米SAG賞(2025)を徹底分析:ティモシー・シャラメがサプライズ受賞、オスカーへの影響は…?

映画『教皇選挙』のジョン・リスゴー、レイフ・ファインズ、セルジオ・カステリット、イザベラ・ロッセリーニ 写真:Matt Winkelmeyer/Getty Images
映画『教皇選挙』のジョン・リスゴー、レイフ・ファインズ、セルジオ・カステリット、イザベラ・ロッセリーニ 写真:Matt Winkelmeyer/Getty Images
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■第97回アカデミー賞まで1週間:主要部門は依然として混戦

第97回アカデミー賞まで、ちょうど1週間となった。しかし例年とは異なり、作品賞、主演男優賞、主演女優賞の3つの主要部門は、依然として予測が難しい状況にある。その大きな要因の一つが、現地時間23日に開催された第31回SAG(全米映画俳優組合)賞である。この30年間、SAG賞は演技部門のオスカー受賞者や、作品賞におけるサプライズ受賞の多くも予測してきた。そして今年のSAG賞では、驚くべき結果がいくつも見られた。

■SAG賞の影響

レイフ・ファインズ、『教皇選挙』写真:Focus Features/Courtesy Everett Collection
レイフ・ファインズ、『教皇選挙』写真:Focus Features/Courtesy Everett Collection

まず注意すべきは、アカデミー会員の最終投票は先週18日に締め切られているため、今年はLA山火事の影響で遅延したSAG賞の結果がオスカーの投票には直接影響しないという点である。しかし、それでもオスカーの結果を占うヒントにはなり得る。

SAG-AFTRAに所属する約16万人の会員は、最高賞のキャスト賞にエドワード・ベルガー監督の『教皇選挙』を選出した。これは、『ウィキッド ふたりの魔女』が受賞すると予想されていた中での番狂わせであった。『ウィキッド』は、歴史的に本部門で評価される傾向にある大衆向け作品であり、多様なキャストを擁していた。

一方、『教皇選挙』は監督組合賞(DGA)、脚本家組合賞(WGA)、批評家協会賞(CCA)など主要な賞を総なめにしていた『ANORA アノーラ』をも抑えた。

■作品賞の可能性

『ANORA アノーラ』 写真:Cannes Film Festival
マイキー・マディソン、『ANORA アノーラ』 写真: Cannes Film Festival

『教皇選挙』は、オスカーにおいて相反する2つの指標を持つ。(a)監督賞へのノミネートを逃したが、(b)英国アカデミー賞(BAFTA)とSAG賞の主要部門で受賞した。過去に同様の状況で作品賞を獲得した唯一の映画は、2012年の『アルゴ』である。

『教皇選挙』のBAFTA受賞は、英国映画であるため「地元有利」と見ることもできる。しかし、SAG賞のキャスト賞受賞は見過ごせない。この賞が作品賞の受賞を確実に示すわけではないが、過去にサプライズ受賞を果たした作品(『恋におちたシェイクスピア』(1998)、『クラッシュ』(2005)、『スポットライト 世紀のスクープ』(2015)、『パラサイト 半地下の家族』(2019)、『コーダ あいのうた』(2021))は、いずれもSAG賞のキャスト賞を獲得していた。

2010年以降、作品賞を決定するアカデミーの投票方式は「優先順位付き投票」となっている。この方式を採用している主要な前哨戦はPGA(プロデューサー組合賞)のみであり、そこでは『ANORA』が受賞した。しかし、筆者が複数のアカデミー会員と話した印象では、『教皇選挙』は『ANORA』よりも極端な評価が分かれにくい作品であり、優先順位付き投票の仕組みによって有利に働く可能性がある。また、アカデミー会員の国際的な増加も影響するかもしれない。

結論として、今年の作品賞の予想には確信を持てる人は誰もいないだろう。

■主演男優賞争い

ティモシー・シャラメ、『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』写真: Macall Polay/Courtesy of Searchlight
ティモシー・シャラメ、『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』写真: Macall Polay/Courtesy of Searchlight

SAG賞は、主演男優賞レースにも波乱をもたらした。それまでの主要な前哨戦(ゴールデングローブ賞批評家協会賞、BAFTA賞)をすべて制していた『ブルータリスト』のエイドリアン・ブロディではなく、『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』のティモシー・シャラメが選ばれた。

ブロディの作品はオスカーでシャラメの作品よりも2部門多くノミネートされているが、シャラメの作品はより多くの人に届きやすい大衆向けブロックバスター映画である。一方で、ブロディは22年前にすでにオスカーを受賞しているのに対し、シャラメはまだ受賞歴がない。また、シャラメが受賞すれば史上最年少の主演男優賞受賞記録を更新することになる(現在の最年少記録保持者はブロディ自身)。

■主演女優賞の行方

デミ・ムーア、『The Substance(原題)』写真: Cannes Film Festival
デミ・ムーア、『サブスタンス』写真: Cannes Film Festival

SAG賞では、『サブスタンス』のデミ・ムーア(ゴールデングローブ賞・批評家協会賞受賞)と『ANORA』のマイキー・マディソン(BAFTA賞&インディペンデント・スピリット賞受賞)が対決した。

もし25歳のマディソンがSAG賞を獲得していれば、彼女の勢いが加速したと考えられただろう。しかし、受賞したのは62歳のベテラン、ムーアであった。ムーアにとって本賞は、ジャーナリストが選ぶ賞ではなく、業界関係者による支持を示す最初の明確な指標となる。

とはいえ、ここにはもう一つの未知の要素がある。『アイム・スティル・ヒア』のフェルナンダ・トーレスの存在だ。彼女の作品はシーズン後半に台頭し、多くの投票者が最終的に彼女を選んだという声も聞こえてくる。過去にBAFTA賞・SAG賞のノミネートなしで主演女優賞を獲得した例はないが、彼女が候補から外れるとは言い切れない。

■各アワードを総なめ…助演部門の展望

『リアル・ペイン~心の旅~』のキーラン・カルキン、『エミリア・ペレス』のゾーイ・サルダナ 写真:Searchlight Pictures / Courtesy Everett Collection; Shanna Besson/PAGE 114 – WHY NOT PRODUCTIONS – PATHÉ FILMS – FRANCE 2 CINÉMA © 2024

助演男優賞・助演女優賞については、SAG賞は他の主要な前哨戦と同様に『リアル・ペイン~心の旅~』のキーラン・カルキンと『エミリア・ペレス』のゾーイ・サルダナを支持した。この2人がオスカーを逃すとすれば、カルキンの作品が作品賞にノミネートされていない点や、『エミリア・ペレス』の主演女優候補カルラ・ソフィア・ガスコンが過去の発言で炎上した影響があるかもしれない。

※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。編集/和田 萌

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