【THRJ独占インタビュー】『SHOGUN 将軍』日本人キャストが語るハリウッド作品制作の裏側とは?
国内外で注目の集まる『SHOGUN 将軍』がついに先月ディズニー公式動画配信サービスDisney+(ディズニープラス)「スター」にて独占配信開始となった。
真田広之がハリウッド初主演、プロデューサーを務める本作は、ディズニーが持つ製作会社の一つ「FX」が制作した、壮大なスケールを誇る戦国スペクタクルドラマシリーズだ。
元となったのは、徳川家康をはじめとする歴史上の人物からインスパイアされたベストセラー小説、ジェームズ・クラベル著書『Shōgun 将軍』。
ザ・ハリウッド・リポーター・ジャパンは、全世界から既に大絶賛を受けるこの作品のインタビューシリーズを行う機会に恵まれた。
『SHOGUN 将軍』に出演した日本人俳優陣から伺った撮影の裏話や本作の魅力をご紹介する。
今回、インタビューに応じてくれたのは、以下の4名。
- 竹嶋康成(村次役)
- 倉悠貴(吉井長門役)
- 向里祐香(菊役)
- 祁答院雄貴(武丸役)
印象深い演技を披露し、世界に日本人の演技力を見せつけた俳優陣。
ハリウッド作品制作の経験や、印象深いエピソードなど、ザ・ハリウッド・リポーター・ジャパンに独占で語ってくれた。
以下では、それぞれが語ってくれたインタビュー内容をご紹介する。
竹嶋康成:村の世話役、キリシタンの村次
———— 『SHOGUN 将軍』での、ご自身の演じた役について教えてください。
村の世話役、村をまとめている漁師の「村次」という役を演じました。
彼はキリシタンで、“日の本”(ひのもと)にいるポルトガル人の神父から言葉を習っています。
なので、網代に漂流したジョン・ブラックソーン(コズモ・ジャーヴィス)と少し話せるんです。とても面白い役でした。
———— こういった役を演じるのは初めての経験だったのでしょうか?
それが、実は今から9年ほど前に、マーティン・スコセッシ監督の『沈黙-サイレンス』という映画で同じような役を演じたことがあったんです。
「貧しいキリシタンの漁師」という役でした。その時の役が、プロデューサーの方の記憶に残っていたのかもしれません。
『SHOGUN』にインする4年ほど前にオーディションを受けましたが、約3年半後に突然今回の村次役でと連絡をいただきました。
欧米の人々から見ると、私は“貧しい漁師顔”なんですよ、きっと… いや、泣いてませんよ! それはセールスポイントですもの、 泣くもんですかっ!(笑)
———— 印象に残っているエピソードはありますか?
第1話目では、冒頭でキリスト教の賛美歌を歌いながら歩くシーンがあります。
ここで歌っていた『サルヴェ・レジーナ』という曲、実は『沈黙-サイレンス』の撮影時にスコセッシ監督のアイデアで、礼拝のシーンで歌うためにみんなで覚えた曲だったんです。
しかし、残念ながら、時間の都合などで撮影することができませんでした。
その事が何年も、ずっと心に残っていたんです。
そうしたら、今回『SHOGUN』の台本を頂いて村次が賛美歌を歌うシーンがあると聞いて、すぐに「1曲ラテン語で歌える曲があります」と伝えました。
制作側の方々も良い案だと言ってくださって、約6年越しに『サルヴェ・レジーナ』を作中で歌うことが出来ました。
スコセッシ監督、観てくださるかなぁ…。 いつか観てくださったら嬉しいなぁ。
———— 作品制作における、日本とハリウッドの違いを教えてください。
今回の作品では事前準備の時間がたくさんありました。その中で、俳優の意見を取り入れてもらえる機会も多かったです。
逆に、台本にト書だけが書いてあり、1シーンその場でアドリブで台詞を作らなくてはならない事もありました。
その時は「とにかく、やって見せるので、言葉の修正などはお任せします」 と柔軟に対応する必要がありました。
これは、撮影の時間が沢山あり、プロフェッショナルのスタッフがついていてくださったから出来たクリエイティブなシーンの作り方だったと思います。
【竹嶋康成 プロフィール】村次役:竹嶋康成(たけしま やすなり)1968年、京都府京都市出身。映画、ドラマ、舞台と多岐わたって活躍。海外にも活動の場を広げ、世界的有名監督マーティン・スコセッシ作品『沈黙-サイレンス』(2017)などにも出演。
倉悠貴:吉井虎永(真田広之)の息子、吉井長門役
———— 『SHOGUN 将軍』での、ご自身の演じた役について教えてください。
真田広之さん演じる吉井虎永の息子、吉井長門という役です。
長門は、自分の存在意義を示したいと思っている若い武将です。
———— ハリウッド作品の撮影を経験してみていかがでしたか?
この作品の撮影のためバンクーバーで10ヶ月間、長期にわたって生活していました。
その10ヶ月間、生活費や家賃が必要無かったということ自体も、新しい経験でした。
撮影時にはカメラが多すぎてどこから撮られているのかわからなかったり、見たこともないくらい大きい屋根を設置して、雨の中での撮影であったりと、日本ではなかなか出来ないことだと思いました。
10ヶ月もみんなで一緒にいたので、密度の高い作品になっていると思います。
———— 今後、ハリウッドの作品への出演予定や希望などはございますか?
機会があればやりたいですが、難しいことだとも存じています。
今までどおり、日本でのお仕事をしっかりやりつつ、英語も少しずつ勉強しています。
———— 本作の見どころはズバリ?
真田さんがプロデューサーとして携わっていて、日本の時代劇をより史実に近く、間違いのないように制作しています。
日本の時代劇としても、全く新しいものとなっています。
僕としては初めての時代劇への出演だったので、至らない点も沢山あるとは思います。
ですが、自分の人生にとって本当に大切な作品となりました。
また、吉井長門は印象に残る役だと思うので、最後まで楽しんで見ていただけたら嬉しいです。
【倉悠貴 プロフィール】吉井長門役:倉悠貴(くら ゆうき)1999年生まれ。大阪府出身。俳優・モデル。2020年には『夏、至るところ』で映画初出演にして主演に抜擢。NHK連続テレビ小説『おちょやん』への出演で注目を集める。俳優業5年目にして『SHOGUN 将軍』でハリウッドデビュー。業界も大注目の俳優。
向里祐香:日本随一の遊女、菊
———— 『SHOGUN 将軍』での、ご自身の演じた役について教えてください。
菊は日本随一の遊女です。
女性らしく、しなやかで、妖艶、その中に強さも持っている女性です。
2日間、10時間以上かけて、マネージャーと何度もオーディションテープを撮り直しました。
その中でやっと、これだ!と思えるものを提出したのですが、オーディションテープを見たショーランナー、プロデューサー、監督が全員一致で配役してくださいました。
———— ハリウッドでの撮影で驚いたことや、新鮮だったことなどはありますか?
役者に対する、心身のケアの手厚さに驚きました。
例えば、2日連続で撮影の際は何時間開けないとセットに入れないというルールがあって休息を取る時間が確保されていたり、ハラスメントなどがあった場合に匿名でメッセージを送れるシステムがあったりと、働きやすい環境作りが徹底されていました。
特に私は菊という遊女の役だったので、センシティブなシーンもありました。
ですので、日本でも徐々に導入しようとしている、インティマシー・コーディネーター(性的描写において俳優の尊厳を守る役割)の方達も現場にいました。
シーンごとに監督やインティマシーの方を含めて会議をし、撮影に取り組みました。
———— 今後、海外作品やハリウッド作品などへの出演予定・願望はありますか?
去年、韓国の釜山国際映画祭で、俳優として初めて個人の賞(フェイス・オブ・アジア賞)をいただくことができました。
日本はもちろん、ハリウッドや韓国、色々な場所でお仕事ができたら嬉しいです。
韓国語はそれなりに話せますが、英語も勉強中です!
———— 共演者や制作陣との撮影で、印象に残っているエピソードはありますか?
真田広之さんは主演だけでなくプロデューサーとしても参加されています。
真田さんは、自身の撮影が無い日や、撮影が終わった後もセットに来ていました。
菊が最初に登場するシーンでは打掛(一番上に羽織る着物)を綺麗に見せたいということで、真田さん自らが私の着物の裾を持ってくださって…真田さんにこんなことさせていいのかなって思いました(笑)
真田さんは本当に優しくて、素敵な方でした。
【向里裕香 プロフィール】菊役:向里祐香(こうり ゆうか)1990年生まれ。東京都出身。日本アカデミー賞優秀作品賞・脚本賞受賞作品『福田村事件』出演他、映画・ドラマ・CMと多岐に渡り活躍。2023年には釜山国際映画祭2023 アジア・スター・アワード「フェイス・オブ・アジア」賞を受賞。
祁答院雄貴:樫木藪重(浅野忠信)の小姓、武丸
————まず初めに、簡単な自己紹介をお願いします。
祁答院(けどういん)雄貴と申します。変わった名前をしておりますが本名です。
ご先祖様は戦国時代の武将で、更に辿ると「鳴くよウグイス平安京」で有名な桓武天皇に繋がっております。
俳優として日本で10年ほど舞台を中心に活動し、その後は文化庁の『新進芸術家海外研修制度』というもので、カナダに来て俳優の研修をしました。
現在は、カナダと日本を中心に、映画だったり、舞台だったり、いろんな仕事をしています。
———— 『SHOGUN 将軍』での、ご自身の演じた役について教えてください。
浅野忠信さん演じる樫木薮重が最も信頼を置く小姓「武丸」という役を演じました。
常に薮重の隣にいて、薮重の話を聞いたり、秘密のメッセージを届けたり、時には深い秘密を共有したりと、とにかくずっと浅野さんのそばにいました。
———— 作品制作における、日本とハリウッドの違いを教えてください。
やはり、予算が大きく違うことでしょうか。
予算も、撮影期間にも余裕があって、制作陣もキャストも、エキストラの方々もみんな和気藹々と会話をしていました。
日本だと、やはり撮影時間も短いのであまり話を出来ずにテキパキと進めてしまうこともあります。
ですが、今回の『SHOGUN 将軍』の撮影では、主演の真田広之さんを初め、役どころや役職といったものを気にせず、みんなが気さくで話しやすい、素晴らしい環境でした。
———— 本作の見どころはズバリ?
当時の日本の姿を忠実に再現するよう、プロデューサーの真田広之さんやジャスティン・マークスさんが細部までこだわっているということです。
例えば着物の着方だったり、所作だったり、細かい部分を日本からスペシャリストを呼んで正しく表現しているので、着目してほしいですね。
制作陣の方々が熱を持って作り上げているというのが、スタッフにもキャストにも伝わって全体のモチベーションになっていました。
チーム全体の情熱を楽しんでもらえたらと思います。
【祁答院雄貴 プロフィール】武丸役:祁答院雄貴(けどういん ゆうき)神奈川県出身。『プール・サイド・ストーリー』にて初主演後、舞台を中心に活躍。文化庁新進芸術家海外研修制度でカナダにて1年間の研修を終え、現在は国内外で活動している。2022年カナダ/トロント オルタナティブ映画祭ベスト脚本家賞受賞。
記事:The Hollywood Reporter Japan 山口京香 / Kai Yamaguchi
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