東京国際映画祭『敵』が日本映画19年ぶりグランプリ、監督賞、男優賞と合わせ3冠

受賞トロフィーを手にする『敵』の吉田大八監督、長塚京三=6日撮影、都内にて
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第37回東京国際映画祭のクロージングセレモニーが6日行われ、コンペティション部門で吉田大八監督の『敵』が東京グランプリ、最優秀監督賞、最優秀男優賞(長塚京三)の3部門を制した。日本映画のグランプリ獲得は「雪に願うこと」以来19年ぶり、主要3冠制覇は22年「理想郷」以来の快挙となった。

審査委員長のトニー・レオンが、「主人公が生きている上で苦悩する姿を、素晴らしいタッチで新鮮な表現をしていることに心を打たれた」と絶賛した『敵』。吉田監督は「自分がいい監督だという自信は持てないが、関わった皆のおかげでいい映画にはなったと思う。作品賞も頂けたので、胸を張って皆で喜べる。東京はいい所ですね」と喜びをかみしめた。

(左から)橋本愛、エニェディ・イルディコー監督、トニー・レオン、吉田大八監督、長塚京三、ジョニー・トー、キアラ・マストロヤンニ=6日撮影、都内にて
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渡辺儀助、75歳。大学教授の職を辞して10年。愛妻にも先立たれ、余生を勘定しつつ、ひとり悠々自適の生活を営んでいる。料理にこだわり、晩酌を楽しみ、ときには酒場にも足を運ぶ。年下の友人とは疎遠になりつつあり、好意を寄せる昔の教え子、鷹司靖子はなかなかやって来ない。やがて脳髄に敵が宿る。恍惚の予感が彼を脅かす。春になればまた皆に逢えるだろう……。哀切の傑作長編小説。


筒井康隆氏の同名小説を原作に、仏文学の大学教授の職を辞しストイックな生活を送る男が、パソコンに送られてきた「敵がやって来る」という不穏なメールに追い詰められていく物語。吉田監督は、2014年『紙の月』でも宮沢りえに最優秀女優賞をもたらしており、「俳優の賞が物凄くうれしい。僕は、映画は俳優を見に行くものだと思っているから。そういう意味では、自分の思いを一つ達成した気持ちが強い」と、長塚の受賞を喜んだ。

その長塚は、「1日の撮影を終えるのに精いっぱいで、こういう事態になるとは想像もしていなかった。ちょっとビックリして、まごまごしています」と落ち着かない様子。それでも、「ぼちぼち引退かなと思っていた矢先だったので、奥さんはがっかりするでしょうけれど、もうちょっとこの世界でやってみようかなという気持ちになっています」と意欲を新たにした。

『敵』は、来年1月17日に全国で公開される。

第37回東京国際映画祭の受賞者=6日撮影、都内にて

第37回東京国際映画祭の受賞結果は以下の通り。

・コンペティション部門

東京グランプリ:『敵』

審査委員特別賞:『アディオス・アミーゴ』

最優秀監督賞:吉田大八『敵』

最優秀女優賞:アナマリア・ヴェルトロメイ『トラフィック』

最優秀男優賞:長塚京三『敵』

最優秀芸術貢献賞:『わが友アンドレ』

観客賞:『小さな私』

・アジアの未来

作品賞:『昼のアポロン、夜のアテネ』

取材/記事:The Hollywood Reporter 特派員 鈴木元

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