『ストレンジャー・シングス』シーズン5の撮影で不思議な出来事が――ヴェクナ役ジェイミー・キャンベル・バウアーが舞台裏を語る
【※本記事には『ストレンジャー・シングス 未知の世界』シーズン5・第4章までの重要なネタバレが含まれます。】
Netflixの大ヒットシリーズ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』の最終章であるシーズン5の第1~4章が、ついに配信された。シーズン5では、ヴェクナ(演:ジェイミー・キャンベル・バウアー)が裏側の世界で長年温めてきた計画をついに実行に移す。その全貌はまだ明かされていないが、ヴェクナはホーキンスの子どもたちを次々と誘拐している。
しかし、連れ去られた子どもたちは、自分が怪物の巣窟にいるとは気づいていない。彼らの目には、そこはまるで『X-MEN』シリーズに登場する学園のように、すばらしい場所として映るのだ。そしてヴェクナは、生徒たちを導く優しい教授のように振る舞う。
ヴェクナは「ヘンリー・クリール」「001(ワン)」などさまざまな名を持つが、新たに「ミスター・ワッツィット」の名が加わった。バウアーによれば、これらの名前は「彼の異なる側面を表している」という。
さらに、ヴェクナのアイデンティティとの向き合い方について、バウアーは次のように語っている。「“ミスター・ワッツィット”は、彼が『こうありたい』と願う理想の姿です。しかし、それは実在する人間というより、記憶の中の幻影に近いでしょう。演技であり、彼が知る限りの『人を安心させる要素』をかき集めたものです」
バウアーは米『ハリウッド・リポーター』の取材に応じ、最終シーズンまで悪役を演じた心境や、撮影中に起きた不思議な出来事、舞台『ストレンジャー・シングス:ザ・ファースト・シャドウ』から得た気づきなどを語った。
俳優としての挑戦と恐怖――撮影中に不思議な出来事も
――ヴェクナは圧倒的な悪役であると同時に、成長できなかった子どもでもあります。俳優として、この無邪気な役を演じるのは難しかったのではないでしょうか?
そうですね。シーズン4への出演オファーをもらった時、とんでもなく大きな役を引き受けたのだと実感しました。ヴェクナがまだ人間性を保っていた子ども時代の環境や生い立ちを、長い時間をかけて考察したんです。ヴェクナという存在は「純粋な憎悪の塊」という設定で、その部分は自然と演じることができました。
そしてシーズン5では突然、まったく新しい解釈と表現が求められて、また大きな挑戦を背負うことになりました。俳優として、非常に手応えのある役でした。演技で真実を表現しなければならない場面は多々あります。今回の真実とは、ホリー・ウィーラー(演:ネル・フィッシャー)が何らかの形で利用されているのに、ヴェクナがそれを隠しているということです。
子どもの目の前で嘘をつかなければならないのは、本当に恐ろしいですね。シーズン5の今後の展開を観ていただければ、その意味がさらに分かるはずです。あのシーンを演じるためには、大きな覚悟が必要でした。俳優にしかわからない感覚かもしれませんが、それほど大きな挑戦だったのです。

――撮影が終わっても、ヴェクナの役を引きずってしまうことはありますか?
ありますね。ヴェクナは僕の心に残り続けており、常に考えさせられます。頭の片隅でずっと彼が動いている感じです。
実は、撮影中にもゾッとするような不思議な出来事がいくつもありました。例えば、野良猫が突然僕のところに来るようになって、そのまま一緒に暮らしているんです。もし猫がヴェクナを選んだなら、彼はいい人に違いありませんね(笑)。
それから、家のドアの外に蛇が現れたこともありました。実際にこういう奇妙なことが起きましたし、個人的にも、あの暗い精神状態に身を置いているとどうしても影響を受けてしまいます。実は、ヴェクナはとても孤独なキャラクターなのです。
偶然といえば、最終話の台本読み合わせの時にコロナに感染してしまい、他のキャストは会議室で読み合わせしているところに、僕だけオンラインで参加しました。まるで何千kmも離れた場所に隔てられ、裏側の世界にいる感覚でしたね。
事前情報がほぼない中での役作り
――ダファー兄弟は、最終シーズンのヴェクナの事前情報をどれくらい教えてくれましたか?
シーズン4の時は、おそらくキャスト中で最も多くの情報を教えてもらっていたと思います。しかし、シーズン5ではそれほど教えてもらえず、寂しくもありました。本当はもっと事前に情報を知りたかったですね。今回は撮影を進める中で、ダファー兄弟に質問を送り続けていました。
アメリカから飛行機に乗る直前でも、台本の読み合わせが終わったところでもないのに、「これは一体どういうことですか?どうしても知りたいんです」と電話で質問をしたこともあります。そうしたら彼らは「分かった」と言ってくれて、最終的には情報を教えてくれました。とはいえ、基本的には他のみんなと同じように、僕も手探り状態でした。

――第4章の終盤、軍事基地に歩いていくシーンで、ヴェクナは圧倒的な自信を持っているように見えました。一方で演じるバウアーさんは、ヴェクナについて疑問を抱えていたのではないでしょうか?
それについては、ある種、偶然の一致と言えます。というのも、シーズン5の撮影で起きたさまざまなことが、僕をその境地に導いてくれたからです。抱えていた恐怖や不安、数々の疑問がすべて消え、「これだ」と思う瞬間が確かにあったのです。そういう時は身を委ね、自分のしていることが正しいと信じるしかありません。
――シーズン5の中で、そういうことが起こった具体例はありますか?
そうですね。先ほど挙げていただいた第4章の終盤で、僕はずっと「これは一体何だ?何が起きているんだ?これはどこから来ているんだ?」と自問自答していました。
特に、ラストでウィル(演:ノア・シュナップ)と対峙するシーンを撮影する時、とても不思議なことが起きました。まるで自分を外側から客観視している感覚になったんです。自分が何をしているのか、鳥瞰して見渡せるような感覚でした。
――言うなれば、瞑想の後のような感覚ですか?私も瞑想後、似た感覚になったことがあります。
確かに瞑想後の感覚と似ていますが、撮影現場では安定した瞑想状態にはなりにくいため、明らかに異なります。ただ、どこか幻想的で、別世界にいるような感覚でした。
――「幻想的」とは興味深いですね。確かにあのシーンのヴェクナは、視聴者にとって悪夢そのものです。役に入り込むには、たとえ他人にとっては悪夢でも、自分は夢と現実の瀬戸際にいるような感覚が必要なのではありませんか?
まさにその通りです。あの最終局面で、僕にとって重要なのは、「ここで何を目指しているのか?何を達成しようとしているのか?どうすれば勝てるか?」といった「目的」でした。結局のところ、ヴェクナが目指しているのは勝つことだけですから。そして僕自身は、彼が何を望み、どのようにそれを達成するかを理解する必要がありました。
舞台版『ストレンジャー・シングス』を鑑賞して
――舞台版『ストレンジャー・シングス:ザ・ファースト・シャドウ』はご覧になりましたか?ヘンリー役を演じているルイス・マッカートニーとは何か話しましたか?
ロンドンでのプレビュー公演とブロードウェイ公演を計2回観ました。プレビュー公演は、ソニア・フリードマン氏がプロデュースを手がけていました。数年前に、今回と同じフェニックス・シアターでソニア氏と仕事をしたことがあり、劇場に入った時点で感情が高ぶっていました。

ソニア氏を見た瞬間に泣けてきて、幕が上がるとさらに涙が溢れました。休憩時間に外に立っていたら、プロデューサーのスティーブン・ダルドリー氏も近づいてきて「カーテンコールで舞台に上がって」と言われたんです。迷いましたが、強く勧められたので舞台に上がりました。あれはすばらしい体験でした。
その後、ルイス氏とも良い話ができました。後日、ブロードウェイで彼に会い、「調子はどうですか?大変なことになっていますね。どうかお体に気をつけて」と声をかけました。
――私も観ましたが、あの舞台の演技は本当に強烈でしたね。毎日あのパフォーマンスを続けるなんて想像できません。その経験を共有できるのは、おそらく世界でバウアーさんだけではないでしょうか?
僕にとっては、精神的な安定を保つのが最も大変でした。もちろん、長時間のメイクに耐えることや、自分の演技を整理すること、パフォーマンスを確実に発揮できるか確認することも大変でした。しかし、ルイスもこの舞台で毎日戦い続けています。彼は常に自分を追い込んでおり、かなり大きな負担でしょう。彼は若くて愛嬌のある人だから、心配になります。
ヘンリーという人物像を設計する時、僕は彼の子ども時代や、両親との関係について深く考えました。シーズン5・第4章では、彼の孤立感や抑圧感が明らかになります。僕はさらに踏み込み、母親と父親から受けた影響を考察したかったんです。
ごく短いシーンですが、母親がヘンリーを叩くところがあります。まさにその瞬間、「僕がずっと考えてきたこと、心に留めてきたことはこれだ」と思いました。あのシーンを見て、自分の考えていたことが確信に変わった気がします。
――ヴェクナは今どこにいるのでしょうか?プレスツアーを続けている現在も、バウアーさんの心の中にいますか? それとも、撮影終了と同時に消えてしまいましたか?
ヴェクナはもういません。今年は別の作品に携わる機会に恵まれ、それがヴェクナから解放されるきっかけになりました。クランクアップの日に撮ってもらった自分の写真を見たら、世界のすべての重荷から解放されたような顔をしていました。
『ストレンジャー・シングス 未知の世界』シーズン5は3部構成で配信される。Vol.1(第1~4章)はNetflixで配信中。Vol.2は2025年12月26日、Vol.3は2026年1月1日に配信される。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。
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