東京国際映画祭・黒澤明賞の三宅唱&フー・ティエンユー監督が喜びの会見
第37回東京国際映画祭で黒澤明賞を受賞した三宅唱監督と台湾のフー・ティエンユー監督が5日、都内のホテルで会見した。
「世界のクロサワ」の名を冠し、今後の映画界を担う若手クリエイターに贈られる賞。2人は同時受賞を称え合い、三宅監督は「個人で座っているが、自分1人では映画は撮れない。これまで一緒に働いた全てのスタッフ、俳優の素晴らしい仕事を評価していただいた」と謙そん。フー監督も、「10数年前に東京国際映画祭の企画マーケットに参加した時はまだ映画監督になりたてで、このような賞を頂けるとは夢にも思わなかった。大変光栄で、今もまだ信じられない気持ちです」と喜びをかみしめた。
2022年『ケイコ 目を澄ませて』などが評価された三宅監督。初めてふれた黒澤作品は「小学6年か中学1年の時にレンタルビデオで借りてきた『天国と地獄』。その翌年に『踊る大捜査線 THE MOVIE』が公開されて友達と見に行ったら、見たことのあるシーンがあった。その時点で『天国と地獄』を見ているのは僕だけで、講釈をたれた恥ずかしい思い出があります」と苦笑した。
さらに、「映画を撮り始めた頃は既に撮影所システムはなく、別の時代のものという意識もあったが、何本か撮って改めて見直すと、各部署の丁寧な仕事がより作品を高めていると分かりたくさんの刺激を受けた」と述懐。今後に向けては、「黒澤監督もジャンルを超えてさまざまな作品を撮られた。僕も1作1作違うもの、知らない題材に挑戦していきたい」と意欲を見せた。
一方のフー監督は、日本で公開中の『本日公休』などが評価された。大学の映画サークルでほとんどの黒澤作品を見ており、「一番心に残ったのは『生きる』。ごく平凡な市井の人をしっかりと描いていて心を打たれた。普通に描くことが難しいということも分かった」と話した。
黒澤監督の「蝦蟇の油:自伝のようなもの」も読んでおり、「とても面白くて、私も映画監督になれるかもしれないと思わせてくれた」と感謝。現在は、新作の心理サスペンスの脚本を執筆中で、「非常につらいが、そんな時はYouTubeにアップされている黒澤監督のインタビューを見て励みにしています。今までの私の作品とは全く違うものになりますが、私なりの視点で独特の雰囲気の作品になればと思っている」と手応えのある様子だった。
取材/記事:The Hollywood Reporter 特派員 鈴木元
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