【ボディホラー映画10選】身体の変容が生む独自の恐怖…失神者が続出した衝撃作『RAW』ほか

※本ページはプロモーションが含まれています。記事で紹介した商品を購入すると売上の一部が THE HOLLYWOOD REPORTER JAPANに還元されることがあります
今年のアカデミー賞で、作品賞を含む5部門にノミネートされたフランスのコラリー・ファルジャ監督作『サブスタンス』が、5月16日に公開される。
デミ・ムーア主演の同作では、年齢を理由にテレビ番組をクビになった元人気セレブのエリザベスが、社会が求める若々しい肉体を取り戻すため、違法な薬物に手を出す。その結果、エリザベスの背骨が裂け、若くて美しい肉体を持つスー(マーガレット・クアリー)が這い出してくる。
新作『サブスタンス』のように、身体の変容を描いたボディホラーはここ10年の間、映画界におけるトレンドとして、ヨーロッパの才能を中心に優れた作品が続々と登場している。特に、女性主人公の身体的変化を通して内面的な葛藤や社会的抑圧からの解放を描く“フェミニスト・ボディホラー”も多く見受けられるようになった。
ファルジャ監督は、「女性という存在そのものが、ボディホラーの無限の泉です。今、より多くの女性監督がこのジャンルに挑戦できるようになったことで、その扉は完全に開かれました」と語っている。今年の賞レースを賑わせた『サブスタンス』に続き、今後も世界中の映画製作者の手によって多様なボディホラー作品が生み出されていくだろう。
以下、「2010〜20年代のボディホラー映画10選」(製作年順)
■AMAZONプライム会員なら、送料無料はもちろん、対象作品全部見放題!AMAZON MUSIC PRIMEもフォトストレージも利用可能!
※本ページの情報は、2025年2月時点のものです。最新の配信状況は各サイトにてご確認ください。
1.『RAW〜少女のめざめ〜』(2016)
■抑えきれない肉への渇望…青春カニバリズムホラー
ベジタリアン生活を強いる親元を離れ、姉と同じ大学で新生活を送ることになったジュスティーヌ(ギャランス・マリリエ)。ジュスティーヌの通う獣医学部では、深夜に新入生への「通過儀礼」が行われており、その一環として彼女は生肉を食べさせられる。それからジュスティーヌは、自分の髪の毛を食べるなどの異常な行動を取り始め、肉への飽くなき食欲に駆られていく―――。
『サブスタンス』のコラリー・ファルジャと並び、今最も注目されている仏女性監督ジュリア・デュクルノー。彼女の長編デビュー作『RAW』は、トロント映画祭での上映時に失神者が続出したことでも大きな話題を呼んだ。その触れ込みが示すように、獣医学部の過激な洗礼、カニバリズムなど生々しくショッキングな描写はあるが、驚愕の真実が明かされるラストにヒヤリ。
◆『RAW〜少女のめざめ〜』はU-nEXTで配信中!(2025年2月現在)
2.『ブルー・マインド』(2017)
■16歳を目前に突如現れた異変…スイス発の衝撃作
親の仕事の都合で引っ越してきた15歳の転校生ミア(ルナ・ヴェドラー)は、同級生のジアンナ(ゾーイ・パスティル・ホルトアイゼン)を中心とした不良グループと関わるようになる。万引きなどに手を染め、自信をつけたミアは内向的な性格から解放されていく。しかしある日、衝動的にペットの金魚を貪り食ったことをきっかけに、ミアの身体に原因不明のアザなど様々な異変が起きる―――。
子どもから大人へと成長するさまを描く“カミングオブエイジ”物語に、ボディホラーのツイストを効かせた異色作。静かなトーンでミアの突然変異を追っていくが、ボディホラー特有の生々しい痛みの描写にも抜かりない。やがて明らかになるミアの衝撃の正体、そして訪れる結末には一抹の寂しさとともに爽やかな解放感が同居する。
3.『テルマ』(2017)
■抑圧からの解放…“新感覚”の超能力ドラマ
信心深く厳格な両親から離れ、オスロの大学で新生活をはじめたテルマ(エイリ・ハーボー)は突然、図書室で激しい発作に襲われる。その後、大学生活で自由を謳歌するテルマは、アンニャ(カヤ・ウィルキンズ)と恋に落ちるが罪の意識に苛まれてしまう。その間にも発作は悪化していき、やがてテルマは自身のトラウマと突如覚醒した超能力の原因を辿るため、父と車椅子生活を送る母が暮らす実家へと向かう―――。
2022年に『わたしは最悪。』がオスカー脚本賞にノミネートされるなど、国際的な評価も獲得している北欧の気鋭ヨアキム・トリアー。監督は、『テルマ』で「ボディホラーへの新たな解釈に挑戦したかった」と語る。超能力の覚醒を派手な演出なしで淡々と捉え、コントロール不能な状態に陥った時に誰しもが抱える不安や焦りをじっくりと描く。ラブストーリーとしても機能しているが、すべてを理解した後に残る余韻には心が波立つだろう。
◆『テルマ』はU-nEXTで配信中!(2025年2月現在)
4.『Swallow/スワロウ』(2019)
■“異食症”の主人公を描く、自己受容の寓話
裕福な家系の夫と結婚し、豪邸で一見誰もが羨む生活を手に入れたハンター(ヘイリー・ベネット)。しかし普段は、一歩も外へ出ることがなく、家を完ぺきに保つために家事に追われている。さらに、夫やその家族の前で“理想の妻”を演じることを余儀なくされ、ストレスを募らせていくが妊娠が発覚。そしてある日、ガラス玉をふと口にしたことで、ハンターはこれまでに味わったことのない自信を感じ、異物を飲み込むという行為が段々とエスカレートしていく。
95分の短い上映時間で、画びょう、電池など生命の危機に関わる異物をも飲み込んでしまうハンターの姿を心理スリラー的に描いているが、第3幕では思わぬ展開に転がっていく。果たして、ハンターが最後に飲み込んだものとは―――。エキセントリックな設定を通して、個人のトラウマや葛藤に真正面から向き合った秀逸な自己受容の寓話となっている。
◆『Swallow/スワロウ』はU-nEXTで配信中!(2025年2月現在)
5.『セイント・モード/狂信』(2019)
■“見えない存在”への狂信…究極のサイコロジカル・ホラー
信心深く孤独なモード(モーフィッド・クラーク)は、悪性リンパ腫を患う元ダンサーのアマンダ(ジェニファー・イーリー)の家で住み込み看護師として働き始める。アマンダの魂を救済することを神から与えられた使命だと信じて疑わないモードは、やがてアマンダの私生活をもコントロールしていく。
周囲の反応を気にも留めず、ひたすら神を狂信するモード。劇中、神の存在はモードの身体に“痛み”という形で現れる。さらなる高みを目指し、自ら肉体を傷つけていくが、そのたびにトラウマを抱えたモードの精神は解放へと向かう。段々と揺らいでいく現実と妄想の境界線の果てに訪れるラストシーンは、ハッピーエンドともバッドエンドとも受け取ることができる。
◆『セイント・モード/狂信』はU-nEXTで配信中!(2025年2月現在)
6.『TITANE/チタン』(2021)
■破壊と創造の行く末…衝撃のパルムドール受賞作
幼少期の事故により、頭にチタンプレートが埋め込まれたダンサーのアレクシア(アガト・ルセル)はある日、執拗なファンの男を殺害してしまう。逃亡を余儀なくされた彼女は、10年前に行方不明になった青年アドリアンになりすます。やがて息子が帰って来たと信じてやまないアドリアンの父ヴァンサン(ヴァンサン・ランドン)との間に奇妙な絆が生まれ、共同生活を送ることになる―――。
『RAW~少女のめざめ~』のJ・デュクルノー監督による長編2作目。オープニングの圧巻のダンスシーンは、一気に観る者の心を鷲掴みにする。その後は、アレクシアと孤独なヴァンサンの魂の繋がりを非常に丁寧に描いていく。別人に転生し、人の命を容赦なく奪う“破壊者”から新たな命を宿した“創造者”となったアレクシアが、最終的にたどり着く肉体からの解放が生むカタルシスは素晴らしい。
◆『TITANE/チタン』はU-nEXTで配信中!(2025年2月現在)
7.『フレッシュ』(2022)
■出会った魅力的な男の正体とは…最狂のロマンティック・ホラー
マッチングアプリで恋人探しに奔走しているが、中々うまくいかないノア(デイジー・エドガー=ジョーンズ)。ある日、スーパーで魅力的なスティーヴ(セバスチャン・スタン)と出会い、瞬く間に恋に落ちていく。そしてノアは、親友モリー(ジョニカ・T・ギッブス)の警告にもかかわらず、スティーヴと小旅行に出かける。しかし、スティーヴの正体が明らかになったとき、事態が急転していくことになる―――。
ノアとスティーヴの出会いが描かれる序盤は、純粋なラブストーリーだ。しかし本作は、巧妙な仕掛けによって全く違う顔を見せ、その後は緊張感たっぷりの怒涛の展開へと一気に引き込まれていく。ホラーという形を取り、映画的なエンタメ性を損なうことなく、ミソジニーや覇権的男性性などの社会的なジェンダー問題に鋭く切り込んだ作品となっている。
8.『ハッチング −孵化−』(2022)
■卵から孵化したものとは…フィンランド製の家族ホラー
体操教室に通う12歳のティンヤは、“幸せな家庭生活”の様子を収めたビデオブログを運営するインフルエンサーの母親、父親、弟の4人家族。家の近くの森で死にかけている鳥を見つけたティンヤは、そばに落ちていた卵を拾い、自分の部屋に持ち帰る。急速に発達した卵から奇妙な生き物が誕生し、ティンヤは家族にその存在を隠そうとするが―――。
ティンヤが拾ってきた卵から孵化したものは、想像の斜め上をいく存在へと変貌していく。異質な存在が“理想の家族”の形にヒビを入れ、惨劇へと繋がっていくさまは目を背けたくなる一方で、ティンヤにとっては自己中心的な母親をはじめとする息の詰まりそうな家族からの解放にも感じられる。意表をつくラストも、様々な解釈を生みそうだ。
◆『ハッチング ー孵化ー』はU-nEXTで配信中!(2025年2月現在)
9.『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』(2022)
■鬼才クローネンバーグが描く、痛覚を失った近未来
人間が痛みの感覚を失った近未来。体内に新たな臓器を創出することができる芸術家ソール(ヴィゴ・モーテンセン)は、助手カプリース(レア・セドゥ)とともに公開手術で臓器を取り出すというパフォーマンスを行っている。やがて、2人の動向を探る「臓器登録所」の調査員ティムリン(クリステン・スチュワート)や、ソールを利用して次なる人間の進化を暴こうとする謎の集団が現れる―――。
“ボディホラー界の先駆者”デヴィッド・クローネンバーグは、奇抜で本能的な設定を通して人間の内側に深く潜り込み、“肉体の進化”を極めて理性的な視点で捉えている。黒衣で夜の街を彷徨う、神出鬼没でミステリアスな主人公に扮するモーテンセンの繊細な演技は必見。ラストに待ち受けるのは残酷な死か、それとも心の平穏に満ちた生なのか?
◆『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』はU-nEXTで配信中!(2025年2月現在)
10.『シック・オブ・マイセルフ』(2022)
■承認欲求の怪物…SNSに依存する現代人へ贈る風刺ホラー
ノルウェーの新鋭監督、クリストファー・ボルグリによる刺激的な本作は、強烈な承認欲求に駆られているシグネ(クリスティン・クヤトゥ・ソープ)の物語。アーティストの恋人トーマス(エイリック・セザー)がスポットライトを浴びる姿に嫉妬した彼女は自分への注目を取り戻すために違法薬物を摂取し、激しい副作用に悩まされる―――。
自らの身を削りながら人々の注目を渇望するシグネの姿は、肉体的にも精神的にも痛々しい。しかし本作には彼女以外にも、盗品を利用して“アート”を生み出す自己陶酔型のトーマス、多様性を謳ってマイノリティを搾取するモデル事務所の社長など、日常生活に潜む怪物たちが登場する。もはや異常なまでの承認欲求は、社会全体に広がりつつある病なのかもしれない。
◆『シック・オブ・マイセルフ』はU-nEXTで配信中!(2025年2月現在)
***
記事/和田 萌
■Amazonプライム会員なら、送料無料はもちろん、対象作品全部見放題!Amazon Music Primeもフォトストレージも利用可能!
【関連記事】
- ホラー映画『サブスタンス』予告解禁 ― デミ・ムーア主演、今年のカンヌ受賞作
- ホラー界の気鋭映画監督が選ぶ、“最恐”の名シーン6選 ― あの日本作品も!
- 2024年のホラー映画ランキング:『エイリアン:ロムルス』、『テリファー3』…日本公開予定の新作も!
- 怖すぎる!実在の事件をベースにしたホラー映画10選
- A24のおすすめ最新映画5選【2025年公開】ニコール・キッドマン主演『ベイビーガール』ほか