【インタビュー】アニメスタジオ「Futaku Studios」創設者のマイク・フクナガに単独インタビュー! 「アニメは文化の架け橋」 アニメ×ファッション×音楽の融合で日本アニメの魂を世界へ

マイク・フクナガ
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アニメスタジオFutaku Studiosの創設者でディレクターであるマイク・フクナガに単独インタビューを実施した。

米テキサス州ダラスを拠点に活動するブティックアニメーションスタジオ、Futaku Studios。アメリカのブランドに向けて日本のアニメスタイルを取り入れた映像を制作し、同時に日本のアニメ関連IPを活用したコラボレーションを実現している注目のスタジオだ。

創設者でありディレクターを務めるのは、日系二世のクリエイター、マイク・フクナガ。FunimationやBioworldで培った10年以上のキャリアを経て、2020年に自身のスタジオを立ち上げた。アニメ、ファッション、音楽を横断する独自の感性とネットワークを強みに、数々のコラボレーションを成功させている。

これまでに「Ice Shaker × ドラゴンボールZ」や、NBA選手チャーリー・ビラヌエバと組んだ脱毛症啓発プロジェクトなど、多彩なコラボレーションを展開。その一つひとつに「アニメ愛」と「社会性」を融合させてきた。

今回、ハリウッドリポーター・ジャパンはマイク・フクナガに単独インタビューを実施。キャリアの背景から、Futaku Studios立ち上げの経緯、これからのアニメ業界の展望まで、じっくりと語ってもらった。

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ーーまずは自己紹介をお願いします。

マイク・フクナガ:私の名前はマイク・フクナガです。Futaku Studiosの創設者でディレクターを務めています。私たちはテキサス州ダラスを拠点とするブティックアニメーションスタジオで、アメリカのブランド向けに日本のアニメスタイルに影響を受けたアニメーションを制作しています。また、アメリカ企業が日本のアニメ関連IP(知的財産)をライセンスするお手伝いもしています。スタジオは2020年に立ち上げました。ちょうどコロナ禍に初めて日本を訪れた直後で、その体験が非常に大きな転機となり、自分のすべてを注ぎ込み、ユニークな何かを作ろうと決意したんです。

アニメとファッションの融合に触れたキャリアの原点

ーーFutaku Studiosを始める前のご経歴を教えてください。

マイク・フクナガ:アメリカのアニメ配給・制作会社Funimationで10年以上働いていました。父も同じ会社にいて、業界の知識を学ぶには最高の場所でした。その後、Funimationと密接な関係にあるBioworldという会社に移り、ブランドAtsukoの立ち上げに関わりました。また、Dumbgoodはすでに確立されていたブランドでしたが、私が在籍していた時期に彼らのアニメコラボを市場に届ける役割を担いました。こうしたAtsukoやDumbgoodといったアニメからインスパイアされたストリートウェアブランドに関わった経験が、アニメとファッション、ポップカルチャーの融合についての私の考え方を形成してくれたんです。

BIOWORLD ZELDA ANORAK
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ATSUKO EVANGELION ANORAK
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コロナ禍が生んだチャンス、Futaku Studios誕生

ーー独立してスタジオを立ち上げようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

マイク・フクナガ:コロナでファッションや製造業界がほぼ停止してしまったんです。中国、インド、パキスタンの工場すべてが止まりました。同時に、実写コンテンツの制作もストップ。そんな中、ブランドから「アニメーションで何かできないか?」という声が上がってきました。私はすでにアニメーターのチームを持っていたので、「今がチャンスだ」と感じたんです。そこからFutaku Studiosを立ち上げました。大きな決断でしたが、明確なニーズが見えた瞬間でもありました。

ーー最初の頃の課題は何でしたか。

マイク・フクナガ:当然ながら、ゼロからスタジオを作るのは簡単ではありません。アニメーションの制作フローやチーム体制、スケジュールなどすべてを整える必要がありました。アニメスタイルの制作とアメリカの企業文化とのギャップもあって、調整には苦労しました。でも、改良を重ねて、今では安定したプロセスを持つようになりました。それでも毎日が学びの連続です。

父から受け継いだ業界の影響と、音楽プロジェクトで培った感性

ーーお父様は会社設立に関わっていましたか。

マイク・フクナガ:直接は関わっていませんが、彼の影響は大きいです。ずっとアニメ業界にいるので、自然とその影響を受けて育ちました。また、私はもともと音楽やファッションにも関心がありました。ブランドの仕事を始める前は、ミュージシャンたちと一緒にツアー用のクリエイティブプロジェクトに携わっていました。ツアー自体のビジュアルをデザインしたわけではなく、ツアーをプロモートするための活動でした。こうした音楽とアニメのクリエイティブな融合が、結果としてFutakuのDNAとなりました。

「Futaku」という名前に込めた思い

ーー「Futaku」という名前の由来を教えてください。

マイク・フクナガ:自分の苗字「Fukunaga」と「オタク(Otaku)」を組み合わせた造語です。つまり、自分のルーツと、我々が向き合っているコミュニティの両方を反映しているんです。アニメ業界は、世界的にも一種のファミリーのようなものだと感じていて、子どもの頃から知っている人たちが今も現場にいます。ニューヨーク、ロサンゼルス、サンディエゴ、ダラスのイベントではよく顔なじみの人たちに会います。その深い繋がりを名前に込めたかったんです。

ーーどのようなライセンス関係を築いていますか。

マイク・フクナガ:私たちは幅広く取り組んでいます。アメリカでは、CrunchyrollやVIZ Mediaが『NARUTO』や『進撃の巨人』など主要なアニメIPを扱っています。私たちは独立しているので、両方の会社と協業できるんです。大事なのは、誰にコンタクトを取るべきかを把握して、コラボレーションが関わる全員にとってプラスになるように提案することなんです。

『ドラゴンボールZ』×Ice Shaker コラボ秘話

ーーIce Shakerと『ドラゴンボールZ』のコラボについて教えてください。

マイク・フクナガ: Ice Shakerは、アメリカで人気の起業家プレゼン番組として『Shark Tank(シャーク・タンク)』に登場して人気が出ました。その放送直後に「悟空のデザインがほしい」「ベジータのはないの?」といったリクエストが殺到したんです。そこで、彼らは共通の知り合いを通じて私たちに連絡をくれました。COOのクリス・グロンコウスキーから直接「正式なコラボをやりたい」と声をかけられ、『ドラゴンボールZ』とのコラボが実現しました。悟空、ベジータ、悟飯、ピッコロ、魔人ブウ、シェンロンといったキャラクターデザインのボトルを展開し、とても好評でした。すでにアメリカで販売されていますが、日本からも直接注文すれば手に入ります。

Ice Shakerと『ドラゴンボールZ』のコラボ
Ice Shakerと『ドラゴンボールZ』のコラボ

脱毛症啓発をアニメで届けるチャリティープロジェクト

ーーNBA選手のチャーリー・ビラヌエバとのチャリティーコラボについて教えてください。

マイク・フクナガ:あれは本当にすばらしく、忘れられない経験でした。脱毛症の啓発を目的としたものでした。チャーリー・ビラヌエバはこの病気の大きな支援者です。これは自己免疫疾患で、免疫システムが毛根を攻撃してしまうことで脱毛が起こります。命に関わるものではありませんが、精神的な影響は非常に大きいです。チャーリーはそれを受け入れて、人の目を気にせず、むしろ力強く可視化する存在に変えていきました。彼は身長211センチもある大きな体格ですが、それでもいじめや偏見に直面してきました。だからこそ、それを「カッコいい」こと、「力強いこと」としてポジティブに転換しようとしたのです。

彼の子どもたちはアニメが大好きで、『X-MEN』の大ファンです。ある日、「マイク、脱毛症啓発のためのアニメを作ろう。髪を失うことがむしろ力を得ることになるような作品を」と話してくれました。脱毛症の種類ごとに違ったスーパーパワーが与えられるような設定で、例えば超人的な力やスピード、現実を曲げる能力など。それを持つ子どもたちが主人公で、チャーリーがメンター役として彼らに力の使い方を教えるというストーリーを作りました。アニメを通して、啓発と勇気づけを同時に実現することができたんです。

ーーこのプロジェクトはチャリティーとして展開されたのですか

マイク・フクナガ:はい。チャーリーとダラスの優れた壁画アーティストであるドーラ・レイノサがサインした、世界に一つだけのバスケットボールを制作しました。ドーラは、マクドナルドや世界最古のナショナルチームによるサッカーの大陸選手権大会のコパ・アメリカとも仕事をしてきた方で、私がFutakuを立ち上げた頃にアーティストとして活動を始めた仲間でもあります。その彼女がペイントしたボールで、認知を広げ、売り上げを脱毛症関連のチャリティへと寄付しました。本当に誇らしいプロジェクトです。

CHARITY ALOPECIANS MIKE FUKUNAGA
CHARITY ALOPECIANS MIKE FUKUNAGA
CHARITY ALOPECIANS DORA REYNOSA
CHARITY ALOPECIANS DORA REYNOSA


アメリカと日本をつなぐ「文化の架け橋」

ーー日本とアメリカをつなぐ“文化の架け橋”的な存在と感じますか。

マイク・フクナガ:はい、それが私たちの使命のようなものです。私たちの仕事は、アメリカのアニメファンのニーズに応えることです。彼らは「公式」で「高品質」な商品を求めています。だから日本のアーティストと直接つながって、できる限り本物を届けようとしています。多くのプロジェクトに日本のアニメーターが関わっていて、“アニメの魂”をそのままに、アメリカ側のアイデアを加える。それは本当の意味でのコラボレーションです。


ーーアニメ業界の今後をどう見ていますか。

マイク・フクナガ:消費者の目がどんどん肥えてきています。クオリティや本物志向を重視するようになっていて、単にロゴがプリントされたTシャツでは満足できない。誇りを持って着られるもの、飾れるものを求めているんです。そして、クリエイター側も、ミュージシャンやアスリートたちが「自分のアニメを作りたい」と動き始めています。それが現実になる日は近いと思います。私も実際、何人かのセレブとそんな話をしてきました。ミーガン・ジー・スタリオンなんかもそうです。彼女はMVで日本語の歌詞を使っていたり、アニメ愛が本物です。

【動画】Chris Brown Animation FAME Collection

クリス・ブラウンとのコラボ
クリス・ブラウンとのコラボ
KISSとのコラボ
KISSのKISSのトミー・セイヤーとのコラボ


ーーアニメにおけるAIの活用についてどう考えていますか。

マイク・フクナガ:私はアイデアを可視化するためにAIを使っています。例えば頭の中にあるイメージを絵にできないとき、AIでラフなビジュアルを生成し、それをチームに渡して高めてもらう。最終制作で使うことや、アーティストの代わりに使うことはしません。あくまでクリエイティブの方向性を素早く共有するためのツールだと考えています。

KISSのトミー・セイヤーとのコラボ
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ーー最後に、伝えたいメッセージをお願いします。

マイク・フクナガ:一番やりがいを感じるのは、チームのメンバーが夢だったIPで仕事をしている姿を見たときです。『ドラゴンボールZ』、『ロボテック』、『カウボーイビバップ』……私たちが育ってきた作品ですよね。それに関わるコンテンツを今、自分たちで作っているなんて信じられないです。チームの中には「まさか自分がこんな仕事をできるとは」とおどろいている人もいます。そういう意味で、これは情熱の仕事なのです。単にコンテンツを作るだけではなく、アニメを愛する人々にとっての「思い出」を作っています。

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