ヴェネツィア国際映画祭、濱口竜介「悪は存在しない」がコンペ、塚本晋也「ほかげ」がオリゾンティに選出

第80回ヴェネツィア国際映画祭(8月30日~9月9日)のコンペティション部門に、濱口竜介監督の「悪は存在しない」が選出された。  本作は、第94回アカデミー賞国際長編映画賞などを受賞した2021年「ドライブ・マイ・カー」でタッグを組んだ濱口監督と音楽の石橋英子による共同企画。2年ほど前、石橋がライブパフォーマンス用の映像制作を依頼し濱口監督も快諾したが、デモ的な⾳楽や映像をやり取りする過程で「ミュージックビデオのようなものは⾃分には撮れない、普段やっているように映画として演出しないと⽯橋さんの⾳楽に太⼑打ちできない」という思いが募り、映画としての脚本を書き下ろした。

今年3月に長野と東京で撮影。ストーリーの詳細は明かされていないが、「出演者⼀⼈一人の声や在りようが、私が想像していたものをはるかに越えて非常に強い手応えを感じました。結果として、⽯橋さんの美しい劇伴とともに1本の独⽴した映画として完成しました」と説明。石橋も、「素晴らしい作品になることは最初からわかっていてもなお、脚本や映像を共有していただくにつれ、これは凄いことになってきたぞと驚きながら⾳楽を作りました」と振り返っている。  濱口監督にとってヴェネツィアのコンペは初めてで、「この奇妙な成り⽴ちの映画の魅⼒を受け⽌めて、選出してくれたことを⼼からうれしく思っています。キャスト、スタッフの素晴らしい仕事にも感謝します」とコメント。上映に合わせ濱口監督、石橋に加え出演の⼤美賀均、⻄川玲、⼩坂⻯⼠、渋⾕采郁らが現地入りする予定。日本では24年に公開される。

©2023 SHINYA TSUKAMOTO/KAIJYU THEATER

また、革新的な作品が選ばれ第2コンペとも呼ばれるオリソンティ部門に、塚本晋也監督の「ほかげ」の出品も決まった。  戦争で孤独と喪失を味わいながらも、偶然出会った戦災孤児との交流に希望を見いだしていく女性を描く作品で、趣里が主演。森山未來、塚尾桜雅らが共演している。

塚本監督は、02年「六月の蛇」が前身のコントロコレンテ部門で審査員特別大賞、11年「KOTOKO」でオリゾンティ賞を受賞。今回の選出に「こうしてまた、最古の映画祭に呼んでいただけること、たいへん光栄に思います。肩の力を抜いて楽しく参加させていただきたいと思います。終戦後の片隅に生きる人々の祈りが、ヴェネツィチアの皆さんにも届くことを願っています」と期待した。  上映には塚本監督、森山、塚尾が参加予定。趣里はNHK朝のテレビ小説「ブギウギ」の撮影のため渡航は難しい状況だが、「戦後の日本を舞台にしたこの作品がヴェネツィアの皆様の目にどう映るのでしょうか。今からとても楽しみです」と喜びのコメントを寄せた。日本では11月25日に公開される。

取材/記事:The Hollywood Reporter 特派員 鈴⽊ 元

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