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【特別インタビュー】巨匠ジェームズ・キャメロンが語る、ミツバチの知られざるドラマと知性――『ミツバチのひみつ:自然界の小さなヒーロー』に宿る驚異と発見

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巨匠ジェームズ・キャメロンが語る、ミツバチの知られざるドラマと知性――『ミツバチのひみつ:自然界の小さなヒーロー』に宿る驚異と発見
ジェームズ・キャメロン(左)と、昆虫学者のサミー・ラムジー博士 ©National Geographic
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今回、ハリウッド・リポーター・ジャパンは「ナショナル ジオグラフィック」で4月5日(日)に放送される『ミツバチのひみつ:自然界の小さなヒーロー』で製作総指揮を務めた巨匠ジェームズ・キャメロンと、昆虫学者のサミー・ラムジー博士にオンラインでインタビューを実施した。

ジェームズ・キャメロンといえば、『タイタニック』や『アバター』シリーズで世界を魅了してきた映画監督として知られる一方、深海探査や自然科学への深い関心でも知られる存在だ。そんなジェームズ・キャメロンが今回関わったのが、「ナショナル ジオグラフィック」の新作ドキュメンタリー『ミツバチのひみつ:自然界の小さなヒーロー』だ。

『ミツバチのひみつ:自然界の小さなヒーロー』
『ミツバチのひみつ:自然界の小さなヒーロー』 © 2026 National Geographic Partners, LLC.

【動画】ミツバチのひみつ:自然界の小さなヒーロー – 予告編 | ナショジオ

ミツバチという身近でありながら、その実態がほとんど知られていない生き物たちの世界に、おどろくほど精緻な映像で迫った一作だ。本作では、巣の内部や単独性のハチたちの生態、さらにはこれまで記録されたことのない行動までが映し出される。そこにあるのは、“刺す虫”という単純なイメージではとても捉えきれない、複雑で知的で、時に人間社会を思わせるようなミツバチたちの姿だ。キャメロンと昆虫学者サミー・ラムジーは、撮影の舞台裏から、観察の重要性、ミツバチの知性、そして自然をどう語るべきかについて、それぞれの視点で語った。

ハリウッド・リポーター・ジャパンでは今回、ジェームズ・キャメロンとサミー・ラムジー博士にインタビューを実施した。驚異のマクロ撮影を支えた技術と工夫、制作を通して見えてきたミツバチの“文化”と社会性、そして“おどろき”を“保護”へとつなげていく本作のメッセージについて聞いた。小さな生命の中に広がる、想像をはるかに超えたドラマとは何か――その言葉をお届けする。

ミツバチの世界を撮るために必要だったこと

ーーージェームズにぜひ伺いたいのですが、この作品のカメラ技術は本当に驚異的でした。こうしたドキュメンタリーで物語を伝えるうえで、適切なレンズを見つけるために、どのくらい試行錯誤を重ねたのでしょうか。チームが成し遂げたことは本当にすばらしいと思います。

ジェームズ・キャメロン:私たちのカメラチームはマクロ撮影に非常に長けていて、何十年もの経験があります。ですから、カメラ技術そのものが大きく飛躍したというより、重要だったのは、巣の環境や、単独性のハチのためのトンネルのような環境をどう構築するか、つまり、どうやって彼らの世界に入り込むかという点でした。

私はその種の動物撮影の専門家ではありませんが、この分野には世界最高のスタッフがいます。大切なのは、彼らの行動を妨げず、彼らにとって自然な環境に見えるようにしながら、ある程度予測可能な形でカメラを入れることです。そうすることで、ハチや他の動物がレンズの前で自然な行動を見せてくれるわけです。

ただ、マクロ撮影では撮影範囲がごくわずかで、被写界深度も非常に浅い。これは常に大きな課題です。ですから、光学系そのもののブレークスルーというより、経験豊かなチームによる人間側の工夫と対応力が鍵だったと言えます。

『ミツバチのひみつ:自然界の小さなヒーロー』
『ミツバチのひみつ:自然界の小さなヒーロー』 ©National Geographic

“観察し続けること”が導いた新発見

ーーー「ナショナル ジオグラフィック」の時間や設備があったからこそ可能になった科学的な観察には、どのようなものがありましたか。さらに言えば、私たちは世界をどう観察し、意見を形成し、語るべきなのか、ということについてもメッセージがあるのでしょうか。

サミー・ラムジー:まさに科学の話ですね。科学研究では、忍耐強く観察するための時間や余裕が足りないことが少なくありません。しかし、最も驚くべき発見の多くは、まさにその「忍耐」から生まれます。

ジムが話していたように、カメラを巣の中に設置することはできても、そのままずっと放置することはできません。ハチたちがプロポリスやワックスで覆ってしまい、何も見えなくなってしまうからです。だからこそ、設置して、待って、見て、彼らが何をしているのかをじっくり観察し、うまくいくことを願わなければならない。けれど、それは科学の現場では本当に難しいことでもあります。

ただ、「ナショナル ジオグラフィック」のように十分なリソースと優秀なチームがある環境では、そうしたことが可能になります。しかも一緒に仕事をしているのは、その分野で世界トップクラスの人たちです。

たとえば先ほど話に出た、スズメバチのにおいを隠すために葉を使うハチの行動は、今回初めて記録されたものです。あれを実際に目にしたとき、私たちは本当に圧倒されました。何かしら対策を取るだろうとは思っていましたが、まさかあのような具体的な行動をするとは予想していませんでした。それは、彼らが単に一つのものを探して本能的に動いているだけではないことを示していたからです。「これが見つからなければ、代わりにこれを使おう」と考え、スズメバチから身を守る方法を工夫している。そこにはおどろくべき知性があります。

ただ、その背景にあるのはやはり忍耐です。私たちは何か特定のものを探しに行きますが、実際に何を見ることになるかはわかりません。だから、待ち、見て、じっくり掘り下げながら、時間がミツバチの驚くべき秘密を明らかにしてくれるのを待つ必要があるのです。

ジェームズ・キャメロン:率直に言えば、科学研究は本来あるべきほど十分な資金を得られていないことが多い。このように予算のしっかりしたシリーズで使えるようなリソースが、常にあるわけではありません。

サミー・ラムジー:ええ、『ミツバチのひみつ:自然界の小さなヒーロー』の予算は、私の普段の研究費よりはるかに大きいです!

ジェームズ・キャメロン:科学というのは脆いものですし、近年は研究資金もさらに不安定になっています。地政学的な話に深入りするつもりはありませんが、少なくともこの分野においては、メディアが科学を支えることができるのは確かです。

それは私の深海探査でも同じでした。私たちは週に100万ドル(約1.6億円)かかる船で海に出ますが、必ず研究者を同行させていました。そうすることで、彼らは通常なら得られない研究機会にアクセスできるからです。

サミー・ラムジー:それはすばらしい相乗効果ですね。ドキュメンタリーを作るという動機があるからこそ、科学者が通常では見られないものを見る機会を得られるわけです。

ジェームズ・キャメロン:自然史番組に予算を組むときには、確実におもしろく、カメラの前に現れてくれる題材も必要です。でも私はいつも、その先を目指したいと思っています。これだけの注目と高度な撮影技術を投入するのなら、何か新しい発見があるはずだと。つまり、人々がこれまで見たことのないものを見ることになる、ということです。

『ミツバチのひみつ:自然界の小さなヒーロー』
『ミツバチのひみつ:自然界の小さなヒーロー』 ©National Geographic

発見が物語を変えていく編集プロセス

ーーーこのシリーズのポストプロダクションについて教えてください。撮影素材を持ち帰り、そのおどろくべき映像を見て、チームとともに物語の脚本を作り上げていくプロセスはどのようなものだったのでしょうか。

ジェームズ・キャメロン:それは再帰的なプロセスです。最初に大まかな脚本を用意し、マクロ撮影やフィールド撮影の経験豊富なチームとともに現場に入る。言ってみれば、それは一種の「希望リスト」です。そして、適切な人材がそろっていれば、望んでいる結果や、度肝を抜くような映像を得ることができます。

ただ、新しい発見があると脚本も変わりますし、編集も変わります。最初の計画に沿って大まかに組み立てつつも、何か手がかりが見つかればそれを追い、新しい台詞や説明を書き加えなければならない。ナレーションや構成、説明の仕方は、ポストプロダクションの最後までかなり流動的です。

つまり、物語は制作の過程で少しずつ自らを明らかにしていくのです。これはどのドキュメンタリーにも言えることですが、この規模の自然史ドキュメンタリーでは特にそうです。自然が科学に対して少しずつ自らを明かしていくのと同じように、物語もまた制作の中で姿を現していく。両者は並行するプロセスなんです。

ジェームズ・キャメロンを動かす自然への好奇心

ーーー『アバター』や『タイタニック』、そして今回の『ミツバチのひみつ:自然界の小さなヒーロー』のように、あなたの作品には自然というテーマが強くあります。なぜ自然は、ストーリーテラーとしてのあなたにとってそれほど重要なのでしょうか。

ジェームズ・キャメロン:私はカナダで育ちました。郊外の住宅地でしたが、2ブロック先から森が始まり、それが何百マイルも続くような場所でした。幼い頃から自然に強い好奇心があり、野原や森で、昆虫やヘビやカエルやカメなど、手に入るものは何でも集めて観察していました。本を読み、解剖し、保存し、スケッチもしていた。いわば、ジュニア自然学者のような子どもでした。誰かにやれと言われたわけではなく、純粋な好奇心からです。そして、その好奇心こそが人生を通じて自分を動かしてきた原動力だと思っています。

映画の道に進む前、私は大学で天文学と物理学を学んでいました。好奇心こそ人間のスーパーパワーだと思っています。そして科学は、その自然な延長にあるものです。もちろん、私たちは科学の恩恵をテクノロジーという形で受けていますが、科学そのものが本当におどろくべきものでもある。サミーのような研究者には、心から敬意を抱いています。私の好奇心は広いものでしたが、彼のような研究者はより絞られた領域で深い専門性を築いている。それが科学のあり方でもあるのです。

“刺す虫”という印象を覆すミツバチの素顔

ーーー私はこの作品を見て、個人的にミツバチの大ファンになりました。でも多くの人は、刺すという理由でミツバチにネガティブな印象を持っていると思います。そのイメージをポジティブなものに変えてくれるようなエピソードがあるとしたら、どれでしょうか。

サミー・ラムジー:私がいちばん好きなのは、ミツバチがボールで遊ぶシーンです。彼らにはそんなことをする理由はありません。ただ純粋に楽しんでいるんです。

私たちは彼らに、食べ物を手に入れたり、生活に直接役立つことをする機会も与えました。ところが彼らは、ボールだらけの部屋で遊ぶことに夢中になる。つかみ、転がし、別のハチのところへ渡す。私はそういう話を聞いたことはありましたが、実際に見るのは初めてでした。そして実際に見ていると、本当に引き込まれてしまって、2時間ほど見続けてしまったんです。

私は、あのシーンが、彼らが私たちととてもよく似ていることを思い出させてくれると思っています。彼らも私たちと同じように「遊び」を必要としている。人間にとって遊びは、世界を学び、理解し、他者と関わるために大切なものです。ミツバチも同じように、おどろくべき形でそうしたことをしているのです。

ジェームズ・キャメロン:私は、刺すという行為もまた理解の仕方が大切だと思います。もしミツバチを理解し、共感するようになれば、その針は、家族を持ち、子どもを育て、危険な世界から守ろうとすることの自然な延長として見えてくるでしょう。昆虫の世界では自然界は非常に危険な場所で、捕食者も多い。私たちはたまたま、その防衛行動の十字砲火に巻き込まれることがあるだけです。だから、それだけでミツバチを判断するべきではないと思います。

サミー・ラムジー:さらに言えば、刺された経験の多くには誤認が関わっています。実際にはミツバチではなくスズメバチだったりするんです。でも私たちは見分けるのが苦手なので、何でもかんでも「ハチ」とひとくくりにしてしまう。

木にぶら下がったフットボールのような形のものを見て、私たちはよく「あれはハチの巣だ」と言いますが、あれはスズメバチの巣です。だから棒でつついたりしてはいけません。にもかかわらず、なぜかくまのプーさんはいつもああいう巣からハチミツを取っていますよね。つまり人は、黒と黄色の縞模様で、おしりが尖っているものは全部ミツバチだと思い込みがちなんです。

でもその誤認のせいで、非常に攻撃的なスズメバチと、もっとずっと穏やかなミツバチが同一視されてしまう。ツバチは一般に、一度刺すと死んでしまいます。だから、何度でも刺せるスズメバチより、はるかに刺したがらないのです。

ジェームズ・キャメロン(左)と、昆虫学者のサミー・ラムジー博士
ジェームズ・キャメロン(左)と、昆虫学者のサミー・ラムジー博士 ©National Geographic

制作を通して見えてきたミツバチの知性と文化

ーーーこの作品に取り組む中で、ミツバチについて新たに学んだことは何ですか。それは作品づくりに影響を与えましたか。

ジェームズ・キャメロン:私は作品の中に登場しているわけではありませんが、このシリーズには純粋な好奇心から関わっています。この『SECRETS OF』シリーズは、クジラやタコなど、自分では知っているつもりだった生き物についても、おどろくほど多くの発見を与えてくれました。

ミツバチについて私が多くを知っていたとは言いませんが、今回本当に多くのことを学びました。たとえば、ミツバチや他の多くのハチの種では、オスとメスで目の大きさが大きく異なることです。オスはたいてい一度交尾して、その後死にます。だからこそ、相手を見つけるための目が非常に大きい。メスの約2倍です。おそらく網膜の細胞数も多く、識別能力も高く、視覚処理に関わる神経も多いのだと思います。そういうことは知りませんでした。

ニュージーランドの私の農場には300の巣箱があり、健康効果でも知られるマヌカハニーを生産していますが、それでもミツバチ社会について知らなかったことは山ほどありました。特に興味深かったのは「ミツバチの文化」です。つまり、個体同士の直接的なコミュニケーションによって受け継がれていくものです。

以前の私は、ミツバチというのは、基本的には小さなルンバのように、比較的単純なプログラムが組み込まれて動いている存在だと思っていました。でも実際には、もちろん基本的な本能はあるにせよ、それだけではなく、学び、特定の行動を身につけ、それを見せられれば再現することもできる。私たちはそれを「文化」と呼びますよね。「ミツバチの文化」というのは、本当におどろくべき概念です。

これはほんの一例で、ほかにも学んだことはたくさんあります。私がナショナル ジオグラフィックの『ひみつ』シリーズに惹かれるのは、毎回必ず何かを学べるからです。向こうは私にお金を払ってくれますが、正直に言えば、こちらがお金を払ってでも関わりたいくらいですよ。

1種ではなくすべてのハチを守る視点

ーーーこのシリーズを通して、視聴者に何を持ち帰ってほしいですか。

サミー・ラムジー:私がこの作品から人々に持ち帰ってほしいのは、ミツバチたちが舞台裏で本当に懸命に働き、私たちの生態系全体を健全に保つ役割を果たしているということです。彼らは十分な注目を受けていませんし、十分に保護もされていません。

私たちが「ハチたちを救おう」と言うとき、実際には「特定の1種のハチを救おう」になってしまっていることが多いのです。つまり、箱の中で飼っている、私たちがもっともよく知る一種類だけを思い浮かべているんです。でも実際には、私たちがあまり知らない2万種ものハチがいます。そして、その知られていないハチたちにとって、よく知られた種は“炭鉱のカナリア”のような存在なんです。

このドキュメンタリーでは、地下やチューブの中など、さまざまな場所で暮らす彼らの秘密の生活を見せることができました。もしそれを見せられなければ、人々はその重要性を見過ごしてしまったかもしれません。だからこそ、この生き物たちは重要であり、おどろくべき存在なのだと知ってほしい。そして「特定の1種のハチを救おう」ではなく、もう一度「ハチたちを救おう」と、複数のハチたち全体を守る視点に戻ってほしいのです。

関連作品に通底する知性と母系社会のテーマ

ーーー自然が好きな人に向けて、この作品とあわせて見るのにおすすめの「ナショナル ジオグラフィック」作品や自然ドキュメンタリーはありますか。

ジェームズ・キャメロン:完全に自分本位な答えですが、他の『SECRETS OF』シリーズを見てください。クジラ、タコ、ペンギンを題材にした作品もあります。どれも題材は違いますが、同じくらい魅力的です。

共通テーマとして見てほしいのは、動物たちがそれぞれの環境にどう適応し、どのような知性を示しているか、ということです。知性という言葉は慎重に使うべきですが、私たちが通常「人間より下位の動物」と考えがちな存在にも、問題解決のための高次の処理が見られます。私たちは人間の特別さというレンズを通して世界を見がちですが、実際には文化や感情についても語ることができる。

私は、ミツバチにも感情のようなものがあると思っています。たとえばスズメバチに襲われる危険を察知し、その情報をもとに巣のためにすばやく防御行動を取る。そこには恐れや仲間への配慮があるでしょう。少数の個体がコロニー全体を守るために動くという意味で、それは利他的でもあります。そう考えると、私たちがかつて人間だけのものだと思っていたことが、実はそうではないと見えてくるのです。

サミー・ラムジー:私も他の『SECRETS OF』シリーズをぜひ見てほしいです。それと、この作品が多くの点で「メスの生物のすごさ」を強調していることにも注目してほしいですね。しかも、そのことはしばしば過小評価されがちです。

ミツバチの巣で働いているワーカーはすべてメスで、おどろくべき働きをしています。女王蜂は1日に2000個もの卵を産みますし、他の多くのハチ種では、単独の母親たちが一匹で子育てのすべてを担っています。関連作品を1本挙げるなら『Queens』をおすすめします。自然界において、メスの生物たちがいかに主導権を握り、おどろくべきことを成し遂げているかを描いた作品です。

ジェームズ・キャメロン:他の『SECRETS OF』シリーズでも、たとえばクジラやゾウなどで、メスの重要性がよくわかります。どちらも母系社会です。ミツバチの文化も同じく母系的です。人間も、もう少し母系社会的になったほうがいいのかもしれませんね。

科学的正確性と物語性、その繊細な境界線

ーーーこのようなドキュメンタリーを作るとき、科学的な正確さと、視聴者を引きつける物語性とのバランスをどのように取っているのでしょうか。

ジェームズ・キャメロン:それは非常に繊細なバランスであり、ひとつの規律でもあります。幸いなことに、「ナショナル ジオグラフィック」には125年以上の歴史があり、科学的ストーリーテリングに対する非常に厳格な姿勢があります。私はその哲学を全面的に共有しています。

センセーショナルにしたくなる誘惑はありますし、観察したことを擬人化して、人間の考え方や感じ方を動物に投影してしまいたくなることもあります。でも、そこには注意が必要です。一方で、画面に映っている動物たちは物語の主人公でもある。だからこそ、彼らが何に突き動かされ、何を恐れ、どんな課題に直面し、何を目指しているのかを理解したいと思うわけです。

今回のミツバチで言えば、彼らは協力して次の世代を育て、コロニーと共同体を守ろうとしている。そこには私たちが共感できる点が多くあります。だからこそ、観客が共感できるように物語を語りつつも、動物に人間の行動や感情を過剰に帰属させない。その線を守ることが重要なんです。彼らは私たちとはまったく異なる現実を生きているのですから。

サミー・ラムジー:もう一つ大切なのは、観客を信頼することです。ナレーターはたしかに起きていることの一部を説明しますが、手取り足取り導くわけではありません。ある方向を示し、その行動を見せる。そして観客自身が見て、「この昆虫がボールで遊んでいるのはおどろくべきことだ」「そこにはこういう意味があるのではないか」と考える余地を残している。私はそれがストーリーテリングの重要な部分だと思っています。

ジェームズ・キャメロン:私たちは科学者、研究者、サイエンスアドバイザーたちとも密接に連携して、結論を行き過ぎたものにしないよう努めています。たとえば深海で何かを見たとき、映画作家として物語を作るために自分なりの解釈を示すことはできます。でも、実際には別の説明があるかもしれないし、そもそもまだ十分なデータがないかもしれない。だから性急に結論を出してはいけないんです。

サミー・ラムジー:その通りです。私たちはグループチャットで常にやり取りをしていました。何かが見つかると、彼らが「サミー、これはこういうことだと思うんだけど正確かな」「脚本でこう言いたいんだけど合っているかな」と送ってくる。そこで私が科学的な観点から確認し、できるだけ明確で正確な形で伝えられるようにしていました。

“おどろき”から“保護”へとつながる本作のメッセージ

ーーーこの作品を見た人に、最終的に何を受け取ってほしいですか。それは警鐘なのか、賛歌なのか、それとも行動への呼びかけなのでしょうか。もし行動への呼びかけなら、普通の人には何ができるのでしょうか。

ジェームズ・キャメロン:このシリーズ全体、そして『ミツバチのひみつ:自然界の小さなヒーロー』が伝えようとしているのは、自然界に対する驚異の感覚です。私たちは、自分が愛しておらず、気にもかけていないものを評価したり、守ったりはしません。だからまずは、科学的でとっつきにくいものとしてではなく、理解しやすい形で自然を見せ、人々に気にかけてもらう必要があります。

私たちの第一の目的は、強い警告を発することではありません。ただ、シリーズが進むにつれて少しずつ重点は変わってきました。「これは何ておどろくべきものなんだ、だからこそ何て貴重なんだ、そして実はこれが危機に瀕している」という流れです。

その先にある「個人として何ができるか」について、作品の中で深く踏み込んでいるわけではありませんが、それは非常に重要な領域です。そして、その会話を始めるだけでなく、ナショナル ジオグラフィック全体としても答えを持っていることが大切だと思います。

サミー・ラムジー:ジムが強調しているように、私たちの目標はまず会話を始めることでした。人々に「すごい」と感じてもらうこと。そしてそのおどろきが、「これは何て貴重なんだ」という実感につながる。そこから自然と、「では私は何ができるのか」という問いが生まれます。

私たちは今、その問いへの答えを示そうとしています。人々に伝えているのは、あなたには大きな主体性があるということです。たとえば、たった1平方フィートでも花を植えられる場所があるなら、それだけで何百もの送粉者を支えることができます。庭があるなら、前庭でも裏庭でも、芝生を刈り込むのではなく、自然に戻してほしい。そうすれば時間の節約にもなるし、ミツバチにとっても食べ物と生息地の両方になります。

花の周りのそうした環境は、地面を掘って巣穴を作るハチたちにとって非常に適しています。中には、化学的にポリエステルに似た物質を使って、防水性のある巣穴を作る“polyester bees”と呼ばれるハチもいます。また、農薬への依存を減らすことも重要ですし、私たちが管理しているミツバチやマルハナバチ、ハキリバチなどの寄生虫や病原体を広げないようにする努力も必要です。自然界と少しでもつながりのある人なら、誰にでも関われることなんです。

ジェームズ・キャメロン:80億人が暮らすこの世界で、多くの人が「個人に何ができるのか」と感じています。政策を変えることはできない、政府の問題だと。でも、必ずしもそうではありません。

ここで少し率直に言えば、私はヴィーガンです。畜産業は、ミツバチだけでなくあらゆる種に影響を与える森林破壊や生息地喪失の大きな原因です。また、私たちの食料システムの中心にある大規模な単一栽培も、ミツバチにとって非常に有害です。問題は単に殺虫剤だけではなく、トウモロコシや大豆や小麦を広大に単一栽培するような仕組みそのものにもある。むしろ本来、私たちが食べるべきなのは、もっと多様な野菜や果物でしょう。

思考実験として言うなら、もし人々が肉を食べるのをやめれば、農地として使われている土地の半分以上を自然に戻せる可能性があります。それはミツバチにとっても、ほとんどすべての他の種にとっても非常に良いことです。文明として、そして個人として、私たちは常に選択をしていて、その選択には結果が伴う。その結果を考える出発点として、私たちはまず“被害を受ける側”を見なければならない。もし世界中の巣で働く、この勤勉な“女性たち”に共感できるなら、私たちはもっといい選択をし始めるかもしれません。

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ナショナル ジオグラフィック

『ミツバチのひみつ:自然界の小さなヒーロー』

https://natgeotv.jp/tv/lineup/prgmtop/index/prgm_cd/3553

『ミツバチのひみつ:自然界の小さなヒーロー』
『ミツバチのひみつ:自然界の小さなヒーロー』 © 2026 National Geographic Partners, LLC.
  • 放送日時等:4月5日(日)15:00-17:00 *2話連続 *二か国語 日本初放送
  • 全国のケーブルテレビおよび衛星放送(BS/CS)で放送中のナショナル ジオグラフィック(TV)にて放送
  • 話数:全2話
  • 4月5日(日)
  • 15:00-16:00 ミツバチのひみつ:自然界の小さなヒーロー「巣箱の世界」 声:日野聡 (日本初放送)
  • 16:00-17:00 ミツバチのひみつ:自然界の小さなヒーロー「花から花へ」 声:日野聡 (日本初放送)
  • 再放送:4月22日(水)18:00-20:00 *2話連続

番組説明:ナショナル ジオグラフィック エクスプローラーのバーティ・グレゴリーが、地球上で最も重要な生物の一つ、ハチの驚くべき生態に迫る。女王バチが支配し、働きバチが蜜を集めるミツバチのコロニーを中心に、最先端の撮影技術を用いて世界各地のハナバチの生態に着目。農作物の受粉を助けるなど、私たちの生活とも切り離せないハナバチたちの躍動感あふれる生態を紹介する。

© 2026 National Geographic Partners, LLC.

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