラックについて、詳しく教えていただけますか?
「The Beginning」は、前作アルバムのプロモーションが終わった翌日あたりから制作を始めました。すぐにスタジオに入り、アルバムの反省点や「次作でプロデュースを手がけたい」という話をスタッフとしました。その時点ではまだツアー中だったので、具体的な計画は決まっていませんでした。
前作の『DESIRE:UNLEASH』は、映画『悪魔と夜ふかし』(2023年)をモチーフとしたコンセプトアルバムでした。最近の映画ですが、古めかしいスタイルやコンセプトを採用している点が面白いんです。その映画を見直していました。ナレーショントラックのデモテープには、映画の音声を一部使用しました。
そこで、「僕たちが吸血鬼としてインタビューを受ける」という前作のテーマを引き継いでみようと考えたんです。社会や他の人たちは、僕たちのことを完全には理解できないかもしれません。しかし、それでも僕たちはこうして生きており、自分たちがどんな存在なのか、どう感じているのかを伝えたい。それが、今回のアルバムの根底にあるアイデアです。
――前作と今作では、どのような点が異なりますか?
普段はメロディーやトップラインだけを手がけることが多いですが、今作では初めてゼロからトラック制作に取り組みました。新鮮な経験で、新たな気づきもありました。いつも一緒に仕事をしているプロデューサーが、「トップメロディーよりトラックのプロデュースの方が向いているかもしれない」と言ってくれたんです。少し驚きましたが、ナレーショントラックの制作はすべてがスムーズに進みました。
僕が作詞・作曲を手がけた「Sleep Tight」も、同じ日から制作を始めました。ナレーショントラック制作の終盤から着手し、自分が何を感じているのか確かめようと思ったんです。それがどんどん積み重なり、最終的にこの完成形になりました。とても満足しています。

――練習生時代にプロデュースに携わった経験はありますか?将来的に、外部の人にプロデュースしてもらうべきだと思いますか?
現在のところは、外部に任せるべきだと思います。ジョンウォン、ジェイ、ソンフン、ヒスンは長い間Big Hit Entertainment(現在のHYBE)の練習生でしたが、僕は入って8ヶ月ほどしか経っていなかったので、楽曲プロデュースができるレベルに達していなかったのかもしれません。少しでもダンスと歌を上達させようと必死でした。
しかし、できるだけ早くからプロデュースを始め、多くの音楽に触れた方がいいと思います。実際にプロデュースはしなくても、他の人の仕事を見るだけでも良い勉強になります。僕はそういうことから始めました。
――実際に楽曲プロデュースを経験して、いかがでしたか?
自分の中に眠っていた何かに火がついた感じです。K-POPアイドルとして活動していると、時々、仕事をとても単調に感じることがあります。僕たちは毎日、非常にタイトな分刻みのスケジュールをこなします。以前はそういう働き方が好きなタイプでしたが、自分でも気づかないうちに疲れてしまうことがあります。
しかし、音楽制作やプロデュースを経験すると考え方が変わってきて、物事をクリエイティブに考えられるようになるんです。スタジオにいると、いつもと違うものを感じます。曲作りをしている時は違う種類のアドレナリンが出る感じです。将来的にはもっとプロデュースをしてみたいですね。
大切なのは“求められるもの”と“伝えたいこと”のバランス
――今回のナレーショントラックは、韓国語・英語・日本語・中国語の4カ国語で収録されています。また近年、K-POP業界全体がグローバルな訴求力を強く意識しています。韓国とオーストラリアで育ったジェイクさんから見て、世界市場にアピールする重要性とは何だと思いますか?
ENHYPENは韓国だけでスタートを切ったわけではありません。正直に言うと、僕たちがここまで来られたのは、世界中のファンのおかげだと思います。I-LAND(ENHYPENのきっかけとなったオーディション番組。2020年放送)はさまざまな国・地域で配信され、世界中から投票が可能でした。
その時点ですでに、僕たちやK-POPに興味を持ってくれる人が韓国以外にもたくさんいることを感じていました。しかし、当時はコロナ禍の真っただ中で、その熱量を自分の目で確かめることができなかったんです。しばらく経って、海外公演を開催するなどようやく世界中のファンと交流できるようになり、「K-POPは韓国だけのムーブメントではない」と気づきました。K-POPというジャンル自体が、世界中から愛されているんです。

国や地域ごとにスタイルは異なるかもしれませんが、僕たちは特定の地域やグループに向けて“刺さりそう”なアルバムや曲を作ることはありません。例えば、今回のアルバムにはラテン音楽風の曲が入っていますが、ラテンアメリカのファンをターゲットにしたわけではないんです。
僕たちが考えていることはまず「質の高いアルバムや曲を出すこと」、それだけです。ENHYPENやHYBEは、ファンのためだけに作品を出しているわけではありません。僕はこの点にとても共感しています。
ファンに気に入ってもらえる作品を作ることは重要ですが、同時に、「自分たちが何をしたいのか」という地に足のついた目的が必要です。これはとても微妙なラインだと思っています。
――ファンが求めるもの以上に、自分たち自身のビジョンを作り出す必要があるということですね。
その通りです。ファンに喜んでもらったり、皆さんが聴きたいと思う曲やアルバムを作ったりすることは重要ですが、それ以上のことをしたいと思うと微妙なバランス感覚が必要です。どちらか一方に偏るわけにはいきません。僕たちや会社のチームは、このバランスを取るのが非常に上手です。
今回のアルバムは、コンセプトも、そこに込められた意味も、そしてディテールも非常に強く、すべてをとても細かく表現しています。そのすべてに理由があるのです。そして、皆さんもこういうアルバムが好みだということは分かっています。ENHYPENや今回のコンセプトを知らなくても、楽曲自体が好きで聴いてくれる人も多いでしょう。
今回のアルバムの出来には、この5年間で一番自信を持っています。楽曲も、そこに関わるすべての要素も、僕たちの作品の中で最高だと自負しています。
ジェイクから見た今のK-POP界とは――「ファンへの想い」がモチベーションに
――K-POP業界の状況やトレンドは、急速に変化しています。各事務所も、これまで以上に短期間で多くのグループをデビューさせていますよね。そんな中、独自のコンセプトを見つけなければならないというプレッシャーはありますか?
すべてのK-POPアーティストにとっては暗黙の了解ですが、この業界は非常に競争が激しいです。さまざまなコンセプトのグループが次々と誕生し、状況が目まぐるしく変化していることを、誰もが心の奥底で分かっているでしょう。K-POP業界は、他の音楽業界と比べても非常に速いペースで変化しており、あらゆることを常に把握しておかなければなりません。
しかし、K-POPアーティストは皆それぞれ異なるので、「自分のやりたいことをやればいい」と言われることも多いです。こうした状況で、「プレッシャーを感じていない」と言えば嘘になります。
常に以前と違うもの、異なるコンセプトの作品を作り続けることに関して、僕たちは自信を持っています。メンバーやHYBEのスタッフ、一緒に仕事をするチーム全員で一丸となり、何か新しいものを作ろうと注力しているんです。これが僕たちENHYPENとチームの核になっています。そして今回のアルバムでは、間違いなくそれを実現できたと思います。
――もっと詳しく教えていただけますか?
ENHYPENは、ギリギリまでコンセプトを発表しないことが多いんです。このように、コンセプトが完全に固まる前に曲を発表するアーティストは、K-POP業界では非常に珍しいと思います。というのも、ギリギリまでコンセプトを伏せておき、皆さんを驚かせたいんです。発表直前まで髪色を伏せていたこともありました。あれはかなりK-POP業界らしい出来事でしたね。
しかし、今回のアルバムの収録曲はどれもすばらしかったので、「これは隠しておけない」と思ったんです。アルバムをリリースする時は、いつもタイトル曲かB面の曲が注目を集めます。しかし、僕たちはその状況に満足していませんでした。ENHYPENの楽曲はどれもすばらしいですし、曲ごとに違った魅力がありますから。
それを見てほしかったのですが、さすがにMVを作る時間はなかったので、曲ごとに「コンセプトとストーリー性を持つショートフィルム」を作ることにしました。今回のプロモーション方法は僕自身も気に入っており、ファンの皆さんもかなりワクワクしたと思います。
――K-POP業界の構造上、今では多くのグループが年に2枚のアルバムをリリースするようになりました。この事実をどう感じていますか?オフシーズンがより大切になったのでしょうか?それとももう慣れましたか?
1枚のアルバムをリリースするまでには、多くの時間と労力がかかります。ですから、他のK-POPアーティストたちがなぜこんなに次々とアルバムを出せるのか、不思議で仕方ありません。僕たちメンバーとスタッフも、このことについてよく話し合います。
しかし、K-POPアーティストたちには休みが少なすぎると思います。アルバムのプロモーション中はもちろん忙しいですし、それが終われば次のアルバムの制作に取り掛かり、ツアーを回ることもあるので、ほとんど休みがありません。
とはいえ、忙しさにはすぐに慣れますし、楽しいですよ。僕たちも多忙ですが、その合間の休日を大切に過ごしています。ファンをはじめとする多くの人が僕たちに期待を寄せてくれているので、一生懸命働かなければなりません。これはちょうど良いプレッシャーになっていて、モチベーションを維持するのに役立っています。

――ジェイクさん自身は「計画的だ」とおっしゃっていましたが、普段は非常に忙しいスケジュールをこなしていますよね。そんな毎日の中で、どのように自分自身をケアしていますか?
まず思い浮かぶのは、誰かと話をすることですね。K-POPアイドルの置かれる環境は一般の方とは大きく異なり、普通の生活を送ることは難しいです。そこで、他のK-POPアーティストや、先輩たちと話すことが大切だと感じています。同じ経験を持つアーティスト同士で気持ちを共有し、人生に関するアドバイスをもらったり、共感し合ったりすることが大切だと思います。
しかし正直に言うと、僕はあまり知り合いがいません(笑)。特に仲が良いのは、Stray Kidsのフィリックスやクリス(バンチャン)です。彼らは長くこの業界にいて、僕の気持ちを本当によく理解してくれます。僕も彼らも忙しいのでなかなか会う時間が取れませんが、会った時はいろいろな話をします。彼らは僕に共感してくれて、役立つアドバイスもくれます。それが、さまざまなことを乗り越える力になっています。
どの仕事にも言えることですが、僕たちは仕事を楽しまなければなりません。僕もメンバーも全員、楽しんでこの仕事をしています。アルバムをリリースするまでには、数ヶ月から半年間かけてレコーディングやMV撮影に取り組みます。その時期は大変ですが、ファンの前でパフォーマンスすることが本当に楽しいので、乗り越えるモチベーションになっています。「ファンの前でこの曲を歌うんだ」と考えるだけで、大変な数カ月間を乗り越えられるんです。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。
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