“SDGs”を実践する世界の映画・ドラマ製作スタジオ Amazon、HBOやソニー・ピクチャーズの取り組みとは?

写真: ©HBO/SARAH SHATZ

この記事は、米The Hollywood Reporterの“2023 Sustainability Issue”の一部です。その他の特集記事はこちら

HBO グリーン

HBOグリーンの目標は、カーボンフットプリントを減らし、すべての製作現場で持続可能な取り組みを実践すること。HBOやHBO Maxの作品(『ユーフォリア/EUPHORIA』『メディア王 ~華麗なる一族~』『ホワイト・ロータス/諸事情だらけのリゾートホテル』他)は、海外撮影の際もHBOグリーンのルールを遵守している。

プログラムには、主に6つのカテゴリー(燃料・エネルギー・廃棄物・原料・コミュニティー・オンスクリーン)が存在。例えば、使い捨てプラスチックの使用中止や堆肥化、燃料は排出量を抑えるといった取り組みを実践している。ワーナー・ブラザース・ディスカバリーのVPで、HBOのサステナビリティを指揮するハイディ・キンドバーグ氏は「作品が排出する56%は燃料に由来しています。これは業界平均値と同じです」と語った。

燃料由来の炭素排出を減少するため、可能な限り商用電源を活用するようにしているという。

さらに、キンドバーグ氏によると『ギルデッド・エイジ -ニューヨーク黄金時代-』をニューヨークで撮影した時は、実際に電柱といった電源供給ラインを設置したそうだ。「ジェネレーターに依存していたシーズン1とは違い、シーズン2では電力のおかげで排出をなくすことができました」と語った。

非営利組織“Cool Effect”らの金銭的援助も受けながら、2022年12月時点でHBOは2021~22年の間に製作した作品群の96%で2層構造の排出量を相殺することに成功した。キンドバーグ氏は、HBOグリーンの取り組みについて「昨年製作した半分以上の作品は、バッテリー電源を利用しました」と付け加えた。

一方で、SDGsの推進は撮影の裏側だけにとどまらない。「作品が行動の手本を示すように製作しています。例えば、キャラクターが水筒を持っていたり、ヴィーガンのレストランに行ったり。さらに、電気自動車を運転したり、公共交通機関を利用するキャラクターもいます」とキンドバーグ氏は言う。「現代が舞台の作品でこれらの行動を描けば、当たり前の光景として映ります。そして、視聴者が行動を実践すれば、現実の世界で炭素排出量を減らせるかもしれません」

ソニー・ピクチャーズ

ソニー スタジオ 写真: ©SONY/RAY ARIAS

2010年、ソニーグループはサステナビリティ・気候計画“ロード・トゥ・ゼロ”を発表。ソニーのサステナビリティVP、ジョン・レゴー氏は「我々は科学に基づく目標を掲げている。2050年までにフットプリントをゼロに。そして2040年までにネットゼロ、2030年にはカーボンニュートラルを目指す」と語った。主に、生物多様性・化学物質・資源保護・炭素と気候の4つにフォーカスしている。

2012年より製作現場での持続化可能な取り組みを始めたソニー・ピクチャーズ。その結果、レゴー氏によると75%の作品が業界におけるサステナビリティ基準を満たしたという。また、炭素を排出する活動を抑えることで、社内の基準だけなく、外部の非営利環境団体が提示する基準に向けても努力しているそうだ。

低炭素のソリューションとして、一見些細なことも実践。ドライクリーニングバッグの使用、リサイクルといった行動が、将来的に大きな影響を与えるのだ。

さらに、ソニー・ピクチャーズの取り組みは映画のセットだけにとどまらない。ジョージア州で『スパイダーマン: ノー・ウェイ・ホーム』を撮影した際は、非営利組織と協力して植樹を行った。また、エリア内の生物を守るため、外来種の駆除にも携わった。「植樹は我々の取り組みのシンボルです。撮影エリアのコミュニティーにポジティブな影響を与えられます」とレゴー氏はコメントした。

Amazonスタジオ

Moxionのバッテリー電源を入れるスタッフ 写真: ©AMAZON STUDIOS

脱炭素をはかるスタートアップ企業に対し、20億ドルもの出資金“Climate Pledge Fund”を抱えるAmazonスタジオ。現在、可搬型の電源装置を開発する会社Moxionとコラボレーション中だ。ファンドの主任を務めるニック・エリス氏は、スタジオのSDGsに一役買ってくれるユニークな機会だと捉えているそう。

スタジオとMoxionの出会いは、18か月前。旧来のディーゼル・ジェネレーターをMoxionのクリーンエネルギーバッテリーに切り替えたことがきっかけだった。ここ6か月の間は“理想的な実験台”として、撮影現場で新しいバッテリーを取り入れ始めた。

エリス氏は「Moxionの魅力は、多彩なソリューションです。現場において、バックアップ電源や一時的な電力として、あらゆる用途に適用できます。そして、Moxionのゼロ・エミッションデータには目を見張るものがありました」と語った。

製作チームによると、クリーンバッテリーはディーゼルよりも静かだという。「ディーゼルは、出来るだけモニターから遠ざけなければならなかった。それに、充電可能なバッテリーは地面に大量のケーブルが這うこともないので、より安全な環境を提供してくれる」とエリス氏は付け加えた。さらに、Moxionのゼロエミッション・バッテリーは、1年間に道路を走る32台分の車に相当する排出量を減少させる効果があるそうだ。

今年から2024年に向けて、スタジオは国内に加え海外の撮影現場でもクリーンバッテリーを配置する予定だ。異なる環境条件での利用について、エリス氏は「まずは南カリフォルニアやLAでスタートしました。今後は北東部など、より寒い環境下でバッテリーを試していきます。その上で、プロダクションの必要条件をすべて満たすように取り組みたい」と語った。

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