『敵』で東京国際映画祭最優秀男優賞の長塚京三「自分の姿を見て初めて感動した」
第37回東京国際映画祭で東京グランプリ、最優秀監督賞、最優秀男優賞の3冠に輝いた『敵』のプレミア上映会が11日、東京・テアトル新宿で行われ、長塚京三、瀧内公美、河合優実、黒沢あすかと吉田大八監督が舞台挨拶に登壇した。
長塚は瀧内、吉田監督は河合、黒沢から祝福の花束を贈られた。長塚は「自分で言うのもおかしいですが、俳優を50年やってきて(スクリーンの)自分の姿を見て声を聞いて初めて感動した。主人公が同世代ということもあって、胸にくるものがあった」と自賛。吉田監督も、「東京近郊の小さな家で、皆でコツコツやっていた映画が、あんなに華やかな場所で褒めてもらえて思いも寄らない結果となった。映画にはこういう夢があるんですね」と感慨深げに話した。
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渡辺儀助、75歳。大学教授の職を辞して10年。愛妻にも先立たれ、余生を勘定しつつ、ひとり悠々自適の生活を営んでいる。料理にこだわり、晩酌を楽しみ、ときには酒場にも足を運ぶ。年下の友人とは疎遠になりつつあり、好意を寄せる昔の教え子、鷹司靖子はなかなかやって来ない。やがて脳髄に敵が宿る。恍惚の予感が彼を脅かす。春になればまた皆に逢えるだろう……。哀切の傑作長編小説。
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筒井康隆氏が1998年に発表した同名小説が原作。妻に先立たれ慎ましい生活を送る元大学教授が、「敵が来る」という不穏なメールに翻弄されていく寓話的な物語。長塚は、「コロナで活動が止まって、辞めることを余儀なくされると思っていた矢先のオファーだった。人生を閉じていく人の話なので、責任を果たさなければいけないと喜んでお受けした」と振り返った。
元教え子で長塚を惑わす役どころの瀧内は、吉田監督から原節子のイメージでと言われていたそうで「主人公の理想像を発現させなければいけなかった」と苦笑。それでも、「大先輩の立ち居振る舞い、居住まいは勉強になることしかなかった。長塚さんは紳士で素敵で、撮影最終日の前日はもう会えないのかと思うと涙が止まらなかった。豊かな時間でした」とうっとりした表情で語った。
河合も、「長塚さんの目、体からにじみ出るものを受けて、凄く集中力を使った。完成した作品を見て、主人公の表現にとても感動した」、長塚の妻役の黒沢は「感慨深い思いを抱きながら演じました」と称賛。長塚は照れながらも、「皆力のある女優さんなので、受け止めるのに一生懸命だった。受け止められたかどうかは分からないが、恵まれた環境でやらせていただいた。監督、ありがとう」と満足げだった。
『敵』は来年1月17日に全国で公開される。
取材/記事:The Hollywood Reporter 特派員 鈴木元
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