『フォールアウト』レビュー:新旧ファンが楽しめる終末ドラマ

『フォールアウト』写真: COURTESY OF PRIME VIDEO
『フォールアウト』写真: COURTESY OF PRIME VIDEO
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ジョナサン・ノーラン&リサ・ジョイ(『ウエストワールド』)が放つ新作ドラマ『フォールアウト』(Amazon Prime Videoで配信中)は、同名のゲームシリーズを実写化した作品だ。

一方で、ジェニーヴァ・ロバートソン=ドウォレットらショーランナーは、既存の物語を脚色するのではなく、同じ世界観の中で新たな登場人物と物語を構築した。よって、長年のファンと初心者もほぼ同じ土俵で楽しめるようになっている。

本作の舞台は、かつてロサンゼルスと呼ばれていた焼け野原の世界。約200年前に文明を破壊した核攻撃を生き延びるため、人々は地下シェルター“Vault”で生活していた。主人公のルーシー(エラ・パーネル)は、Vaultで育った若き女性だ。

理想主義者のルーシーに対し、マ・ジューン(デイル・ディッキー)ら地上世界の生存者たちは、「Vaultなんて、燃えゆく世界からを逃げるために金持ちが作った穴に過ぎない」とあざ笑う。

作品自体は、マ・ジューンのシニシズムに寄り添っており、ダークで滑稽な出来事がグロテスクさを強調しながら描かれている。

本作は、良くも悪くも脱線が多い。最もワクワクするときは、奇妙な新世界を探検し、多様なキャラクターに出会う楽しさを捉えている。雰囲気を捉えるのには優れている一方で、緊張感が欠如しており、目的地に辿り着くまで8時間かかってしまうのだ。

また、キャラクターの描写もニュアンスに乏しい。特に、主人公のひとりである兵士のマキシマス(アーロン・モーテン)は、バックグラウンドもスカスカで、曖昧な動機づけのため、ミステリアスというよりは未完成のキャラクターになっている。

結局のところ、ルーシー、グール(ウォルトン・ゴギンズ)、マキシマスの3人の道が交錯する物語となっているが、時には登場人物たち自身も目的地にたどり着く必要性を感じていないように見える。

劇中で、とあるキャラクターが「世界の終末を売るのは金になる」と指摘する。確かに、『THE LAST OF US』や『ツイステッド・メタル』など、“ポスト・アポカリプスを舞台にしたゲーム原作のドラマ”は、もはや独自のサブジャンルと言えるほどだ。

ただし、終末がこれほどまでに愛情を込めて描かれている限り、それを問題視するわけにはいかないだろう。

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※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。編集/和田 萌

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